信長時代の間者(スパイ)を描く時代小説

岡田秀文さんの『最後の間者』を読む。先日、読んだ『秀頼、西へ』が面白くて、あらためて岡田作品に注目している。『最後の間者』は、以前に1/4程度読み、投げ出していた本だった。

最後の間者 (時代小説文庫)

最後の間者 (時代小説文庫)

秀頼、西へ (光文社時代小説文庫)

秀頼、西へ (光文社時代小説文庫)

堺を発った織田勢の小荷駄隊を突如銃声が襲った。奇襲によって兵糧を失う信長勢。敵は極秘に進められた輸送作戦をどのように知り得たのか――。数日後、信長から安土城に潜む間者を一掃しろという命が、京都所司代村井貞勝の子、村井貞成に下された…。

物語の時代は天正八年。織田信長が石山本願寺と交戦中の頃。主な登場人物は間者狩りを行う貞勝とその配下の忍び・蛭沼吾助、小早川隆景の間者で安土城に潜入している市兵と三久保四郎、間者の取次ぎ役の神谷仁五郎、市兵に思いを寄せる下女の楓。

信長時代を舞台にしながらも華々しい戦闘シーンはほとんどなく、無名の間者(忍び)のスパイ活動に焦点を当てているために、戦国時代小説とはいえ、地味な物語である。そのために一度は読むことを投げ出してしまった。しかし、読書のペースをつかめると、歴史の裏側で行われたかもしれない謀略が巧妙に描かれていて面白い。とくに、石山本願寺攻めを指揮した武将・佐久間信盛が、和睦後に失脚して織田家を追放されたことをテーマにしているのが興味深い。そのほかにも岡田さんらしいミステリータッチで、スリリングなシーンが多く用意されている。