時代小説の本棚から注目の作品をご紹介する「今日の書棚」のコーナーです。
今回取り上げるのは、眞邊明人(まなべ・あきひと)さんの『うちの部下が使えなすぎて日本一の兵になった 真田幸村と十勇士』(PHP研究所)です。
著者の眞邊さんは、独自のコミュニケーション理論を体系化し、政治家のスピーチ指導や上場企業の組織改革プロジェクトなどに携わるコンサルタントとして活躍しています。歴史上の人物や出来事をビジネスの視点から読み解く語り口に定評があり、ベストセラー『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の著者としても知られています。
本書は、そんな著者が真田幸村と真田十勇士を題材に描く、熱くて学びの多い戦国エンターテインメント小説です。

『うちの部下が使えなすぎて日本一の兵になった 真田幸村と十勇士』|眞邊明人|PHP研究所
あらすじ
関ヶ原の戦いの後、紀州九度山に蟄居していた真田幸村(信繁)のもとに、個性豊かな十人の家臣たちが集まります。後に「真田十勇士」と呼ばれる彼らですが、その実態は問題だらけの“使えない部下”たちでした。
情報収集だけは得意な猿飛佐助、人付き合いが苦手な望月六郎、短気で我慢のできない由利鎌之助、何事にもやる気のない穴山小助――。一癖も二癖もある面々を前に、幸村は頭を抱えます。
しかし幸村は、それぞれの欠点の裏に隠された才能を見抜き、少しずつ彼らを成長させていきます。そして迎えた大坂の陣。果たして幸村と十勇士は、「日本一の兵」と呼ばれる活躍を成し遂げることができるのでしょうか。
(『うちの部下が使えなすぎて日本一の兵になった 真田幸村と十勇士』(PHP研究所)カバー帯の紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
本書の魅力は、真田十勇士を「理想の家臣団」ではなく、「問題児だらけのチーム」として描いている点です。
しかも、幸村自身も九度山での蟄居生活の頃は、思うようにならない現実への苛立ちから怒ってばかりで、お世辞にも優れたリーダーとはいえませんでした。しかし、自らの欠点を認めて変わろうとする柔軟さを持っていました。部下たちの欠点を嘆くだけではなく、それぞれの個性や強みを見いだし、適材適所で力を発揮できるよう導いていきます。その姿は、戦国武将というよりも、現代企業の優れたマネジャーを思わせます。
また本書には、働き方改革やリモートワーク、パワーハラスメント防止研修、PDCAサイクルといった現代のビジネス用語や考え方を連想させるエピソードが随所に盛り込まれています。
大坂城を囲む幕府軍二十万と大坂方七万人の対決で、弱者の兵法として「ランチェスターの法則」が出てきたのには唸らせられました。
軽快で読みやすい歴史小説でありながら、人材育成や組織運営の本質について考えさせられる内容となっており、ビジネス書としての面白さも兼ね備えています。
十勇士がまさに十人十色のポンコツぶりを描き分けられていて、キャラクター設定が良く考えられています。とくに、三好清海・伊三の兄弟が秀逸です。
笑いあり、成長あり、そして胸を熱くするドラマあり。『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の著者が挑んだ新境地ともいえる一冊です。歴史小説ファンはもちろん、部下やチームとの関わり方に悩むビジネスパーソンにもおすすめしたい作品です。
書誌情報
『うちの部下が使えなすぎて日本一の兵になった 真田幸村と十勇士』
眞邊明人(まなべ・あきひと)
PHP研究所
2026年6月24日 第1版第1刷発行
装丁:bookwall
目次
九度山編 部下ガチャ極まれり
第1章 部下ガチャ、全部ハズレ
第2章 新入りの猿飛佐助というカード
第3章 海野六郎の規則地獄
第4章 望月六郎、史上最悪の接客
第5章 穴山小助の究極の効率化
第6章 三好兄弟の無限ループ
第7章 由利鎌之助の三秒ルール
転機編 働き方改革と戦略的転進
第8章 霧隠才蔵のリモートワーク
第9章 心理的安全性ゼロの職場
第10章 九度山脱出大作戦
大坂城編 大企業病との戦い
第11章 入場面接という茶番
第12章 会議という名の時間泥棒
第13章 後藤又兵衛のパワハラ研修
第14章 明石全登のPDCA地獄
第15章 長宗我部と毛利のマウント合戦
第16章 真田丸プロジェクト始動
第17章 伊三の情報漏洩事件
第18章 二十万 vs. クズリーム
冬の陣編 弱者の戦略
第19章 クズたちの逆襲・真田丸防衛戦
第20章 グダグダ和平交渉
第21章 真田丸破却という愚策
夏の陣編 それぞれの「決意」
第22章 もはや、これまでか
第23章 五十万石という悪魔の囁き
第24章 エリート部隊という災い
第25章 道明寺・霧の中の崩壊と奮戦
第26章 最後の決戦前夜
第27章 天王寺・決死の突撃
第28章 そして誰もいなくなった
後記 真田商法、全国制覇
第29章 それぞれの成功と失敗
第30章 十年後の同窓会、そして
本文323ページ
書き下ろし
今回ご紹介した本












