2025年時代小説ベスト10【文庫書き下ろし部門】

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2025年「時代小説SHOW」のベスト10(文庫)

2025年時代小説ベスト10【文庫書き下ろし部門】

「時代小説SHOW」による、2025年時代小説ベスト10【文庫書き下ろし部門】を発表いたします。

対象作品は、Amazonでの発売日または奥付表記が2024年11月1日から2025年10月31日の間に発行された時代小説(シリーズ)で、文庫書き下ろし(文庫オリジナル)作品に限られます。なお、単行本の文庫化作品は対象外です。

読書離れが進み、時代小説の読者層が高齢化している現状には危機感を覚えますが、「今は夜明け前」と考えるようにしています。
明けない夜がないように、もうすぐ朝の光が差してくるように思えます。
そんな時代でも素晴らしい時代小説が多く発行され、作品選びに頭を悩ませました。

「時代小説SHOW」では、面白い時代小説をさまざまな形で紹介しています。今回のベスト10では、時代小説の世界に新しい読者を招き入れるような魅力的な作品を選出することを心がけました。

1位 井原忠政『真田武士心得(一) 右近純情』
『真田武士心得(一) 右近純情』

装画:岡田航也
デザイン:征矢武

井原忠政(いはら・ただまさ)
文藝春秋・文春文庫

対象期間中の作品は『(一) 右近純情』(2025年10月刊)の1作。

♪ 徳川家康の天下統一を描いた「三河雑兵心得」(双葉文庫)、豊臣秀吉の合戦を描いた「北近江合戦心得」(小学館文庫)に対して、「真田武士心得」では、秀吉・家康の時代に“表裏比興者”と呼ばれた戦国随一のくせ者・真田昌幸率いる真田家に焦点を当てています。これまでの二作で描かれた時代を「第三極」から見た構図となっており、戦国ファンにとっては、井原戦国ワールドをさらに深く味わえます。

9月までは「イクサガミ」を1位に推すつもりでしたが、本書の刊行により先行2シリーズと合わせて3本の矢となり、3シリーズの相乗効果によって、秀吉、家康の天下取りが重層的に俯瞰できるようなり、先行作品も面白さを倍加した点で推しました。

2位 今村翔吾「イクサガミ」シリーズ
『イクサガミ 人』

カバー装画:石田スイ
カバーデザイン:長崎綾(next door design)

今村翔吾(いまむら・しょうご)
講談社・講談社文庫

対象期間中の作品は『イクサガミ 人』(2024年11月刊)、『イクサガミ 神』(2025年8月刊)の2作。

♪ 2022年2月に刊行された『イクサガミ 天』に始まりました。『地』『人』を経て、本巻『神』にてついに完結。クライマックスの2冊が対象となっています。Netflixで独占配信も好調で、時代小説の枠を飛び出す注目作です。
明治十一年(1878)。全国から一攫千金を夢見て、命知らずの猛者たちが京に集合。「蠱毒(こどく)」という東海道を東上するデスゲームも最終決戦の地・東京へ。幾多の死闘を勝ち抜いた生き残り九人に、新たなデスゲームが用意されていました。

究極のサバイバル血戦を生き残るのは誰なのか?
圧倒的なアクションシーンの連続と予測不能のストーリーに魂が揺さぶられ、興奮はマックスに。
時代小説の枠に収まらない、エポックメーキングな作品です。

3位 髙田郁『志記(一) 遠い夜明け』
『志記(一) 遠い夜明け』

装画:卯月みゆき
装幀:フィールドワーク

髙田郁(たかだ・かおる)
角川春樹事務所・ハルキ文庫

対象期間中の作品は『志記(一) 遠い夜明け』(2025年10月刊)の1作。

♪ 同じ年、同じ日、清明に生まれた二人の女性。医学の道を目指す蔵源美津と、刀鍛冶を志す高越暁。
長年の伝統と社会の常識により、当時は女性に道が閉ざされ、「男の仕事」とされていた分野に、あえて踏み込んでいく二人の姿が描かれます。
暁は感情を表に出さず、心が躍ることも、悲しみに暮れることもなく、淡々と日々を過ごしてきました。その冷ややかな佇まいから、周囲には氷のように冷たい人間だと思われています。
対照的に、美津は「焔のような娘だ」と評されます。医学の道を志して以来、女性であることを理由に立ちはだかる壁に対し、その理不尽さを受け流すことができず、抗い、衝突を繰り返してきました。

強い志を抱く二人の女性の物語のはじまりに、大河小説の始まりを思わせるスケール感とエネルギーを感じて、胸が高鳴りました。
仕事に生きづらさを感じている女性たちを応援して背中を押す、「志」のある時代小説です。

4位 麻宮好「おけいの戯作手帖」シリーズ
『お内儀さんこそ、心に鬼を飼ってます おけいの戯作手帖(一)』

カバーイラスト:卯月みゆき

麻宮好(あさみや・こう)
コスミック出版・コスミック時代文庫

対象期間中の作品は『(一) お内儀さんこそ、心に鬼を飼ってます』(2025年2月刊)、『(二) 震える羊羹舟』(2025年9月刊)の2作。

♪ 『お内儀さんこそ、心に鬼を飼ってます おけいの戯作手帖(一)』は、14回日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞作。
「見えない人の心を戯作で表現したい」という決意を胸にする戯作者見習いのおけい。幼い頃に火事で両親を亡くし、戯作者の祖父と祖母、幽霊が見えるという絵師の弟・幸太郎と四人で暮らしています。
おけいは、商家の主人夫婦の心中事件を戯作にして、関係者の思いや葛藤を文字にしていこうと奮闘します。
物語は、おけいが関係者に取材して書いた記事を作中作のようにして、事件に関わる人の心理を明らかにしていき、事件を解決に導く手法を取っています。
新人離れした描写力と筆の速さに驚嘆しました。

5位 佐々木裕一「この世の花」シリーズ
『花に嵐 この世の花(2)』

装画:朱華
装幀:五十嵐徹

佐々木裕一(ささき・ゆういち)
角川春樹事務所・ハルキ文庫

対象期間中の作品は『(二) 花に嵐』(2025年4月刊)の1作。

♪ 「新・浪人若さま 新見左近」シリーズ(双葉文庫)や「公家武者 信平」シリーズ(講談社文庫)など、多くの文庫書き下ろしシリーズをもつ著者。明朗快活で勧善懲悪の痛快時代小説で好評を得ている著者が挑んだ新境地のシリーズです。
『この世の花』の主人公は、七千石の旗本真島兼続の妾・ふきの子で15歳の花。母子ともに兼続の寵愛を受け、それゆえに正妻とその娘や他の妻やその子女から妬まれ、意地悪な仕打ちに遭います。やがて、母が死に、父が大坂へと派遣されると、正妻や他の妻たち、姉たちからのいじめはエスカレートしていきます。

最初は、あまりにひどい主人公いじめの描写に、最後まで読み続けられるか不安でしたが、それに耐える花に、救いの手を差し伸べる者も現われ、面白くなっていき、快感になっていく不思議な体験となりました。2巻になり、花へのいじめはさらにひどくなっていきますが……。

著者は「この世の花」シリーズを含む先行2シリーズで、第14回日本歴史時代作家協会賞シリーズ賞を受賞しました。

6位 横山起也『お茶漬けざむらい』
『お茶漬けざむらい』

カバーイラスト:NAGA
カバーデザイン:坂野公一(welle design)

横山起也(よこやま・たつや)
光文社・光文社文庫

対象期間中の作品は『お茶漬けざむらい』(2025年5月刊)の1作。

♪ 『編み物ざむらい』の主人公・黒瀬感九郎が、編み物で難題を解決したのに対して、本作の主人公・妹尾未明は、「お茶漬け」でさまざまな問題を解決する「お茶漬けざむらい」です。
子どものころから引きこもりがちで、大事な場面になると身体がこわばり、失敗を繰り返してきた未明。そんな彼の特技は、美味しいお茶漬けをつくることでした。

ある日、売れっ子芸者・お蜜の依頼を受け、素封家と「舌ためし」に臨むことに……。
深い人生観や哲学も感じさせる、新感覚の時代小説に仕上がっています。

「編み物ざむらい」シリーズからスピンオフした『幕末万博騒動』も2作発表されていて、最近の活躍ぶりに期待しています。

7位 岡本さとる「旗本遊俠伝」シリーズ
『旗本遊俠伝』

カバーデザイン:bookwall
カバーイラストレーション:卯月みゆき

岡本さとる(おかもと・さとる)
双葉社・双葉文庫

対象期間中の作品は『旗本遊俠伝』(2025年9月刊)、『旗本遊俠伝【二】 姫と賽』(2025年10月刊)の2作。

♪ 主人公・宝城勇之助は、三百石の旗本の次男坊で庶子、二十八歳の若者。養母に嫌われ、当主である異母兄からも疎まれて不遇の境遇にあり、深川の盛り場で酒と喧嘩に明け暮れる日々を送っていました。鬼平や遠山の金さんの若き日を思わせる無頼ぶりで、喧嘩の仲裁で小遣い銭を稼ぎ、遊び人たちの大将として慕われています。
人気シリーズ「取次屋栄三」の秋月栄三郎と、「剣客太平記」の峽竜蔵を想起させる、人情派ヒーローに胸が熱くなります。

物語は勇之助が本家筋の千五百石の旗本の養子となるところから大きく動きます。
読み味の痛快さと泣かせる話の両方が味わえる、先々が楽しみなシリーズが登場しました。

8位 小島環『纏足探偵 天使は右肩で躍る』
『纏足探偵 天使は右肩で躍る』

カバーデザイン:afterglow
カバーイラスト:七原しえ

小島環(こじま・たまき)
集英社・集英社文庫

対象期間中の作品は『纏足探偵 天使は右肩で躍る』(2025年4月刊)の1作。

♪ 十五歳の少女・瑠瑠は、父を亡くし、母、兄と共に、中央アジアのサマルカンドから都・北京へ移り住みます。 親族の依頼を受けた瑠瑠は、名門・趙家の令嬢・月華のもとで、劇団の頭領殺害事件について関係者の証言を集めるよう命じられます。

月華は、美しく繊細な容貌をもつ少女で、纏足のために自力で自由に歩くことができませんが、細かな情報の断片から全体像を構築する、卓越した推理力が備わっていました。纏足によって外出がままならないという設定を逆手に取り、「安楽椅子探偵」として描かれている点も興味深いところです。

回教徒としてサマルカンドで育った瑠瑠と、北京の上流階級で育った月華は、はじめは衝突を繰り返しますが、数々の事件を通じて、ふたりは少しずつ信頼と友情を育んでいきます。

本作では、「纏足」という風習を物語に巧みに織り込んでいます。現代の視点からは奇異に感じられるこの風習も、当時の女性たちにとっては誇りの象徴であり、結婚や将来の保障に直結する重要な価値観であったことが描かれ、文化や価値観の多様性を深く考えさせられました。

9位 喜多川侑「深川おせっかい長屋」シリーズ
『深川おせっかい長屋(一)胸騒ぎの萬年橋』

カバーデザイン:菊池祐
カバーイラスト:笹井さゆり

喜多川侑(きたがわ・ゆう)
実業之日本社・実業之日本社文庫

対象期間中の作品は『(一)胸騒ぎの萬年橋』(2025年6月刊)、『(二)綿を入れて、恋をほどいて』(2025年10月刊)の2作。

♪ 深川の長屋を舞台にした人情物語。お騒がせコンビ「権玉(権助・玉造)」のほか、元大奥女中のお政、魚屋の権助、鳶で火消の玉造のほか、権玉の妹分で呉服屋の女中・お奈々、権玉の兄貴分で左官の源太郎らの独り者たちと、酒問屋の手代・佐助と元芸者の女房・おふさ、息子の小太郎一家や、油問屋の手代・お美代と娘・お松の一家など、多彩な顔ぶれがそろっています。

「おせっかいしていなきゃ、死んでしまう」という、三度の飯よりもおせっかい好きな住人たちが織りなす騒動が見どころです。笑いあり涙ありの展開に、心を動かされます。また、単なる人情話にとどまらないスリリングな構成に引き込まれます。

たとえば、役者と駆け落ちした古着屋の娘の行方を追うエピソードは、意外な展開を見せ、単なる人情話にとどまらないスリリングな構成に引き込まれます。これは、著者のストーリーテリングの巧みさと、物語に流れる痛快さのなせる業です。

10位 東圭一「深川青春捕物控」シリーズ
『深川青春捕物控(一) 父と子』

装画:浅野隆広
装幀:五十嵐徹(芦澤泰偉事務所)

東圭一(あずま・けいいち)
角川春樹事務所・ハルキ文庫

対象期間中の作品は『(一) 父と子』(2025年1月刊)、『(二) 家族の形』(2025年2月刊)、『(三) 黒い血』(2025年7月刊)の3作。

♪ 江戸深川の漁師町を舞台に、18歳の若者・雄太が主人公の捕物小説。捕物のスリルと青春小説の爽快感が存分に楽しめる一冊です。
将来について漠然とした思いを抱えていた雄太は、北町奉行所定町廻り同心・高柳新之助からの誘いを受け、御用聞きとして歩み始めます。
本所深川界隈で起こる一風変わった事件の数々。年老いた夫婦ばかりを狙う押し込み強盗や、船の上で客を脅す「狐船頭」、幼い子どもをさらう子盗り、さらには骨董品を狙う壺盗賊団――どれもユニークな設定で、捕物話に引き込まれます。

雄太を助ける仲間たちの存在も物語の魅力です。幼なじみで力自慢の船頭の三吉、事件に詳しい読本作家志望の茂二、そして勝次郎親分の娘・かよ。彼ら4人の青春群像劇が、爽快感と温かみを物語に加えています。

時代小説ベスト10【単行本部門】は、

2025年時代小説ベスト10【単行本部門】
2025年「時代小説SHOW」のベスト10(単行本)「時代小説SHOW」による、2025年時代小説ベスト10【単行本部門】を発表いたします。対象作品は、Amazonでの発売日、または奥付表記が2024年11月1日から2025年10月31日の...