【新着本】光文社文庫2025年8月の新刊。古代史のヒロイン額田王

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

『恋ふらむ鳥は』
『関ヶ原の亡霊 新九郎古今捕物控(一)』
『罪の仇花 峰打ち同心 千坂京之介事件帖(二)』

光文社文庫の2025年8月新刊をご紹介いたします。
今月は、澤田瞳子(さわだ・とうこ)さんの歴史小説ふらむ鳥は』の文庫化作品に加え、山本巧次(やまもと・こうじ)さんによる新シリーズ『関ヶ原の亡霊 新九郎古今捕物控(一)』西川司(にしかわ・つかさ)さんの好評文庫書き下ろしシリーズ第2弾『罪の仇花 峰打ち同心 千坂京之介事件帖(二)』が刊行されました。

『恋ふらむ鳥は』

恋ふらむ鳥は (光文社文庫)澤田瞳子
光文社・光文社文庫

カバーデザイン:鈴木久美
カバーイラスト:村田涼平

ここに注目!
額田王は百人一首には採録されていませんが、万葉集を代表する歌人です。「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」や「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」などの歌で広く知られています。

本書のタイトルは、額田王の歌「古に恋ふらむ鳥はほととぎすけだしや鳴きしあが思へるごと」から取られています。

これまで、歌人としての額田王の姿しか知らなかったため、正直それほど関心はありませんでした。しかし本書では、斉明天皇のもとで女官として出仕し、宮中で葛城王子(天智天皇)や大海人王子(天武天皇)、その異父兄・漢王子らと関わる宮廷人としての額田王の姿が描かれ、俄然興味がわきました。

物語は、大海人王子の妃・大田王女おおたのひめみこが出産直後の場面から始まります。百済への出陣の途上、大田が産気づき、随行する女官の中で最年長の三十一歳になった額田王は、大海人からその世話を命じられます。

かつて額田王と大海人王子は十市といち王女をもうけた仲でしたが、離別して十年以上。離別後も宮中で女官として忙しく働き、嫉妬よりも新しい命の誕生を寿ぐ気持ちを抱く額田王は、現代的なキャリアウーマンのような潔さが魅力的です。

白村江の戦いや壬申の乱といった歴史的大事件を背景に、恋と歌に生き、波瀾万丈の生涯を送った額田王の姿が鮮やかに描かれます。女官としての立場と歌人としての誇りを胸に、彼女はどのように生きたのでしょうか。額田王はやはり古代史を代表するヒロインです。
あらすじ

宝女王たからのおおきみ斉明さいめい天皇)に引き立てられた歌人・額田王ぬかたのおおきみ。次代の大王おおきみである葛城王子かつらぎのみこ天智てんじ天皇)、その弟でかつての夫・大海人王子おおあまのみこ、異父兄・漢王子あやのみこ、葛城の忠臣・中臣鎌足なかとみのかまたりらに囲まれ、宮人くにんとしての務めに励む額田王を、時代の大きな波が翻弄する。白村江の戦いから壬申の乱へ――激動の飛鳥時代と額田王の半生を描いた歴史巨編。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

目次
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章

解説 細谷正充

2025年8月20日 初版1刷発行
本文287ページ
『恋ふらむ鳥は』(毎日新聞出版、2022年刊)を文庫化したもの

今回取り上げた本

澤田瞳子|時代小説ガイド
澤田瞳子|さわだとうこ|時代小説・作家1977年、京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、同大学院博士前期課程修了。2010年、『孤鷹の天』でデビューし、同作で第17回中山義秀文学賞を受賞。2013年、『満つる月の如し 仏師・定朝』で第2回本屋...

『関ヶ原の亡霊 新九郎古今捕物控(一)』

関ヶ原の亡霊 新九郎古今捕物控(一) (光文社文庫)山本巧次
光文社・光文社文庫

カバーデザイン:Fieldwork(田中和枝)
カバーイラスト:スカイエマ

ここに注目!
主人公の瀬波新九郎は、南町奉行所の定町廻り同心で、前シリーズ「定廻り同心 新九郎、時を超える」に登場した捕物の名人です。前作では、あるきっかけで江戸時代から戦国時代へタイムスリップし、殺人事件の謎を解き明かしながらご先祖の危機を救いました。

完結編『蟷螂の城 定廻り同心 新九郎、時を超える』の巻末解説で、「江戸での捕物や新妻・志津とのその後も読みたい」と記しましたが、本作はまさにその願いがかなった新シリーズです。

江戸の新九郎は、鋭い頭脳と勘の良さを武器に、探索、悪党との対峙、事件の解決まで抜群の手腕を発揮します。加えて、物語の終盤には意外性のある展開が待ち受け、ページを繰る手が止まりません。歴史ミステリーと捕物の面白さが詰まった幕開けです。

あらすじ

江戸南町奉行所定町廻り同心の瀬波新九郎は、新妻・志津と穏やかな日々を送っていたが、谷中本村で起きた押し込み事件の捜査を任される。殺されていたのは古文書収集が趣味の隠居。しかし、何が盗まれたのか手がかりはなく、やがて浮かび上がる想像を絶する真相。最後に待つ大どんでん返しとは――。「八丁堀のおゆう」シリーズで人気の著者が放つ渾身の新シリーズ、開幕。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

目次
江戸郊外 谷中本村 子の刻
関ケ原の亡霊
信濃国上田 慶長五年九月

2025年8月20日 初版1刷発行
本文299ページ
文庫書き下ろし

今回取り上げた本



山本巧次|時代小説ガイド
山本巧次|やまもとこうじ|時代小説・作家1960年、和歌山県生まれ。中央大学法学部卒業。鉄道好きで、長年鉄道会社に勤務した経歴を持つ。2015年、第13回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉となった『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』でデ...

『罪の仇花 峰打ち同心 千坂京之介事件帖(二)』

罪の仇花 峰打ち同心 千坂京之介事件帖(二) (光文社文庫)西川司
光文社・光文社文庫

カバーデザイン:盛川和洋
カバーイラスト:浅野隆広

ここに注目!
北町奉行所定町廻り同心の千坂京之介は、一刀流免許皆伝の剣の達人でありながら、血を見るのが苦手な「峰打ち同心」です。著者のデビュー作「深川の重蔵捕物控ゑ」シリーズにも、岡っ引き・重蔵を支える同心として登場しています。

本シリーズでは、血に弱いという特異な設定に加え、同僚の定町廻り同心・貝原和馬との複雑な関係が物語を盛り上げます。京之介と和馬は家族ぐるみの付き合いをしてきましたが、妹・志乃の縁談をきっかけに関係が悪化。以来、和馬は京之介に強い嫉妬と敵意を抱くようになります。

そんな中、和馬から紙問屋の後添えと手代の捕縛を頼まれた京之介は、直後に和馬が医者の妻殺しの嫌疑をかけられる事態に直面。友として、同心として、京之介は真相を探るため奔走します。捕物と人間関係の両方が楽しめる好評シリーズの第2弾です。

あらすじ

定町廻り同心の千坂京之介は、思いを寄せる志乃の兄で同心仲間の貝原和馬に呼び出され、紙問屋の後添えと手代を捕まえる手助けを頼まれる。しかしその直後、和馬が医者の妻殺しの嫌疑をかけられる。鍵を握るのは、和馬が早朝に立ち寄った“女湯”だった――。“華のある”同心ヒーローの活躍を描く人気シリーズ第二弾。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

目次
第一話 ぬれぎぬ
第二話 鴉のお足
第三話 消えた足痕
第四話 なりすまし

2025年8月20日 初版1刷発行
本文312ページ
文庫書き下ろし

今回取り上げた本


西川司|時代小説ガイド
西川司|にしかわつかさ|作家1958年、北海道函館市生まれ。放送作家、脚本家、小説家として活躍。2023年、本格捕物小説『深川の重蔵捕物控ゑ』で時代小説デビュー。時代小説SHOW 投稿記事→西川司の本(Amazonより)⇒時代小説作家リスト...