【新着本】江戸の旅はドラマチック。旅をめぐる時代アンソロジー

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『たびじ 朝日文庫時代小説アンソロジー』|浅田次郎、池波正太郎、梶よう子、西條奈加、佐江衆一、澤田瞳子、澤見彰著、細谷正充編|朝日文庫

たびじ 朝日文庫時代小説アンソロジー時代小説アンソロジーの第一人者、細谷正充(ほそや・まさみつ)さんが編んだ時代小説傑作選、『たびじ 朝日文庫時代小説アンソロジー』(朝日文庫)をご紹介します。

朝日文庫の時代小説アンソロジーシリーズでは、文芸評論家の菊池仁さんや末國善己さん、書評家の大矢博子さんら、そうそうたる時代小説の目利きたちが1つのテーマに沿って短編を厳選し、珠玉の1冊にまとめています。細谷さんは、このたび第8弾のアンソロジーを担当されました。


あらすじ

江戸から明治へ、時代の移り変わりと秘められた過去をたどる甲州道中(「椿寺まで」)、箱根の関所破りを警戒する番士の奮闘(「氷目付」)、異国の焼き物を求めて江戸から長崎へ、片道ひと月半の旅(「長崎奉行」)など、全7編を収録。「旅」をテーマに、楽しく、心にしみる物語を厳選した短編集です。

(『たびじ 朝日文庫時代小説アンソロジー』カバー裏の内容紹介より)

ここに注目!

今回、細谷さんが選んだテーマは「旅」です。
細谷さんの編んだ旅のアンソロジーといえば、先ごろ刊行された『東海道綺譚 時代小説傑作選』(ちくま文庫)も記憶に新しいところですが、そちらが「東海道」の奇譚に焦点を当てていたのに対し、本書『たびじ』では、東海道のみならず、甲州道中、江戸から長崎、三国街道など、さまざまなルートを舞台にした旅情豊かな物語を収録しています。
内容も実に多彩です。敵討ち、関所を守る番士の奮闘、愛犬との参拝旅など、さまざまな趣向の物語で、江戸の旅の多様な姿を楽しめます。

たとえば、澤見彰(さわみ・あき)さんの「高尾参り」では、江戸近郊の行楽地として人気を集めた高尾山への旅が描かれています。大山詣りや江ノ島弁財天と並んで、高尾山も当時から多くの人に親しまれていたことがわかります。愛犬を連れて高尾山を目指す一行の騒動は、落語を思わせるようなユーモラスな展開で、アンソロジーの最後を心温まるかたちで締めくくっています。

また、澤田瞳子さんの「忠助の銭」は、連作短編集『関越えの夜 東海道浮世がたり』に収録された第一話です。ちなみに、同短編集の第五話「死神の松」は、前述の『東海道綺譚』にも収録されています。2冊を読み比べてみるのも楽しく、短編小説の魅力をより深く味わえます。

書籍情報

たびじ 朝日文庫時代小説アンソロジー
浅田次郎、池波正太郎、梶よう子、西條奈加、佐江衆一、澤田瞳子、澤見彰著、細谷正充編
朝日新聞出版 朝日文庫
2025年6月30日第1刷発行

カバー装幀:芦澤泰偉
カバー装画:松本孝志

●目次
椿寺まで 浅田次郎
かたきうち 池波正太郎
長崎奉行 梶よう子
氷目付 西條奈加
峠の伊之吉 佐江衆一
忠助の銭 澤田瞳子
高尾参り 澤見彰

解説 細谷正充

本文305ページ

●底本
浅田次郎「椿寺まで」(『五郎治殿御始末』中公文庫)
池波正太郎「かたきうち」(『仇討ち物語』春陽文庫)
梶よう子「長崎奉行」(『立身いたしたく候』講談社文庫)
西條奈加「氷目付」(『せき越えぬ』新潮文庫)
佐江衆一「峠の伊之吉」(『子づれ兵法者』ハルキ文庫)
澤田瞳子「忠助の銭」(『関越えの夜 東海道浮世がたり』徳間文庫)
澤見彰「高尾参り」(『はなたちばな亭恋鞘当』角川文庫)

■今回取り上げた本



細谷正充編|時代小説ガイド
細谷正充|ほそやまさみつ|文芸評論家・書評家1963年生まれ。時代小説、ミステリーなどのエンターテインメントを対象に、評論・執筆。自宅に20万冊という膨大な書庫を持つ蔵書家。2018年より、優れたエンターテインメント小説5作品を選出して「細...