2024年時代小説(単行本/文庫書き下ろし)ベスト10、発表!

亡父への思い。若者の成長を描く爽快な青春捕物小説、誕生

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『深川青春捕物控(一) 父と子』|東圭一|ハルキ文庫

深川青春捕物控(一) 父と子東圭一(あずま・けいいち)さんは、2023年に『奥州狼狩奉行始末』で第15回角川春樹小説賞を受賞して単行本デビュー。翌2024年には同作で第13回日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞した、時代小説界期待の新人です。

本書は、受賞後の第1作となる文庫書き下ろしシリーズの第1巻です。
江戸深川の漁師町を舞台に、18歳の若者・雄太が主人公の捕物小説。捕物のスリルと青春小説の爽快感が存分に楽しめる一冊です。

あらすじ

新人賞受賞作家の直球の捕物帳、開幕!

深川漁師町にある小料理屋「しののめ」の息子・雄太。母のあきは女手一つで雄太を育て、17歳からは仕入れを手伝い家業を支えていました。
ある日、常連客である同心の高柳新之助から、御用聞きの手先にならないかと誘われます。さらに、新之助は亡き父の同僚であり、雄太の腹違いの兄だと告白。これを機に雄太は父の遺品である鼻捻棒(はなねじぼう)を手に、仲間たちとともに深川の平和を守るため奔走することに――。
新たな爽快時代小説、ここに誕生!

(『深川青春捕物控(一) 父と子』カバー裏の紹介文より抜粋・編集)

本書の読みどころ

物語の舞台は、享和四年(1804年)の江戸・深川。漁師町の外れにある蛤町で、小料理屋を営む母のもとで育った雄太が主人公です。将来について漠然とした思いを抱えていた彼が、北町奉行所定町廻り同心・高柳新之助からの誘いを受け、御用聞きとして歩み始めます。

雄太が挑むのは、本所深川界隈で起こる一風変わった事件の数々。年老いた夫婦ばかりを狙う押し込み強盗や、船の上で客を脅す「狐船頭」、幼い子どもをさらう子盗り、さらには骨董品を狙う壺盗賊団――どれもユニークな設定で、捕物話に引き込まれます。

また、雄太を助ける仲間たちの存在も物語の魅力です。幼なじみで力自慢の三吉、事件に詳しい読本作家志望の茂二、そして勝次郎親分の娘・かよ。彼ら4人の青春群像劇が、爽快感と温かみを物語に加えています。

事件を通じて失敗し、成長していく雄太の姿に胸が熱くなる一作。次巻の展開が待ち遠しくてなりません。

今回取り上げた本


書誌情報

深川青春捕物控(一) 父と子
東圭一
角川春樹事務所・ハルキ文庫

2025年1月18日第一刷発行
装画:浅野隆広
装幀:五十嵐徹(芦澤泰偉事務所)

●目次
序章 父と子
第一話 押し込み
第二話 狐船頭
第三話 神隠し
第四話 割れた壺

本文298ページ
文庫書き下ろし

東圭一|時代小説ガイド
東圭一|あずまけいいち|時代小説・作家1958年、大阪市生まれ。神戸大学工学部卒。2012年、「足軽塾大砲顛末」で第19回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞を受賞。2015年、「強力ごうりき侍 ―近江伝―」で第2回富士見新時代小説大賞入選。...