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秘所に蟹の刺青。江戸の女捕物師おかくの活躍を描く連作小説

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『鏡屋おかく捕物帖』|土師清二|捕物出版

鏡屋おかく捕物帖土師清二(はじせいじ)さんの捕物小説集、『鏡屋おかく捕物帖』オンデマンド本を紹介します。

著者は、昭和3年(1928年)に発表した伝奇時代小説『砂絵呪縛(すなえしばり)』で、一世を風靡し、大衆文学、とくに時代小説で長らく活躍された作家。
本書は、昭和27年から29年にかけてに発表された連作形式の捕物帖で、鉄火肌の姐御が探偵役をつとめるのがユニークです。

大正末期から作家活動を初め戦前には既に人気時代小説作家となっていた著者の代表的な捕物帖。主人公の鏡屋おかくは人足の元締の姐御。持ち前の観察眼と洞察力で、水道橋の岡っ引〆蔵の手助けをして事件を解決する。
昭和20年代末の捕物小説全盛期には永瀬三吾氏の「鯉登(こいと)」と双璧をなしていた姐御の活躍する捕物帖でもある。単行本未収録作品3作を含む19編を収録。

(Amazonの内容紹介より)

ヒロインのおかくは、江戸湯島五丁目で火消人足の元締となって、あらくれ男を顎で使い「姐御」「姐さん」と立てられてた女で、道楽で捕物を行っていました。

鏡屋で鳶頭だった亭主常次郎の女房でしたが、亭主が死ぬと名跡を継いで元締となりました。その際、夫に操を立てるため、秘所に蟹の刺青(ほりもの)を入れたと言います。
際どい設定ながら、エロティシズムにも下品にもならないところが見事です。

「蟹のおかくか……会ってみたいものだ」
「女っぷりは、なかなかのもので、上々吉で……へい」
「会ってもね、刺青を見せろ、とは言わないつもりだ」
「ああ蟹……」
「本当かい。股ぐらに蟹の刺青をしているというのは……誰も見た者はねえだろう。誰もサ」

(『鏡屋おかく捕物帖』「紅勘殺し」P.19より)

おかくは、岡っ引、水道橋の〆蔵に知恵を貸して、込み入った事件の謎を解いていきます。女捕物師といわれ、蟹の刺青とともに、江戸中で評判が高まっています。

そのおかくの一の子分がカマキリの安蔵。
腹掛にふんどしで、裸同様で、痩せっぽちで目が大きくカマキリに似ていることから、おかくに名付けられました。愚図のようでいて、捕物仕事になると、時には頭が働き、気が利いていて、おかくの良き助手となっています。

「姐御。姐さんエ」
「カマキリかい」
「へえ、カマキリ……でござんす」
「バッタでも、とらまえたかい」
「バッタだのキリギリスが出る……ありゃア夏です」
「だって、カマキリが出てるじゃないか」
「虫問答は止しましょう。姐御、面白い事件が姐御を待ってますぜ」
「事件。いやだよ。あたしゃ」
 
(『鏡屋おかく捕物帖』「万燈屋の娘」P.3より)

愛情を持ってからかうおかくと、おかくに心酔しているカマキリの安の掛け合いも楽しく、おかくの名推理とともに、本書の読みどころのひとつです。

作品の描かれている時代は、「古着屋の娘」に時は文化元年(1804)十一月二十五日と書かれていますので、その前後ということになります。
消えてしまった江戸の名残りが端々に描かれていて、どこか懐かしく、粋な江戸情緒が堪能できる捕物帖です。

「お三輪ごろし」では、芝居「妹背山婦女庭訓」が物語の中に登場し、お三輪役を演じた役者が殺される事件が描かれています。
芝居好きには気になるお話となっています。

捕物出版|Twitter

鏡屋おかく捕物帖

土師清二
捕物出版
2022年3月20日 オンデマンド版初版発行

装画:土端一美
鏡屋おかく捕物帖「蕎麦切庖丁」口絵より
別冊宝石36号 岩谷書店 昭和29年4月10日発行

目次
万燈屋の娘
紅勘殺し
手まねく幽霊
お千代舟の女
殺された梳子
お三輪ごろし
つり堀の鯉
殺された名医
顔が無い幽霊
あぼいろけ後家
逃げた花嫁
古着屋の娘
うなぎの匂い
そば切庖丁
廓言葉
盆燈籠
贋金道楽
好色霊遊講
赤んぼ双面

本文283ページ

本書収録作品の底本は、以下の通り。
万燈屋の娘、紅勘殺し、赤んぼ双面
『おかく捕物帖』(秋田書店、昭和43年6月10日発行)
手まねく幽霊、お千代舟の女、殺された梳子、お三輪ごろし、つり堀の鯉、殺された名医、顔が無い幽霊、あぼいろけ後家、逃げた花嫁、古着屋の娘、うなぎの匂い、そば切庖丁、廓言葉
『鏡屋おかく捕物帖』(同光社、昭和29年9月20日発行)
盆燈籠
「増刊読切小説集」(荒木書房新社、昭和29年8月15日発行)
贋金道楽
「別冊宝石四十号」(岩谷書店、昭和29年9月10日発行)
好色霊遊講
「「増刊読切小説集」(荒木書房新社、昭和29年12月15日発行)

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土師清二|時代小説ガイド
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