「公武一和」を掲げ幕末の第三極を目指した、松平春嶽の生涯

『越前福井藩主 松平春嶽 明治維新を目指した徳川一門』|安藤優一郎|平凡社新書

越前福井藩主 松平春嶽 明治維新を目指した徳川一門歴史家、安藤優一郎さんの歴史読み物、『越前福井藩主 松平春嶽 明治維新を目指した徳川一門』(平凡社新書)をご恵贈いただきました。

越前福井藩主・松平慶永(号は春嶽)は、NHK大河ドラマ「青天を衝け」にも登場し、葉室麟さんの歴史時代小説『天翔ける』にも描かれています。

徳川慶喜よりも早く大政奉還を唱えた大名で、坂本龍馬を勝海舟に紹介したことで知られ、薩摩藩主島津斉彬、土佐藩主山内容堂、宇和島藩主伊達宗城らと幕末の四賢侯に数えられ、幕末の主要人物の一人です。

しかしながら、幕末の主役になりきれず、彼が果たした役割は今一つわかりにくいもののように思っていました。

本書では、豊富な文献をもとに、春嶽の生涯を描き、彼の視点からの幕末史を明らかにしていきます。

徳川一門において、敬して遠ざけられる福井藩。
第十六代藩主・松平春嶽は、藩内改革を推し進め、
のち、幕政にも深く関わっていく。
幕末の中心人物として、誰よりも早く大政奉還を唱え、
公武一和を目指したその生涯を追いながら、
幕末の動向を新たな視点で再構築する。
幕末や薩長同盟とは立場を異にする、
第三極の牽引者の姿を描き出す。

(本書カバー袖の紹介文より)

幕末史は、幕府対薩長など外様雄藩の対抗関係で語られることが一般的です。

幕末における、松平春嶽の役割をわかりづらく感じるのは、徳川慶喜を将軍候補に擁立して以来、幕府に対して外から政治行動を続けていくかたわら、薩摩藩とも有効な関係を築いていたりして、佐幕でも討幕でもない、第三極を目指したことに由来するように思われます。

 本書は幕末史の主役の一人松平春嶽の生涯を追うことで、そんな知られざる歴史の裏舞台に迫る。薩摩藩、長州藩、あるいは幕府や会津藩が主役の幕末史からは零れ落ちてしまう事象を集め、春嶽や福井藩からの視点で新たな幕末史の構築を目指すものである。

(『越前福井藩主 松平春嶽 明治維新を目指した徳川一門』「プロローグ――幕末の第三極・松平春嶽」P.10より)

第二章では、薩摩藩など外様大名との連携により、幕政進出を目指した春嶽の政治運動が、大老井伊直弼の前に挫折し、安政の大獄が起こり、春嶽自身も隠居に追い込まれて、政治生命を断たれてしまうまでが描かれます。

その後、政治的復権を果たし、政局の舞台で、「公武一和」を掲げて第三極としての政治力を発揮していきます。

春嶽の目線から時系列に、彼の事績を追っていくことで、あまり知られていない幕末史の新たな面が解き明かされていきます。

越前福井藩主 松平春嶽 明治維新を目指した徳川一門

安藤優一郎
平凡社 平凡社新書
2021年8月10日 初版第1刷

装幀:菊地信義

●目次
プロローグ――幕末の第三極・松平春嶽
第一章 春嶽、越前福井藩となる――親藩大名の苦悩
 一 越前松平家と幕府の微妙な関係
 二 春嶽襲封までの福井藩の苦難
 三 改革に着手する
第二章 大老井伊直弼との対決――安政の大獄
 一 雄藩連合を模索する
 二 一橋派の結成
 三 藩士橋本左内の抜擢
 四 隠居に追い込まれる
第三章 政事総裁職への就任と横井小楠――慶喜・春嶽政権の誕生
 一 殖産興業に努める福井藩
 二 悲願の幕政進出と政治理念
 三 京都での苦難と無断帰国
 四 挙藩上京の中止と藩内粛清
第四章 薩摩藩との提携路線を強める――「薩越同盟」の可能性
 一 慶喜に振り回される
 二 薩摩藩との蜜月
 三 大政奉還を建言する
 四 薩摩藩との距離が広がる
第五章 戊辰戦争という踏絵――新政府の主導権を奪われる
 一 幕府の消滅と春嶽の新政府入り
 二 薩摩藩との対決
 三 鳥羽・伏見の戦い
 四 慶喜助命に奔走
第六章 維新後の春嶽――福井藩の消滅
 一 明治政府を去る
 二 幕末史の編纂に挑む
エピローグ――春嶽の歴史的役割

松平春嶽関係年表
参考文献

本文231ページ

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『越前福井藩主 松平春嶽 明治維新を目指した徳川一門』(安藤優一郎・平凡社新書)
『天翔ける』(葉室麟・角川文庫)

安藤優一郎|著作ガイド
安藤優一郎|あんどうゆういちろう|歴史家 1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士。 早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学。 主に江戸をテーマとして執筆・講演活動を展開。 ■時代小説SHOW 投稿記...