老旗本の願いを叶える、市兵衛の風の剣。コロナもぶっ飛ばす

『乱れ雲 風の市兵衛 弐』|辻堂魁|祥伝社文庫

乱れ雲 風の市兵衛 弐辻堂魁さんの長編時代小説、『乱れ雲 風の市兵衛 弐』(祥伝社文庫)を入手しました。

渡り用人を生業にする唐木市兵衛が、得意の算盤に加えて、剣術の腕も尋常でなく、請けた仕事を誠実に果たす算盤侍です。本書は、算盤侍の痛快な活躍を描く人情時代小説シリーズの通巻で28巻になる、最新刊です。

江戸を流行風邪が襲った。蘭医柳井宗秀は、重篤の老旗本笹山卯平に請われて、唐木市兵衛を紹介する。卯平は密かに金貸を営んでおり、百両近い貸付が残る五千石の旗本広川助右衛門へのとりたての助役を依頼したのだ。助右衛門は返済逃れの奸計を巡らす。同じ頃《鬼しぶ》の息子良一郎は北町奉行所に出仕、見習仲間と賭場で破落戸相手に大立回りを演じてしまい……。

(カバー裏面の説明文より)

ちょうど、新型コロナウイルスが流行を極める現在のようなシーンから物語は始まります。

 その夏の終り、妙な夏風邪が江戸市中に流行った。
 図らずも泉下の客となる者も出て、ほんの二、三日咳こんで身体がだるく熱っぽく、寝こむほどではないものの、養生しなくてはと思っていたところへ、四日目あたりから急に高熱を発して起きていられず、呼気が絶え絶えになるほど胸を冒されて息を喘がせ苦しみ衰弱していき、それから早くて四、五日、遅くてせいぜい七、八日ほどで力つきる、というものだった。
 
(『乱れ雲 風の市兵衛 弐』P.12より)

蘭医・柳井宗秀は、その夏の流行風邪の所為大忙しどころの騒ぎではありませんでした。京橋柳町界隈で流行風邪が猛威をふるい、診療所に病人が押し寄せ、次々にやってくる病人は診療所に入りきれず、問屋の土手蔵を一棟借り受けて病人を収容し、さらには仮小屋を普請して作った急拵えの収容所に重篤に陥った病人を運び込みました。

町の対応の早さと宗秀の的確な指図と診療で、京橋柳町はいち早く、普段の暮らしが戻りつつありましたが、江戸では町家から武家屋敷へと流行風邪は広がっていきました。

市兵衛は宗秀の口添えで、築地に屋敷がある家禄千五百石の旗本、笹山家を訪れました。年老いた当主の卯平は、裏で金貸しをやっておりましたが、流行風邪に罹り重篤で病床にありました。

倅の助役で貸金の取り立てをしてほしいという仕事でした。
五千石の大身の旗本・広川助右衛門に百両近い貸付があり、取り戻せないと心残りで死ねないと懇願され、市兵衛はやむなく仕事を受けることになりました。

《鬼しぶ》こと、北町奉行所の定町廻り同心・渋井鬼三次の倅、良一郎は無足見習(無給の見習同心)として北町奉行所に出仕を始めました。

本書では、市兵衛が助右衛門から貸付金を取り戻せるのかという仕事の結果とともに、良一郎の修業奮闘ぶりが描かれています。

コロナ禍で溜まったストレスを、市兵衛の痛快な活躍を楽しんで発散したいと思います。

乱れ雲 風の市兵衛 弐

辻堂魁
祥伝社 祥伝社文庫
2021年1月20日初版第1刷発行

カバーデザイン:芦澤泰偉
カバーイラスト:卯月みゆき

●目次
序章 流行風邪
第一章 上弦の月
第二章 とりたて
第三章 出世街道
第四章 東宇喜田
終章 放生

本文340ページ

文庫書き下ろし。

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『乱れ雲 風の市兵衛 弐』(辻堂魁・祥伝社文庫)

辻堂魁|時代小説リスト
辻堂魁|つじどうかい 1948年、高知県生まれ。早稲田大学文学部卒業。 2016年、『風の市兵衛』シリーズで第5回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞受賞。 ■時代小説SHOW 投稿記事 ...