盗賊の頭に、役者の卵、座敷童まで、美猫サバの長屋に出現

『鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)』|田牧大和|PHP文芸文庫

鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)田牧大和さんの人気時代小説シリーズの第九弾、『鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)』(PHP文芸文庫)をご恵贈いただきました。

本書は、根津権現近くの根津宮永町にある「鯖猫長屋」を舞台にした、「大江戸謎解き人情ばなし」シリーズの最新刊です。

長屋の通り名は、住人の一人で画描きの青井亭拾楽が飼っている雄の縞三毛サバから来ています。
サバは、とにかく威張っていて、長屋で家主よりも差配よりも偉い、一番偉い存在です。喧嘩はめっぽう強く、猫同士はもちろん、犬にも鴉にも、ときには人にも勝ちます。

根津権現にほど近い「鯖猫長屋」に、盗賊「鯰の甚右衛門」が蘭方医になりすまし、姿を現す。相棒を探しているらしいが、狙いは元盗人で、長屋を“仕切る”猫サバの飼い主である画描きの拾楽――。主の危機にもかからず、サバはなぜか動かない。そんな折、歌舞伎役者の卵が長屋に転がり込み、涼太の部屋には座敷童まで現れて……。猫好きにはたまらない、謎解き&人情ばなし第九弾。
(カバー裏の内容紹介より)

「鯖猫長屋」は、なぜか、妖やお化けの類と縁のある長屋で、騒動が絶えません。
その長屋で、サバは、奇妙な「家鳴り」をぴたりと止めたり、お化けや妖の類を退治したり、と頼りになる存在です。

「黒ひょっとこ」、思った以上に面白い奴だ。
 隙がないのか、隙だらけなのか、分からない。
 噂を聞いた限りでは、仲間をつくらず、ひとりで気ままに盗っ人稼業を愉しんでいたはずだ。
 ひとりの盗人としての頭の良さ、盗人技と立ち回りの手練れぶりは、江戸で一、二を争う。
 何物にもとらわれず、何者にも執着しない。
 ただ、心の赴くままに、闇を走り、盗みを働く。
 
(『鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)P.96より』)

サバの飼い主の青井亭拾楽は、かつて「黒ひょっとこ」の名で知られた、天下の義賊でした。元盗賊の拾楽の前に、隻眼の蘭方医杉野英徳が現れました。
立派で善良な蘭方医を装った英徳は、「鯰の甚右衛門」という名で知られる盗賊一味の頭でした。そして、拾楽を相棒として一味に引き込むべく接近してきました。

そんな折、中村座を追い出された下っ端の歌舞伎役者が、「鯖猫長屋」に転がり込んできて、団扇や玩具の振り売りをする元役者の涼太の部屋で暮らすことになりました。

さらに、座敷童(わらし)まで現れて、「鯖猫長屋」は騒動の種がいっぱいです。

珍しい雄の三毛で美猫のサバが、長屋と拾楽に迫る危機をいかに解決していくのか、猫好きならずともたまらない、謎解きと人情ばなしを堪能したいと思います。
榛色(はしばみいろ)の瞳を何かを見据える、表紙装画にきゅんです。

鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)

田牧大和
PHP研究所 PHP文芸文庫
2020年12月22日第1版第1刷
文庫書き下ろし

装丁:泉沢光雄
装画:丹地陽子

●目次
其の一 太一のの傷
其の二 貫八の病
其の三 役者の妹
其の四 座敷童の怒り

本文295ページ

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『鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)』(田牧大和・PHP文芸文庫)(第9作)
『鯖猫長屋ふしぎ草紙』(田牧大和・PHP文芸文庫)(第1作)

田牧大和|時代小説ガイド
田牧大和|たまきやまと|時代小説・作家 東京都生まれ。 2007年、「色に出でじ、風に牽牛」(刊行時に『花合せ』に改題)で小説現代長編新人賞を受賞してデビュー。 ■時代小説SHOW 投稿記事 ...