まだらの腰紐? 江戸のシャーロック・ホームズ、見参!

『目利きの芳斎1 二階の先生』

目利きの芳斎1 二階の先生井伊和継(いいかずつぐ)さんの文庫書き下ろし時代小説、『目利きの芳斎1 二階の先生』(二見時代小説文庫)を入手しました。

本書の著者紹介には、出生年や出身地、最終学歴などのプロフィールは書かれておりませんが、ベテラン作家として著作は多数あるが、満を持して本格時代小説に初挑戦とあります。

が、「シャーロック・ホームズの研究家としてつとに有名」とあり、俄然興味を惹かれました。

「お帰り、和太郎さん」「えっ」――どうして俺の名を知ってるんだ…いったい誰なんだ? 家を飛び出して三年、久しぶりに帰ってきたら、帳場に座って俺のあれこれを言い当てるやつが――。湯島の道具屋「梅花堂」に千里眼ありと噂される鷺沼芳斎と、お調子者の跡取り和太郎の出会いだった。骨董の目利きだでけなく謎解きに目がない芳斎が、持ち込まれる謎を解き明かす事件帳の開幕。
(本書カバー裏の紹介文より)

腰を痛めて箱根に湯治に来ていた、江戸・湯島で道具屋「梅花堂」を営む金兵衛は、伊勢参りの一行が同宿したせいで混雑した宿で、浪人・鷺沼芳斎(さぎぬまほうさい)と相部屋となりました。

絵師として修業中という芳斎は、初対面の金兵衛を江戸の道具屋と見抜き、金兵衛が仕入れたばかりで失くした煙管を見つけ出しました。

芳斎の慧眼ぶりと、絵の知識はいうに及ばず、並々ならぬ学識と趣味の広さに舌を巻き、意気投合をして飲み明かし、江戸での再会を約束しました。

ひと月ほどの湯治で回復して意気揚々と江戸に戻った金兵衛は、快気祝いの宴を開いて大いに酒を飲んだ夜、卒中を起こして息を引き取りました。

金兵衛亡き後、おかみのお寅が「梅花堂」を守っていましたが、ある日、変な侍に強請られるているところに、芳斎が現れて危難を救いました。

江戸に定宿がない芳斎は、そのまま、「梅花堂」の二階に泊まり、道具の目利きと用心棒代わりをつとめることになります。

「結構なお品ですな」
「そうでしょう」
 客はにやにやして、手をすり合わせる。
 芳斎もにやり。
「失礼ながら、どちらでお求めになられた品ですかな、魚屋さん」
「げっ」
 客は飛び上がった。
「あっしが魚屋だと、どうして」
「違いますかな」
 
(『目利きの芳斎1 二階の先生』 P.49より)

芳斎は、見ただけで相手の素性を言い当てます。また、失せ物や人探しでも仔細を聞き適切な助言を与えます。

さながら、シャーロック・ホームズが依頼人に対して行う振る舞いのようで、にやりとさせられます。

「ふうん、驚いたな、どうも」
「だろう。ほかにもあるよ。常磐津の師匠がまだらの腰紐で首を吊った一件の謎を解いたり」
「まだらの腰紐ですか」
 
(『目利きの芳斎1 二階の先生』 P.88より)

「シャーロック・ホームズの冒険」の「まだらの紐」や「技師の親指」を想起させる事件も描かれています。

芳斎はホームズのもじりで、ワトソン役をつとめる和太郎も登場し、芳斎に「和太さん」と呼びかけられたシーンでは噴き出してしまいました。

シャーロキアンでなくても、楽しめる捕物シリーズの始まりです。

目利きの芳斎1 二階の先生

井伊和継
二見書房 二見時代小説文庫
2020年9月25日初版発行

文庫書き下ろし

カバーイラスト:横田美砂緒
カバーデザイン:ヤマシタツトム(ヤマシタデザインルーム)

●目次
第一章 二階の先生
第二章 目利き指南
第三章 いざ吉原
第四章 龍鼻の茶碗

本文293ページ

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『目利きの芳斎1 二階の先生』(井伊和継・二見時代小説文庫)
『シャーロック・ホームズの冒険』(アーサー・コナン・ドイル・深町眞理子訳・創元推理文庫)

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