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伝説の火消を失った大火から十八年。炎の中から現れた男は?

『襲大鳳(上) 羽州ぼろ鳶組』

襲大鳳(上) 羽州ぼろ鳶組今村翔吾さんの大人気時代小説シリーズの第10弾、『襲大鳳(上) 羽州ぼろ鳶組』(祥伝社文庫)を入手しました。

「羽州ぼろ鳶組」シリーズを手に取ると、毎回、表紙装画にドキドキさせられます。
北村さゆりさんが描くイラストは、その巻で主要な役割を演じる人物の後ろ姿が描かれています。
読み終えて振り返ると、あのシーンなのだと合点がいきます。

本書は、紅蓮の炎の中、女を抱えた白っぽい火消羽織を着て頭を隠した人物が描かれています。
果たして誰なのか、妄想が膨らみます。

大気を打ち震わす轟音が、徳川御三家尾張藩屋敷に響く。駆け付けた新人火消の慎太郎が見たのは、天を焼く火柱。家屋が爆ぜたと聞き、慎太郎は残された者を救わんと紅く舞い踊る炎に飛び込んだ――。新庄藩火消頭松永源吾は、尾張藩を襲った爆発を知り、父を失った大火を思い出して屈託を抱く。その予感は的中。源吾の前に現れたのは、十八年前の悪夢と炎の嵐だった。

(本書カバー裏の紹介文より)

前作『黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零』では、羽州ぼろ鳶頭取・松永源吾も加賀藩火消頭取・大音勘九郎も十代で新人火消だった頃、十八年前に起きた林大学頭の屋敷から出火した大火が描かれました。

大火の後、優秀な新人火消たちがそろって火消番付入りして、「黄金の世代」と呼ばれました。その後、黄金雛たちは経験と技術を積み、今や火消界の中心となっていました。

さて、本書『襲大鳳』に、「かさねおおとり」とルビが振られています。

辞書を引いてみると、「襲」の字は、「襲撃」や「逆襲」など襲いかかる意味や、「襲名」や「世襲」のように跡を引き継ぐ意味で知られています。

「かさね」と読む場合は、重ね着するや重ねた着物を表すようです。

運動能力が抜群で血気盛んな慎太郎と、炎の流れが読める異能をもつ藍助。
非番の日に町を見回っていた、二人の新米火消が尾張藩上屋敷で発生した火事に遭遇したことから物語は始まります。

火元の屋敷では、火勢が凄まじく屋根から傲然と火柱が飛び出す状況で、逃げ遅れた者が一人いると知り、慎太郎は火中に飛び込もうとします。

「慎太郎、待って――」
「別に手柄を立てたくて逸っているんじゃねえ。俺の他に誰がいる!?」
「そうじゃない。何か……炎がおかしい。喜んでいるみたいだ」
 揺らめく炎を見つめる藍助の横顔は、火明かりに照らされて仄かに紅く染まっている。
 
(『襲大鳳(上) 羽州ぼろ鳶組』 P.57より)

慎太郎は、八重洲河岸定火消頭で江戸を代表する火消の一人で、現場に居合わせた進藤内記と火中へ。

本書では、十八年前の大火を引き起こした、伝説の火消・尾張藩火消頭取伊神甚兵衛の亡霊が、江戸の火消たちを悩ませます。

松永源吾は火消になったとき、甚兵衛本人に許しをもらって、同じ鳳凰を背負った火消羽織を作ったほどに、甚兵衛に憧れていました。

尾張屋敷を連続して襲う付け火は、十八年前の因縁なのか。
表紙のイラストの人物の正体は?

血沸き肉躍るような、江戸の火消たちの活躍から目が離せません。

襲大鳳(上) 羽州ぼろ鳶組

今村翔吾
祥伝社 祥伝社文庫
2020年8月30日初版第1刷発行

文庫化書き下ろし

カバーデザイン:芦澤泰偉
カバーイラスト:北村さゆり

●目次
序章
第一章 青銀杏
第二章 黒鳳の羽音
第三章 連合の系譜
第四章 蝗と龍
第五章 尾張炎上

本文344ページ

■Amazon.co.jp
『襲大鳳(上) 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫)
『黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零』(今村翔吾・祥伝社文庫)

今村翔吾|時代小説ガイド
今村翔吾|いまむらしょうご|時代小説・作家 1984年京都府生まれ。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て、作家に。 2016年、「蹴れ、彦五郎」で第19回伊豆文学賞最優秀賞受賞。 2016年、「狐の城」で第23回九...