羽太雄平さんの初期傑作時代短編38編が電子書籍で一挙復刊

不伝の剣/返し相伝1991年『本多の狐』で第2回時代小説大賞を受賞し、「与一郎シリーズ」など代表作をもつ、時代小説家の羽太雄平(はたゆうへい)さん。
その初期の傑作時代小説の短編38編が、この度、新・自薦短編シリーズとしてAmazonのKindle版で配信されました。

いずれも、著者のデビュー当時に書かれて雑誌等に発表された後、単行本化されていない作品、あるいは絶版状態で入手困難な作品を電子書籍化したものです。

シリーズ1・2の『不伝の剣/返し相伝』は、カップリングされている2作品ともに、一子相伝の秘剣を巡る父子の相克をテーマにしています。

「不伝の剣」は、藩の御納戸支配の嫡男・木崎杢之助が八歳のある日に見たショッキングな場面から始まります。

狂ったように人を襲おうとした犬の前には喉元を地に染めて倒れた下男と、気を失った母がいて、父弥左衛門は犬を成敗しようと剣をもって対峙します。藩主伊勢守の信頼が厚い父は、松平不昧公(治郷)由来の不伝流の秘剣の継承者でもありました。

不幸な事件の後、父は役目を辞して隠居し、母は次男・欣次郎を産んですぐに亡くなります。杢之助には父の命で剣の厳しい稽古が始まります。

そして、十五年が経過し、伊勢守が亡くなり世子の長門守が藩主となり、その粗暴で奇矯な行動から、藩内は二つの派閥による争いが起こっていました……。

「返し相伝」は、一子相伝の秘技奥義を、伝えるべき子が幼かったり修行中であったりした場合、いったん高弟に伝えておき、条件がそろったところで伝え返すことを指し、物語の主題になっています。

道場主だった父を早くに亡くした弓場宗二郎は成人し、返し相伝を受けることに。ところが、父が遺した秘技は三つあり、秘太刀は三人の弟子に伝えられたといいます。
道場から離れて、窯元の居候として乳姉弟のおさとに育てられた宗二郎は、誰から返し相伝を受けるのかわかりません。

どちらの作品も、家族、武家、チャンバラ、ミステリー、青春ものなど、「与一郎シリーズ」にもつながる時代小説のエッセンスが詰まっていて、著者の著作のルーツでもある初期の傑作短編です。

カメラマン出身で、広告制作会社を経営されていた著者らしく、タイトルページの写真にも工夫を凝らされていて、スタイリッシュです。

雄平遊言
新・自薦短編シリーズ配信|雄平遊言

■Amazon.co.jp
『不伝の剣・返し相伝』(羽太雄平・Kindle版)
『峠越え 与一郎シリーズ壱』(羽太雄平・Kindle版)