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写楽の謎を題材にしたミステリー捕物小説

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楠木誠一郎さんの『ふたり写楽』を読む。元南町奉行直属の密偵で手習い師匠の一文字弦斎が活躍する「もぐら弦斎手控帳」シリーズの二作目である。一作目の『逃がし屋』がスケール感が大きく、エンターテインメント度も高い作品に仕上がっていたので今回も期待して読んだ。

手習いの師匠・弦斎が住む長屋の大家・義兵衛が東洲斎写楽の浮世絵を手に入れた。だが、値段が安すぎる上に、落款も違っている。版元の蔦屋耕書堂に確認したところ、間違いなく写楽の絵であるという。「実は写楽は何者かにかどわかされたのです」と、版元の主人の蔦屋重三郎は驚くべき秘密を打ち明けた…。

絵の謎を解き明かすために、消えた写楽の行方を追う弦斎。写楽の正体は? ミステリー仕立てで楽しめる作品に仕上がっている。今回も弦斎を助けて長屋の面々が活躍するほか、写楽をかどわかした敵役の「婆沙羅の政五郎」とその情婦のお杉のキャラクターが魅力的。

写楽の謎を描いた時代小説としては、ほかにも杉本章子さんの『写楽まぼろし』や泡坂妻夫さんの『写楽百面相』、えとう乱星さんの『写楽仕置帳―御膳役一条惣太郎探索控』など傑作がある。

写楽まぼろし (文春文庫)

写楽まぼろし (文春文庫)

写楽百面相 (文春文庫)

写楽百面相 (文春文庫)

ともかく、次回作も期待したいところ。