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拝領屋敷と地守

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佐藤雅美さんの本を読んでいると、江戸に関する知識がついてためになる。たとえば、『疑惑 半次捕物控』では、拝領屋敷のことが物語に登場し、テーマになった捕物話が載っている。

「吉兵衛が浜松屋茂左衛門の下谷御成街道の、家質に入っていて流れた間口十間の家屋敷を手に入れたのは知っておるな」

「やはり、そうでしたか」

 そんな噂があると定廻り岡田伝兵衛がいっていた。

「それで吉兵衛が家屋敷の引き渡しを受け、屋敷に入るとそこに侍三人がいて、ここは我らが主人の屋敷、なにゆえ立ち入るのかと」

「どういうことです?」

「吉兵衛によるとそこは拝領屋敷なのだと」

「なるほど、そういうことですか」

(『疑惑』P.63より)

拝領屋敷とは、御家人、旗本、大名などが公儀から拝領する屋敷(地所)のこと。公儀は所有権を留保していて、拝領屋敷は賃貸しも売買は認められていなかった。しかし下級幕臣(おもに御家人)の多くは拝領屋敷の賃貸や実質売り渡しを行っていた。

ただ、拝領屋敷は表向き賃貸や売買を禁止されているので、屋敷・地所の売買に必要な「沽券(こけん。権利書のような証書)」を作成することはなかった。そこで、土地を実質上占有するものを「地守」ということにして、「地守」の権利の売買を行った。

上記の引用では、吉兵衛が浜松屋茂左衛門より地守の権利を買ったが、ゴタゴタしている間に、拝領屋敷の名義上の持ち主の御家人が、勝手に入り込んで俺の家だと居直って強請った事件だ。

このように、他の作家の作品ではあまり描かれることのない、詳しい江戸情報が盛り込まれているのが、魅力の一つ。

疑惑 半次捕物控 (講談社文庫)

疑惑 半次捕物控 (講談社文庫)

コメント

  1. いちファンより より:

    私も時代小説が大好きで時代小説以外は読む気がしません。
    貴殿の時代小説に取り組む姿勢、私も多いに参考にさせて頂く伴に今後もこのブログを読ませて頂きます。

  2. 理流 より:

    コメント、ありがとうございます。時代小説が本当に面白くて、その思いを伝えることで、よりたくさんの素敵な時代小説に出合いたいと思ってブログを続けています。