痔と糖尿病―江戸の場合

吉村昭さんの『桜田門外ノ変〈上〉 (新潮文庫)(下)』を読んでいたら、登場人物が痔や蜜尿病(糖尿病)に悩まされるシーンが出てきて、リアリティを感じた。時代小説を多数読んできたが、痔が描かれた作品というのは今まで記憶になかった。糖尿病のほうは、佐伯泰英さんの『火頭―密命・紅蓮剣 (祥伝社文庫)』で描かれている。

 診療をうけて三日目、病状が急に悪化した。眼がかすみ吹出物の腫れが増し、激しい下痢で脱肛して出血がとまらない。その上、歯ぐきがはれて熱い物を口に入れることができなくなった。

下巻 p.277

江戸好きのために心情的に佐幕派寄りなせいか、大老井伊直弼に対しても不当に貶められているのではと思っていた。まったく逆の立場、井伊によって絶えず圧力をかけられる立場の、水戸藩からの視点で描かれた本書を読んで、その見方が大きく変わった。物語は史実に沿って展開される。江戸城桜田門外の襲撃現場の指揮をとった、水戸藩脱藩の関鉄之介を主人公に、事件の全貌が丹念に描かれていき、読みごたえがある。

昔のアントニオ猪木のプロレスのように、相手の攻撃を受けるだけ受けて、最後に逆襲して倒すといった図式があり、そこにはカタルシスがあった。