『我、演ず』|赤神諒|朝日新聞出版
2025年6月1日から6月末日の間に、単行本(ソフトカバー含む)で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2025年6月の新刊(単行本)」を公開しました。
今月の注目作『我、演ず』(朝日新聞出版)は、赤神諒(あかがみ・りょう)さんによる最新作。戦国武将・佐野昌綱(さの・まさつな)を主人公に描いた長編歴史小説です。
著者について
赤神諒さんは、2017年に『義と愛と』で第9回日経小説大賞を受賞し、翌年、受賞作を改題した『大友二階崩れ』で単行本デビューを果たしました。
以降、精力的に歴史・時代小説を発表し、2023年には『はぐれ鴉』で第25回大藪春彦賞、2024年には『佐渡絢爛』で第13回日本歴史時代作家協会賞作品賞と第14回本屋が選ぶ時代小説大賞をW受賞しています。
現在、最も新作が期待される歴史小説作家の一人です。
あらすじ
主要な土地に位置することから、唐沢山城は北条家と上杉家の度重なる攻撃にさらされます。民を戦火から守るため、城主・佐野昌綱が選んだ戦略は「降伏」でした。 戦況に応じて北条と上杉のいずれかに従いながら、戦国の世を生き抜いた異色の人物・佐野昌綱の姿を描く歴史小説です。(『我、演ず』Amazon内容紹介より抜粋・編集)
ここに注目!
赤神さんの代表作である「大友サーガ」は、戦国時代の豊後国(現在の大分県)を治めた大友氏を描いた一連の作品群で、ファンも多く支持を集めています。
本作では、舞台を北関東・下野国(しもつけのくに)の佐野に移し、唐沢山城の城主・佐野昌綱を主人公に据えています。
正直なところ、本書に出合うまでは佐野昌綱という人物を知りませんでした。昌綱は佐野氏第十五代当主で、北条氏綱や上杉輝虎(後の謙信)といった強敵から何度も攻撃を受けながらも、あえて「降伏」という選択を繰り返し、城兵と領民を守り抜いた知将です。
とはいえ、「家」を守り、「民」を守りながら「降伏」を選ぶというのは、極めて難しい決断です。昌綱はどのように戦い、どのように敵と交渉し、いかにして「降伏」という戦術を用いたのでしょうか。そこにどのような人間ドラマがあったのか――読む前から強く惹きつけられました。

今回取り上げた本
