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織田が殺人容疑で逮捕! 夏希のもとに仲間が結集し再捜査

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『脳科学捜査官 真田夏希 エキセントリック・ヴァーミリオン』|鳴神響一|角川文庫

脳科学捜査官 真田夏希 エキセントリック・ヴァーミリオン鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『脳科学捜査官 真田夏希 エキセントリック・ヴァーミリオン』(角川文庫)を紹介します。

お盆に入る前に読んだ本で、バタバタしていて、ホームページで取りあげるのが遅くなってしまい申し訳ありません。

時代小説ではなく、お気に入りの作者の、大好きな現代小説シリーズのひとつ。
警察庁サイバー特別捜査隊に所属する脳科学捜査官の真田夏希が、クラッキングなどのサイバーテロ犯罪と戦う、警察小説シリーズの第17作です。

警察庁サイバー特別捜査隊の真田夏希は、つかの間の休日に隊長である織田信和と鎌倉を訪れていた。だが、そんなデート気分も突如現れた6人の捜査員の言葉に遮られてしまう。殺人容疑で織田に逮捕状が出ているというのだ。夏希の目の前で逮捕され、連行される織田。彼は、本当に殺人を犯したのか。彼の無実を信じる夏希は、江の島署の加藤に協力を求めるが――。
織田を救うため、夏希と加藤は異色の合同捜査を開始する!
(本書カバー裏紹介より)

七月のとある日曜日、真田夏希は、明月院で紫陽花を見る予定で鎌倉にいました。隊長の織田信和と鎌倉でランチを楽しみ、店を出たところで、六人のスーツ姿の男たちに呼び止められました。

「刑事部捜査一課の矢部と申します。織田信和さんですね」
 織田に向かって男は警察手帳を提示した。階級は警部補なので、係長級ということになろう。
「ご苦労さま。織田ですが」
 眉間にしわを寄せながらも、織田はゆったりとした調子で答えた。
「織田警視正、あなたに逮捕状が出ています」
 夏希は耳を疑った。
「逮捕状……」
 かすれ声で織田は言葉を途切れさせた。
 
(『脳科学捜査官 真田夏希 エキセントリック・ヴァーミリオン』P.18より)

夏希の目の前で、織田が、殺人容疑で逮捕されてしまいます。
被害者は数日前に横浜市神奈川区で殺された福原直利という男で、織田の高校時代の同級生だと言います。

「バカを言うな、福原を殺すなんて……だいいち僕には動機がない」
 さすがに織田も声を尖らせた。
 被害者の福原という人物を織田は知っているようだ。
「それはこれから伺いますよ」
 矢部の声は冷たく響いた。
「神奈川県警の失態だ。君たちは許されない間違いを犯しているんだ」
 織田は明確な発声で抗議した。

(『脳科学捜査官 真田夏希 エキセントリック・ヴァーミリオン』P.20より)

夏希は織田の逮捕に動揺し、脳貧血に襲われ、続いて不安感が沸き起こってきましたが、できる限りの情報を集めようと、かつて所属していた神奈川県警の上長に電話をかけて、逮捕の理由を聞きました。

遺体発見の前日夜に織田は福原と現場付近のバーで会っていて、バーの店長と客は二人がもめていたと証言していると。そして決定的な証拠として、殺害現場近くに設置された防犯カメラに、織田が福原を棒状のもので殴り、運河に突き落とす映像が記録されていました。織田の起訴は確実で、近く記者発表もされるだろうと。

織田が誰かを殺した人間とは思えない、夏希は、続いて、織田の大学の同級生で、奇妙な友情をもつ、刑事部根岸分室長の上杉輝久に電話をします。しかし、何度鳴らしても上杉は電話に出ず、伝言メモも留守番電話サービスも設定されていません。

続けて、何度も同じ事件を一緒に解決してきた、江の島署刑事課の加藤清文巡査部長に電話をかけて、織田が逮捕されたことと、自分が元上司から聞いた話を残さず伝えました。

加藤は、「おまえはいつも事件の真相をいち早く見抜く、真田の力で解決したいくつもの事件を俺はよく知っている。だから今回の事件にも必ず裏があるに違いない。それを一緒に探そう」と頼もしい声をかけました。

夏希と加藤の2人による独自捜査が始まりました……。

前作の『脳科学捜査官 真田夏希 シリアス・グレー』では、上杉輝久が参考人として警察に連行されましたが、今回は上杉の親友の織田が殺人の逮捕されてしまいました。

しかも証言と決定的な防犯カメラの映像まで出てきて、まさに絶体絶命のピンチです。
警察庁サイバー特別捜査隊にも衝撃が走りました。

福原を殺した動機は?
織田が帰路に乗ったというヴァーミリオン色(Vermilion、朱色)のタクシーは実在するのでしょうか?
また、何者かが織田を犯人にでっち上げたのでしょうか?
とすると、その目的は?

さまざまな謎を明らかにし、夏希は、織田の無実を証明し、釈放させることができるのでしょうか?

夏希は加藤の協力を得て、バディとなって始めた捜査チームに、警察庁サイバー特捜隊が加わりました。そして、神奈川県警のかつての捜査仲間たちも、組織の壁を超えて、集まってきました。

夏希の仲間たち、サイバー特捜隊、神奈川県警の元同僚たちがそれぞれの特技を生かして、捜査していく姿に奮い立ち、元気をもらいました。
意外な敵が明らかになったとき、物語は最高潮になります。
今回は夏希とその仲間たちの友情と勇気に胸が熱くなり、心地よい読了感に浸っています。

脳科学捜査官 真田夏希 エキセントリック・ヴァーミリオン

鳴神響一
KADOKAWA 角川文庫
2023年7月25日初版発行

カバー写真・デザイン:舘山一大

●目次
第一章 逮捕
第二章 信頼
第三章 証拠
第四章 襲撃

本文274ページ

文庫書き下ろし

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『脳科学捜査官 真田夏希』(鳴神響一・角川文庫)(第1弾)
『脳科学捜査官 真田夏希 シリアス・グレー』(鳴神響一・角川文庫)(第16弾)
『脳科学捜査官 真田夏希 エキセントリック・ヴァーミリオン』(鳴神響一・角川文庫)(第17弾)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家 1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。 2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。 2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。 ■時代小説SHO...