シェア型書店「ほんまる」で、「時代小説SHOW」かわら版を無料配布

江戸泰平の世でも、御家存亡の危機に直面した大名たちの命運

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

『大名廃業 お取りつぶし・お家断絶の裏側』|安藤優一郎|彩図社

大名廃業 お取りつぶし・お家断絶の裏側歴史家の安藤優一郎さんのによる歴史読み物、『大名廃業 お取りつぶし・お家断絶の裏側』(彩図社)を紹介します。

江戸時代の大名は、弱肉強食の戦国時代と異なり、世襲が前提でした。
しかし、藩のトップとして君臨しても、身分を突然失ってしまうことが少なくありません。

その地位は決定権を持つも幕府次第で、反抗したりトラブルを起こしたりすれば、改易の処断が待っていました。

幕府に楯突く以外にも、世襲の前提である跡継ぎがいないという事由で改易され、所領を没収されて御家断絶となる事例も江戸時代初期には非常に多かったです。

藩主でも幕府の意向で切腹&お家断絶
跡継ぎなし、刃傷沙汰、幕府に反抗、戦争、強制隠居、御家騒動、領民反発、存亡の危機に直面したお殿様たちの命運

領地没収・身分剥奪をいかに避けたか。
・将軍の葬儀の場で警備役の殿様が怨恨のある殿様を殺害
・お家断絶を回避するためお殿様を座敷牢に幽閉する重臣たち
・名門の改易を避けようとあの手この手で助け船を出した幕府
・領民が江戸藩邸におしかけてきて藩のトラブルが露呈
家臣や親族大名、時には幕府も巻き込んだ!
お家存続をめぐる諸勢力の思惑や隠れた慣行に迫る

(『大名廃業 お取りつぶし・お家断絶の裏側』カバー帯の説明文より)

本書では、御家断絶で大名としての身分と地位を失った様々な事例=大名廃業を解説し、大名家の苦悩を解き明かします。

第一章「跡継ぎなしで大名廃業」では、後継ぎがいないことを理由に御家断絶となる無嗣断絶を、第二章「刃傷沙汰や乱心で大名廃業」では、江戸城での刃傷沙汰を考察します。
第三章「幕府に楯突いて大名廃絶」は、江戸初期に多くありました。
第四章「戦争を起こして大名廃業」では、幕府に反乱を起こして改易となった事例を取り上げています。

第五章「強制隠居で大名廃業」では、御家存続の決定権を持つ幕府に根回ししたうえで、藩の重臣たちが主君たる藩主の統制がきかなくなった御家騒動の事例を紹介します。

 重臣たちによって座敷牢に押し込められた藩主が、そのまま隠居に追い込まれるとは限らなかったことは、先に述べたとおりである。これまでの行為を反省して改心したと重臣たちが判断すれば、座敷牢から出て藩主としての務めを再開できた。再出勤である。
 だが、再出勤後に主君押込を執行した重臣たちに報復した藩主がいた。出羽上山藩松平家の4代目藩主・松平信亨(のぶつら)である。
 
(『大名廃業 お取りつぶし・お家断絶の裏側』P.168より)

こうなると、浅田次郎さんの『大名倒産』で描かれている先代お殿様の企てがすべてフィクションとは思えません。

第六章「御家騒動で大名廃業」、第七章「領民からの反発で大名廃業」と続き、七つの視点から大名廃業の実態を明らかにし、知られざる江戸時代の姿を明らかにしていきます。大名にとっては、江戸はけっして泰平の世ではなかったのですねえ。

大名廃業 お取りつぶし・お家断絶の裏側

安藤優一郎
彩図社
2023年2月20日第1刷

カバー:「仮名手本忠臣蔵 四段目」立命館大学ARC蔵(arcUP2888)

●目次
はじめに
第一章 跡継ぎなしで大名廃業
01 御家断絶により弁明の機会を失った小早川秀秋
02 家康により再興されるも運悪く断絶した武田家
03 家康も気にせざるを得なかった御家断絶の慣例
04 家臣に実権を奪われて自然消滅した肥前の龍造寺家
05 政治的配慮で存続したが結局は断絶した蒲生家
第二章 刃傷沙汰や乱心で大名廃業
06 前将軍の葬儀の場で警備役の殿様が事務方の殿様を殺害
07 将軍綱吉の関与が囁かれる幕政を転換させた大老刺殺事件
08 江戸城への登城も領国への帰国も不可 家康の血を引く大藩が存続危機に
09 犬小屋建設の苦労に突然の大名就任…津山藩主の乱心は重圧が原因か
10 松の廊下での刃傷事件が喧嘩両成敗と認定されなかった理由
11 刃傷松の廊下事件を教訓に遺恨の相手を殺害した前田利昌
12 江戸城で再び刃傷事件発生! そのとき幕府が慎重に対応した理由
第三章 幕府に楯突いて大名廃業
13 江戸開府からまもない時期に徳川家臣団のライバル対決が勃発
14 兄の秀忠に粛清されて90歳を超えても許されなかった松平忠輝
15 兄のこの改易をためらった将軍秀忠の引け目
16 秀忠の面目を潰した福島正則を将軍権威の挑戦者として断固処分
17 次期将軍への代替わりを前にして家康時代からの重臣を粛正
18 親政開始早々に秀吉恩顧のお殿様を叩く家光
19 領地没収と幽閉のすえに自害 将軍家光と弟忠長の確執
20 謀反の嫌疑を掛けられた素行の悪いお殿様が抗議の自害
21 生活苦にあえぐ者の救済を求めて幕政批判の托鉢をして回った家康の甥
22 幕政参加が叶わないなら…幕府に盾突いた最後のお殿様
第四章 戦争を起こして大名廃業
23 リストラされた浪人たちがチャンスを求めて大坂城に結集
24 改易を恐れて出兵に消極的な諸藩 その隙に島原・天草の一揆勢が大集結
25 戦を止めようとしたはずが…藩内抗争に巻き込まれた悲運のお殿様
26 敵対した諸藩を御家断絶にしつつ同時に再興を許可した新政府の意図
第五章 強制隠居で大名廃業
27 親戚や幕府が必死に丸く収めようとした伊達家の御家騒動の顛末
28 将軍吉宗に刃向って死後も許されず藩主から転落した御三家筆頭
29 御家断絶を回避するためお殿様を座敷牢に入れる重臣たち
30 領国トラブルが露見した徳島藩に幕府が名目上は厳しく処罰した理由
31 座敷牢に入れた重臣に報復 そのせいで隠居になった上山幕府」藩主
32 藩政改革は挫折するも強制隠居後に学問で名を馳せる
33 軍事練習を繰り返し 幕府から危険視された徳川斉昭
第六章 御家騒動で大名廃絶
34 幕府は改易を避けたかったが制御不能になって処分された最上家
35 御家存続のチャンスを逸し逃し続けた 藩政を顧みない生駒家の殿様
36 家老と揉めに揉めた会津藩加藤家が領地をみずから返上した理由
37 池田本家の調停が失敗して改易
38 新将軍が権威向上をはかるため裁定を覆した越後高田藩の御家騒動
第七章 領民からの反発で大名廃業
39 見栄で4倍以上の石高を申告 あまりの負担に領民が幕府に直訴する
40 領民が江戸藩邸に押しかけてくる 門訴により改易された安房北条藩士
41 農民の激しい反発から問題視された郡上藩による幕閣ぐるみの年貢増挑
42 幕府が田沼派を粛正しつつも路頭に迷った浪人たちを援助した背景

本文223ページ

書き下ろし

■Amazon.co.jp
『大名廃業 お取りつぶし・お家断絶の裏側』(安藤優一郎・彩図社)

安藤優一郎|著作ガイド
安藤優一郎|あんどうゆういちろう|歴史家 1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士。 早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学。 主に江戸をテーマとして執筆・講演活動を展開。 ■時代小説SHOW 投稿記事 『30の神...