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いざ呉服商いの海へ。五鈴屋主従と仲間らが、いよいよ出帆

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『あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇』|高田郁|時代小説文庫

あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇高田郁さんの文庫書下ろし時代小説、『あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇』(ハルキ文庫)を紹介します。

摂津国武庫郡津門村に学者の子として生まれた幸。
九つのときに大坂天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に出され、「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく、という「源流」からスタートした、「あきない世傳 金と銀」シリーズ。

川の水が岩に当たり流れを変えたり、他の川と合流して大きな河になるように、二代目店主の女房で「お家さん」の富久から五鈴屋を託された、幸も店とともに波瀾万丈の人生を送ってきました。

「早瀬篇」「貫流篇」「淵泉篇」というように、第十巻までは川の流れを表す巻名が付けられていました。第十一巻で「風待ち篇」と付けられ、本巻ではいよいよ河口の湊から船出する「出帆篇」となります。

浅草田原町に「五鈴屋江戸本店」を開いて十年。藍染め浴衣地でその名を江戸中に知られる五鈴屋ではあるが、再び呉服も扱えるようになりたい、というのが主従の願いであった。仲間の協力を得て道筋が見えてきたものの、決して容易くはない。因縁の相手、幕府、そして思いがけない現象。しかし、帆を上げて大海を目指す、という固い決心のもの、幸と奉公人、そして仲間たちは知恵を絞って様々な困難を乗り越えて行く。源流から始まった商いの流れに乗り、いよいよ出帆の刻を迎えるシリーズ第十二弾!!

(本書カバー裏の紹介文より)

元禄十五年(1702)師走十四日、赤穂藩家老だった大石内蔵助が率いる四十七人の赤穂浪士が本所の吉良邸に討ち入るという、大事件を起こしました。

本書の主人公、五鈴屋の幸が浅草田原町三丁目に江戸本店を開いたのが、宝暦元年(1751)の、赤穂浪士所縁の日、師走十四日。およそ五十年後という設定です。

「忠臣蔵」の名で知られる、人形浄瑠璃と歌舞伎の演目『仮名手本忠臣蔵』が初演されたのは、寛延元年(1748年)だそうですので、五鈴屋江戸本店の開店はその三年後ということになります。

物語は、創業十年を五日後に控えて、宝暦十年の師走九日から始まります。

五鈴屋が呉服仲間を追われて、太物商いのみとなった後も、工夫を忘れず、「買うての幸い、売っての幸せ」を基に商いを続けてきた五鈴屋。

駒形町で呉服屋を営む丸屋が悩んだ末、呉服から太物へ商い替えをする決心を固め、月行事に相談したことがきっかけで、浅草太物仲間からの思いがけない申し出がありました
五鈴屋も再び呉服を商える道が見えてきました。
ところが、その道に、因縁の相手、幕府が……。

 板の間の壁に目を遣れば、修徳の掛け軸に並んで、弥右衛門の書が飾られてる。
  衰颯的景象 就在盛満中
  發生的機緘、即在零落内

(『あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇』P.152より)

弥右衛門は幸の亡き兄雅由の学友で、偶然立ち寄った五鈴屋で、医師修徳から贈られて意味がわからぬまま板の間の壁に飾っていた掛け軸の言葉の意味を説明したことがありまし。
弥右衛門はその後郷里の今津に帰り、学塾を開いています。

 現れたのは、掛け軸であった。別に文も添えられている。畳に置いて、ゆっくりと広げれば、確かに弥右衛門の書だ。
  未有根不植 而枝葉榮茂者
 十一の漢字を眺め、もしや「菜根譚」の中の一節ではないか、と幸は思う。
 
(『あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇』P.200より)

本シリーズでは、幸を通して商いの知恵が披露されていくばかりか、人生を幸せに生きるヒントとなるような至言も出てきて、深く心に刻まれていきます。

人生には吉凶が織り交ぜながらやってきます。
折々に読み返してみたくなる作品の一つです。

あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇

高田郁
角川春樹事務所 時代小説文庫 ハルキ文庫
2022年2月18日第一刷発行

文庫書き下ろし

装画:卯月みゆき
装幀:多田和博+フィールドワーク

●目次
第一章 託す者、託される者
第二章 家内安全
第三章 穀雨
第四章 知恵比べ
第五章 掌の中の信
第六章 帆を上げよ
第七章 今津からの伝言
第八章 有為
第九章 不注年暦
第十章 のちの桜花
第十一章 昇竜
第十二章 遥かなる波路
巻末付録 治兵衛のあきない講座

本文325ページ

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『あきない世傳 金と銀(十一) 風待ち篇』(高田郁・時代小説文庫 ハルキ文庫)
『あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇』(高田郁・時代小説文庫 ハルキ文庫)

高田郁(髙田郁)|時代小説ガイド
高田郁|たかだかおる(髙田郁)|時代小説・作家 兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。 漫画原作者を経て、2008年、『出世花』で小説家としてデビュー。 2013年、『銀二貫』で第1回大阪ほんま本大賞を受賞。 2022年、『ふるさと銀河線―...