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泉鏡花の「化鳥」創作秘話を描く、明治金沢ミステリ

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泉鏡花繚乱 化鳥外伝石川県能美市在住の剣町柳一郎(つるぎまちりゅういちろう)さんから、『泉鏡花繚乱 化鳥外伝(けちょうがいでん)』(一起舎)を献本いただきました。

剣町さんは、時代小説同人誌「櫻坂」を刊行されていて、『鞘師勘兵衛の義』でちよだ文学賞優秀賞、『かざりや清次』で泉鏡花記念金沢市民文学賞を受賞され、金沢を舞台にした多くの時代小説を発表されています。

http://tsurugimachi.net/

明治十六年の金澤、銀の簪をこしらえた父・清次が犯人とされる。鏡太郎が柄鏡の中の母すずの手を借りて女芸人殺しの犯人を解いていく。今枝警部や若い燕花「三代目小さん」と共に。やがて、舞台は二十三年の東京に変わり、母すずの面影をおう鏡花に三遊亭圓朝が絡む。他、上野から加賀へと逃げるお手役者の中田家、本阿弥家を描く。
(Webサイト新刊書の紹介より)

明治三十年正月、東京小石川大塚の泉鏡花の借家にて。
落語家の三代目柳家小さんと新進作家の泉鏡花は、神楽坂で料亭遊びをした帰りで、怖い話について話をしました。

「拝借するものって、噺のネタかい」
「小説家といえば、いろんな怖いお話や面白いお話、人情噺をさぞどっさりお持ちでござんしょ、鏡太郎お坊ちゃん」
 小さんは盆の窪に手をやりながら恥ずかしそうにするが好奇心いっぱいだ。
「お坊ちゃんはよしておくれ。もう子どもじゃないのだから。それに怖い話と言ったって、わたしは幽霊やお化けが少しも怖くもないから話すことなんてないよ。それに、怖いと言ってもたかが知れている。圓朝師匠の『牡丹灯籠』のようにはいかない」

(『化鳥外伝』P.1より)

神楽坂で偶然に会った二人ですが、鏡花の郷里の金澤の寄席でも、何度も会っていました。三代目の小さんは一橋家の元家臣の家柄で、幕府の瓦解で禄を失い、明治十五年ごろから燕花(えんか)の名で各地の寄席をまわり、金澤に来ていました。

小さんから怖い話を乞われた鏡花は、金沢で起こり、二人が巻き込まれた女芸人殺しを回想します……。

昭和の時代に落語協会会長を長くつとめ、永谷園のテレビCMに登場していたのは五代目の小さん師匠です。

「泉鏡花繚乱」のサブタイトルの付いた本書は、鏡花の短編『化鳥』の創作秘話を描いた、長編小説です。

目次
化鳥外伝
維新の埋火

■Amazon.co.jp
『化鳥・三尺角 他六篇』(泉鏡花・岩波文庫)

[つ] 剣町柳一郎
剣町柳一郎|つるぎまちりゅういちろう|時代小説・作家 立教大学文学部卒業。 同人誌「櫻坂」同人。 2006年、「かざりや清次」で第34回泉鏡花記念金沢市民文学賞受賞。 2009年、「鞘師勘兵衛の義」で第1回ちよだ文学賞優秀賞受賞。 ■時代小...