シェア型書店「ほんまる 神保町」に時代小説SHOWの棚ができました

大名庭園の盛衰を通して江戸を知る

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

江戸をテーマとする執筆・講演活動を展開する歴史家の安藤優一郎さんの『大名庭園を楽しむ』を読んだ。本書は、江戸の大名屋敷の特徴を現代的な視点で解説した『大名屋敷の謎』の姉妹編にあたる江戸読み物。上屋敷・中屋敷・下屋敷など1000にも及ぶ江戸の大名庭園にスポットを当て、その事情や役割、盛衰ぶりを当時の日記類をもとに明らかにしている。

大名屋敷の謎 (集英社新書)

大名屋敷の謎 (集英社新書)

尾張徳川家戸山下屋敷(戸山荘)が、江戸最大級の広さをもつ大名庭園で、内部には本物そっくりの東海道の宿場町があったという話は、東郷隆さんの『御町見役うずら伝右衛門』や泡坂妻夫さんの『からくり東海道』などの時代小説に描かれていた。しかし、その実際のところが本書に詳しく書かれている。東海道小田原宿をモデルに、三十六、七軒の町屋が七十五間(約136メートル)にわたって立ち並んでいたという。米屋・酒屋・八百屋・炭屋・菓子屋・小間物屋・旅籠などの店舗が軒を連ね、弓師・鍛冶屋などの職人の店もあったという。まさに現代のテーマパークのようなものだ。

御町見役うずら伝右衛門 上 講談社文庫 と 32

御町見役うずら伝右衛門 上 講談社文庫 と 32

この庭園には将軍家斉も招かれたが、こうした庭園がつくられた背景には、その行動は幕府から厳しく監視され、江戸在府中は屋敷の中で大半を過ごし、制約の多い殿様に旅に出たような感覚を味わってもらうという狙いもあったのだろう。

筆者は、お殿様の社交活動の場として大名庭園が機能したこと、藩士やその家族の忠誠心を高める役割も果たしていたことに言及している。

また、庭園の維持管理に多くの多大な費用がかかったこと、その管理には植木屋(プロの園芸業者)があたり、江戸のガーデニングの発達に影響を与えたこと、また、景観維持には江戸近郊の豪農が大きな役割を果たしたことなど、興味深い発見があった。

時代小説は、大名屋敷はよく出てくるが、大名庭園を描写したものは少ない。本書がきっかけで、大名庭園を巧みに物語の中に織り込んだ時代小説が書かれることを期待している。