時代小説ヒーロー20選を楽しむ

小説とエッセイ満載の月刊文庫『文蔵 2008 JULY』が届いた。今回の特集は「時代小説ヒーロー20選」ということで、ページを繰ることがもどかしいぐらい、読みたかったものだ。

剣豪:机竜之助/鞍馬天狗/丹下左膳/眠狂四郎/青江又八郎(『用心棒日月抄』)/千坂藤兵衛&里美(「剣客春秋」シリーズほか)/坂崎磐音

捕物:半七/銭形平次/砂絵のセンセー(「なめくじ長屋捕物さわぎ」シリーズ)/るい&東吾(「御宿かわせみ」シリーズ/伊三次(「髪結い伊三次捕物余話」シリーズ/お初(「霊験お初捕物控」シリーズ)/一太郎(『しゃばけ』など)

人情:笑兵衛&お捨(『深川澪通り木戸番小屋』)/藤木紋蔵(『物書同心居眠り紋蔵』)/珠世(『お鳥見女房』)/お登勢&塙十四郎(「隅田川御用帳」シリーズ)/玉枝(『梅咲きぬ』)/夏木&藤村&仁左衛門(「大江戸定年組」シリーズ)

用心棒日月抄 (新潮文庫)

用心棒日月抄 (新潮文庫)

しゃばけ (新潮文庫)

しゃばけ (新潮文庫)

深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫)

深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫)

物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

お鳥見女房 (新潮文庫)

お鳥見女房 (新潮文庫)

梅咲きぬ (文春文庫)

梅咲きぬ (文春文庫)

文芸評論家の末國善己さんによる、時代小説ヒーロー15人+5組のセレクションが素晴らしい。セレクションのポイントを、「シリーズ化された作品の中から、歴史的な評価よりも“現代人が読んでも共感できる”点を優先してセレクトした」と書かれている。なるほど、歴史的な名作ばかりでなく、今人気の書き下ろし文庫からもヒーローを選んでいて、おすすめできる作品ばかりだと思う。しかも、ヒーローの系譜と現在活躍中の時代小説家が影響を受けていると思われる作品との相関関係など、わかりやすく解説されていて、時代小説を選ぶときに参考になる。

巻頭インタビューで、諸田玲子さんが「お鳥見女房」シリーズの創作の秘密について語られていた。

田んぼがあって川が流れているといった日本の原風景が、いま急速に失われつつあります。ですのでせめて物語のなかでくらい、心の故郷を思い起こしてもらえればと思いまして。それと、幼いころ『赤毛のアン』が大好きでしたので、自然のなかで家族が愛を育んでいく物語に憧れがあったんだと思います。

ああ、そういうことだったんだ。私がこの作品に魅かれ続けるのは、田舎の風景と、赤毛のアンのような家族観が見られるから、この物語の世界が居心地がいいんだな。

また、剣豪小説もので活躍されている鳥羽亮さんにもインタビューされている。インタビューイーの人選も何とも豪華。鳥羽さんの話の中で興味深かったのは、初めて書いた時代小説『三鬼の剣』を推理小説のつもりで書き、『鬼哭の剣』で初めてミステリーから離れて剣豪小説を目指したこと。どちらも新鮮な面白さがあり、印象深い作品であったので、この部分を読んでなるほどと思った。剣戟シーンの必殺技を考えるのに、自宅にある模造刀を振り回していること。

三鬼の剣 (講談社文庫)

三鬼の剣 (講談社文庫)

鬼哭の剣―介錯人・野晒唐十郎 (ノン・ポシェット)

鬼哭の剣―介錯人・野晒唐十郎 (ノン・ポシェット)

この特集を読んでいて、とても幸福な気分になった。なんだか、時代小説のお中元をもらったような気がする。