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江戸でただ一人の結わえ師、登場

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石月正広さんの『笑う花魁 結わえ師・紋重郎始末記』を読了する。主人公の漢部紋重郎(あやべもんじゅうろう)は江戸で唯一の結わえ師。吉原や深川、柳橋といった花街で、女郎や芸者たちに帯や紐の結び方を教えたり、妓楼の紋日などに酒樽の飾り結びや、床飾りなどをしていた。

また、ときには座敷に呼ばれ、客たちに手品のようなことをやって見せた。五行結び、蝶結び、蜻蛉結び、鶴結び、梅結び、菊花結び、宝珠結び、三つ花結び、六葉結び……と、紐の結い方は数え切れないほど、そのさまざまな結びを、結んでは解き、解いては結びと、曲芸のようにする。あるときは亀売りを目にも留まらぬ早業で桜の木に吊るしたり、またあるときは石ころを高く放ってそれを空中で糸で結んだりと、まさに神業ぶりだ。

紋重郎は、札差魚交の依頼で、余興として吉原の花魁霧島を拷問縛りをすることになる。太さの径が六分六厘(約二センチ)、長さが二間と一尺(約三百九十四センチ)の丸紐で模様は笹波組の変形という特注の組紐を用意して場に臨む。その座敷には、風来山人こと、平賀源内も同席することになった…。

不思議な読み味の時代小説である。物語がエロくなる手前でスラップスティックな場面が入ったり、痛快な活躍ぶりを示したり、かと思えば、人情味あふれるお節介をしたりと、一筋縄ではいかない作品だ。今回は顔見世興行的な趣きもあるので、今後の展開にも注意したい。

笑う花魁 結わえ師・紋重郎始末記 (講談社文庫)

笑う花魁 結わえ師・紋重郎始末記 (講談社文庫)