『茜唄(上・下)』|今村翔吾|時代小説文庫
2025年5月11日から5月20日に刊行予定の文庫新刊情報として、「2025年5月中旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回、特に注目したい作品は、今村翔吾さんによる長編歴史小説『茜唄(あかねうた)(上・下)』(時代小説文庫)です。
本作は、平清盛の息子・平知盛を主人公に、平家の隆盛から滅亡までの軌跡を描いた、著者渾身の一作です。
あらすじ
平氏棟梁・平清盛の四男・知盛。最愛の息子と称された彼は、幼い頃から病弱で出世も遅れがちでしたが、やがて源氏の時代の荒波に巻き込まれ、弟分で「王城一の強弓精兵」と呼ばれる教経とともに、否応なく戦の最前線に立たされます。知盛は木曽義仲を水島の戦いで破るも、源頼朝、そして戦の天才・義経が立ちはだかります。 没落する平家の中で、知盛はいかにして抗い、どんな未来を望んだのか──。平家全盛から滅亡までを知盛の視点で描き、善悪を問わず、時代を創った綺羅星のような人物たちの姿が浮かび上がります。
(『茜唄(上)』および『茜唄(下)』(時代小説文庫) Amazonの紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
歴史は、しばしば勝者によって語られます。為政者にとって不都合な真実が、抹消されたり改ざんされたりすることも少なくありません。
一方、「稗史(はいし)」とは、民間に伝えられてきた史実や伝承をまとめたもので、現代における歴史小説もその一形態といえるでしょう。
『平家物語』は、敗者・平家の名が冠された歴史物語であり、まさに稗史の代表格です。作者不詳とされるこの物語には、いったい誰が、何を託したのでしょうか。
今村翔吾さんの『茜唄』は、その問いに対する一つの答えとして生まれた作品です。
本作は、源氏に押されて劣勢となる平家側の視点から物語が描かれています。
知将・平知盛を主人公に据え、壮絶な戦いと家族への深い愛情が描かれています。短い栄華ののち滅びゆく平家が、後世に何を残したのかを知るとき、読者は深い感動に包まれることでしょう。
不世出の天才・源義経との邂逅と対決も、本作の大きな見どころです。ぜひ、じっくりとご堪能ください。
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今回ご紹介した本
