七人の人気戦国武将たちの、爽快なる“初陣”を描く短編集

『武者始め』

武者始め宮本昌孝さんの短編歴史時代小説集、『武者始め』(祥伝社文庫)を入手しました。

本書は、信長、秀吉、家康に加えて、武田信玄、上杉謙信、北条早雲、真田幸村という、人気の戦国武将の武者始め、すわなち、“初陣”を描いた短編集です。

一日に十六粒を食する梅干し好き。新九郎は義兄今川義忠討死の混乱の仲、幼い嫡男龍王丸と実姉北川殿を亡き者にせんとする刺客の目を欺き、知謀を以て家督争いを無血裏に解決。のちに、北条早雲となる(「烏梅新九郎」)。ほか、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、真田幸村、武田信玄、上杉謙信、歴史に名を馳せる戦国七武将の“初陣”を鮮やかに描いた傑作短編集!
(本書カバー裏紹介より)

後世、北条早雲の名で知られる、伊勢新九郎は、京で用事を済ませ、駿河への帰国の途次、浜名湖の西岸に近い汐見坂で、駿河の守護の今川義忠が、塩買坂の戦いで討死したという知らせがもたらされました。

新九郎は、実姉で、義忠の正室の北川殿と幼い息子龍王丸が家督争いに巻き込まれることを予測して、周到で果断な対処を取りました。

「初陣も武者始めも同じ意味と思われているが、それがしは違う。初めていくさに出て、弓矢刀槍をふるえば初陣であろうが、いくさに出なくとも、武士として初めて命を懸けたことなら、そえをもって武者始めとすべきと存ずる。伊勢どのは、知謀をもって、命懸けで今川の争いごとを未然に禦がれた。むしろ、いくさをいたすよりも至難のこと。あっぱれな武者始めと申すほかなし」

(『武者始め』P.47より)

二十一歳の新九郎が今川家の家督争いを収めるために取った調停は、山内上杉家の家宰で武名の高い太田資長(後の道灌)をして、知謀を駆使した、あっぱれな武者始めと評すべきものでした。

血を一滴も流さない、鮮やかで颯爽とした活躍、新九郎の武者始めぶりに惹かれました。
著者の宮本さんは、多くの長編歴史小説を発表されていますが、知られざる短編の名手でもあります。本書では、その一端が楽しめます。

「宮本昌孝の小説は、私にとって心の栄養剤だ」で始まる、書評家の青木逸美(あおきいづみ)さんの解説は、ファンの心に届く、読後のごほうびという感じで、必読です。

武者始め

宮本昌孝
祥伝社 祥伝社文庫
2020年5月20日初版第1刷発行

単行本『武者始め』(2017年10月、祥伝社刊)を加筆修正して文庫化したもの。

カバーデザイン:bookwall
カバーイラスト:永井秀樹

●目次
烏梅新九郎
さかしら太郎
いくさごっこ虎
母恋い吉法師
やんごとなし日吉
薬研次郎三郎
ぶさいく弁丸

解説・青木逸美

本文356ージ

■Amazon.co.jp
『武者始め』(宮本昌孝・祥伝社文庫)

宮本昌孝|時代小説ガイド
宮本昌孝|みやもとまさたか|時代小説・作家 1955年、静岡県生まれ。日本大学芸術学部卒業。手塚プロ勤務などを経て、執筆稼働に専念。 1995年、『剣豪将軍義輝』で一躍脚光を浴びる。 2015年、『乱丸』で第4回歴史時代作家クラブ賞...