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二人の息子を見殺しに、幕府を守った尼将軍、北条政子の生涯

『尼将軍』|三田誠広|作品社

尼将軍三田誠広さんの歴史時代小説、『尼将軍』(作品社)を紹介します。

今年2022年は、NHK大河ドラマを楽しむために、鎌倉殿の時代を描いた歴史時代小説を積極的に読みたいと思っています。

そんな中で今回取り上げるのが本書。
北条政子の生涯を描いた歴史時代小説です。

2002年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を差配した影の主役、北条政子!

北条時政の長女であって宗時、義時の姉。源頼朝の正妻にして頼家・実朝の母。頼朝没後は尼将軍として鎌倉幕府を実質差配。幕府守護のためには実子も見捨て、承久の変では三上皇を隠岐などに配流した鋼鉄の女帝。

(本書カバー帯の紹介文より)

女性の位置づけが今よりもずっとずっと軽かった時代にあって、尼将軍と呼ばれ、政治の実権を握った女性、それが北条政子です。

本書では、じゃじゃ馬の少女時代から、頼朝の正室として東国全体の台盤所をつとめ、頼家、実朝の母となり二人の死を見送り、晩年には、承久の乱を弟北条義時とともに収めた、万寿(政子)の峻烈で波瀾に満ちた生涯を描いています。

「兄ぎみは源氏の棟梁として、源氏恩顧の武将を率いておられるだろう。兄ぎみに従う武将どもは、われら源氏に仕えるは以下ではないか。なにゆえにそれほど気を遣わねばならぬのだ」
 万寿は義経の顔を見据えた。
 美しい顔だちをしているが胸に野心がある。いつの日か兄を凌駕して、この国を支配するつもりであろう。
 こやつは殺さねばならぬ。万寿はそう思った。
 
(『尼将軍』 P.97より)

平家打倒に立ち上がった頼朝の許にやってきた、三人の弟、範頼、全成、義経。
対面した万寿は、手柄を立てて立身したいという意気込みが強く感じられた義経を警戒しました。

親兄弟や我が子よりも、何よりも大事にしていた鎌倉殿という武家の世の中を優先した万寿の面目躍如というところです。

「わたくしどもは孫を皇位に就けようなどという大それたことを考えておるのではございません。娘を内裏の中に留めていただいて、皇室と親交を深められればと思うておるだけでございます。もしも僥倖に恵まれまして、大姫が懐妊し、男児を産むようなことがありましたら、鎌倉に迎えて、次の将軍に立てたいと思うております」
 丹後局は驚いたように低い声でつぶやいた。
「将軍に……。あなたさまには男児が二人もおられるではありませぬか」
「朝廷と幕府の融和を図るためでございます。わたくしはわが実子にこだわるつもりはございません」

(『尼将軍』 P.147より)

建久六年(1195)、頼朝ともに鎌倉を出て、初めて京に赴いた万寿は、後白河院の寵姫丹後局と二人きりでの対面しました。そこで、大姫の入内の話を進めました。

本書では、実際に影で幕府を差配した万寿(政子)目線で、鎌倉時代をとらえ直しています。わかりづらかった歴史、とくにさまざまな事件の背景を解き明かしていきます。
鎌倉時代をどういう時代なのかの、答えを持っていることが、わかりやすさの源泉なのかもしれません。

北条義時の盟友三浦義村の存在が、鎌倉時代を面白くしています。
大河ドラマを観る楽しみがますます募りました。

尼将軍

三田誠広
作品社
2021年9月25日第1刷発行

カヴァー装画:菊池容斎/『前賢故實』より

●目次
第一章 富士の裾野を少女が駆ける
第二章 国府を襲って旗揚げを敢行
第三章 石橋山で最愛の弟を亡くす
第四章 御曹司が鎌倉に幕府を開く
第五章 頼朝の急死と二代将軍頼家
第六章 将軍実朝のはかない夢の跡
第七章 雪の鶴岡八幡宮で実朝暗殺
第八章 承久の戦さと尼将軍の勝利

主な登場人物
主な参考文献

本文294ページ

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『尼将軍』(三田誠広・作品社)

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三田誠広|みたまさひろ|作家 1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒業。 1977年、『僕って何』で第77回芥川賞受賞。 時代小説SHOW 投稿記事 時代小説ブックガイド 読書リスト 『霧隠れ雲隠れ』...