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忍者から信長の重臣となった、滝川一益の波乱の生涯

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乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益佐々木功(ささきこう)さんの長編時代小説、『乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益』(時代小説文庫)を入手しました。

著者の佐々木さんは、本書で、第九回(2017年)の角川春樹小説賞を受賞し、前田慶次郎の最後の戦いを描いた、『慶次郎、北へ 新会津陣物語』で注目される新進気鋭時代小説家です。

甲賀の忍びあがりの土豪、滝川久助は、里の陰謀で父を失い、兄を殺め出奔。久助は名を一益と改め、諸国を放浪中に織田信長と運命的な出会いをする。一益は、射撃や忍びの腕だけでなく、武将としても力をつけ、信長の寵臣として存在を大きくしていく。天下への道を着々と進んでいく信長だったが、天正十年(一五八二)、家臣・明智光秀の突然の謀反によって斃れてしまう――。
一益を頼みとする若き前田慶次郎、伝説の忍者・飛び加藤といった魅力的な脇役も登場。謎多き武将、滝川一益の波乱に満ちた生涯を描く。
(本書カバー裏の紹介文より)

織田軍団にあって、信長の天下布武の戦いの中で数々の武功を残した滝川一益。脇役としての扱いが多く、彼に光を当てた戦国時代小説はあまりなかったように思います。

そのため、信長に仕える前の半生についてもほとんど語られることがありませんでした。本書では、一益は、近江の国、甲賀の里、滝川城城主滝川一勝の子として描かれています。一勝は甲賀の里を支配する、「甲賀五十三家」と呼ばれる五十三家の土豪に次ぐ、郷士で忍びの仕事を下請けで行っていました。

本書では、久助(若き日の一益)は忍びの技を持ち、当時目新しかった鉄砲にも関心の高い、十六歳の若者として登場します。

 兄に罪はないのかもしれない。ただ、どの道生きられぬなら、いっそこの手でその命を絶つ。
 忍びという心中定かならぬ、魔性の者たち。破りえぬ里のしきたり、郡中惣、五十三家の馴れ合い。
 父に未練はない。思えば、病の床についたときに、滝川一勝という男は死んだのだ。忍びとしても、武家としても。そして、いまや、真にこの世から消え去った。
 あと自分を縛るものは、甲賀の里そのものなのだ。
 絶つのだ。絶つ、しかない。
(この宿命を)
(『乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益』P.50より)

叔父の謀反、父の死、兄の死、恋人との別れ……、僅か一日で、様々なことを経験した久助は、一益と名を改めて、甲賀の里を捨てて流浪の旅に出ます。時は天文九年(一五四〇)、秋。

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『乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益』(佐々木功・時代小説文庫)
『慶次郎、北へ 新会津陣物語』(佐々木功・時代小説文庫)