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徳川260年の平和の礎を築いた家康を描く、火坂雅志さんの遺作

天下 家康伝(上)今年2月に急逝した、火坂雅志さんの『天下 家康伝(上・下)』(日本経済新聞出版)を読みました。石田三成に仕えた武将・島左近を描いた『左近(上・下)』とともに、遺作になります。

家康は、幼くして父を亡くし、母と生き別れ、果ては銭一千貫で売られるまでの悲惨な目に遭い、今川家で人質として服従するなど、幾多の苦難を乗り越えて生き残ってきました。二十三歳の若き岡崎城主・松平家康が、領内の一向一揆に悩まされるところから物語は始まります。

 家康を描くことは、歴史小説を書きはじめてからの、ひとつの大きな課題となっていた。なるほど、家康は同時代を生きた織田信長や豊臣秀吉に比べ、けっして派手な存在ではない。しかし、その後の日本の歴史に及ぼした影響、事績を考えれば、家康は現代では過小評価されているように思う。むしろ、外交、軍事、民政、経済政策と、バランスのとれた真の政治家は家康だけではないのか。

作者が「『天下 家康伝』の連載を終えて」(2014年10月20日付日本経済新聞夕刊)に書いているように、時代小説ファンとして私も、これまで家康を過小評価し、あまり重視してこなかったことに気付きました。

本書では、「天下」(てんが)という視点から、信長、秀吉との対比も交えて、家康の半生を丹念に描いていきます。物語に沿って、その事績を辿っていくと、数々の苦難を乗り越えてきた過程で身に付けた洞察力をベースに、人をうまく使ってきたことがわかります。天下取りに向けて、徐々に明らかになていく、家康の言動、そして政治観にブレが少ないのは見事なばかりです。

人を遣うには、それぞれの善所を用い、外の悪しきことは叶わぬなるべしと、思いすつべし
(『故老諸談』

ビジネスパーソンやリーダーにとって、家康の言動と語録は大いなる示唆に富んでいます。それらをわかりやすく小説の形で見せる本書は、かつての司馬遼太郎さんの歴史小説のように、ぜひ、読んでおきたい1冊です。

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『天下 家康伝(上)』
『天下 家康伝(下)』
『左近(上)』(PHP研究所)
『左近(上)』(PHP研究所)