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娯楽都市江戸を支えた庶民パワー

安藤優一郎さんの『娯楽都市・江戸の誘惑』を読んだ。安藤さんは、江戸をテーマにした読み物や講演活動で活躍される歴史家だ。現代的な視点で江戸の観光力を解き明かした、代表作『観光都市江戸の誕生』の続編のような印象を与え、魅力的なタイトルで読書欲をかきたてる。

娯楽都市・江戸の誘惑 (PHP新書)

娯楽都市・江戸の誘惑 (PHP新書)

観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

トロイア遺跡の発掘者として知られるシュリーマンが浅草寺の雷門をくぐった話が出てくる。シュリーマンは、自著の『シュリーマン旅行記 清国・日本』で、浅草寺境内の生き人形の見世物の様子を、ロンドンのベイカーストリートのマダム・タッソーの蝋人形館になぞらえて紹介している。へぇ~。

本書を読むと、幕末の浅草寺は外国人ばかりでなく、圧倒的な集客力を誇っていたのがわかる。境内の見世物興行に加えて、芝居町と吉原が大きく貢献していた。その集客力を期待して寺社の開帳が行われ、さらにそのイベントにより集客が増えていく。また、その経済効果は両国や上野へも波及したという。

江戸の三大娯楽産業として、芝居(歌舞伎と宮地芝居)・相撲・寄席が挙げられている。時代小説では、芝居に比べて、相撲や寄席が描かれることは少ないように思われる。とくに寄席は、裏店住まいでその日暮らしの生活を送っていた庶民たちの憩いの場であった。それなら、江戸の後期を描いた時代小説では、風俗描写として、もっと寄席が描かれてもいいと思う。

寄席が登場する時代小説では、六道慧(りくどうけい)さんの『明烏 いろは双六屋』や杉本章子さんの『爆弾可楽』(品切れ中、入手困難)が思い浮かぶ。

いろは双六屋 明烏 (徳間文庫)

いろは双六屋 明烏 (徳間文庫)

爆弾可楽 (文春文庫)

爆弾可楽 (文春文庫)

本書はビジネスものの新書のように、わかりやすく江戸の娯楽産業を解き明かしている。宵越しの銭は持たない―日々の稼ぎを生活費に使った後は、飲食や娯楽に費やしてしまう、そんな一般庶民たちの消費行動が江戸経済を動かす巨大な力となったという。本当の江戸に一歩近づいた気がする。

このシリーズは楽しいので、次回は、江戸の飲食を取り上げてほしいと思う。「美食都市・江戸の食欲」じゃダメかな。