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幕末の大坂を舞台にした傑作時代小説

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城野隆(じょうのたかし)さんの『一枚摺屋(いちまいずりや)』を読んだ。第十二回松本清張賞の受賞作であるこの作品は、幕末の大坂を舞台に、一枚摺屋(瓦版屋)が殺された父の敵を求めて活躍する痛快時代小説。

一枚摺屋 (文春文庫)

一枚摺屋 (文春文庫)

第二次長州征伐の準備で騒然とする幕末の大坂で、米問屋への打ち毀しを一枚摺(瓦版)に取り上げた親父の与兵衛が西町奉行所に捕縛された末に殺された。たかがあの程度の一枚摺のために、一体なぜ? だれが? 勘当中の総領息子の文太郎は親父の敵を取るために、もぐりの一枚摺屋となって事の真相を探り始める。その鍵は、三十年前の大塩平八郎の乱にあるようだった…。

今まで時代小説の中で、幕末期の大坂の果たした役割をきちんと描いた作品は少ない。それは、大坂人(町民や蔵屋敷の侍たち)の心情や言動を押さえるとともに、経済的な側面から幕末を捉えるという歴史認識が必要だ。江戸幕末の大坂を舞台にしたという時点で、まず、この物語に魅かれた。しかも、主人公はもぐりの一枚摺屋の主人という、今で言えば、反体制のジャーナリストといったところで、彼の目を通して幕末の大坂を感じ取れるのが何よりも魅力だ。しかも、恋と親子の愛憎、冒険、敵討ち、謎解きなどの要素が散りばめられていて、エンターテインメント度も高く、最後まで一気に読ませてくれる傑作である。

今まで、大塩平八郎の乱と幕末の動乱が一本の線でつながらなかったが、この作品を読んで少しだけその連動性が感じられるようになった。城野さんの他の作品も読んでみたくなった。