「闘牛と時代小説」、『万両ノ雪』のあとがきが圧巻

佐伯泰英さんの『万両ノ雪』を読む。NHK木曜時代劇も好評の、人気シリーズ「居眠り磐音 江戸双紙」の第23弾。おこんを連れて豊後関前で、仮祝言をあげて江戸へ戻る途次の坂崎磐音。江戸では、南町奉行所年番方与力の笹塚孫一が六年前に捕縛した盗賊、万両の大次郎が島抜けをし、江戸に向かうという事件が起こっていた…。

5年間で80冊のペースで書き下ろし時代小説を書き続けてこられた、佐伯さんが書き下ろし100冊を目前に体調を崩されたことは、「密命」シリーズの最新刊『初心 密命・闇参籠』を読んだ人には周知のこと。この『万両ノ雪』も七月刊行予定が1カ月伸びたものだが、発行が延びた代わりに、50ページ近いあとがきが付けられていて、佐伯ファンにはうれしいサプライズといえる。

初心―密命・闇参篭〈巻之十七〉(祥伝社文庫)

初心―密命・闇参篭〈巻之十七〉(祥伝社文庫)

佐伯さんが若いころ、スペインで闘牛の取材をされていたこともよく知られている。そこで、今回のあとがきでは「闘牛と時代小説」との関わりを詳しく書かれている。闘牛士の刺突技を「一、仕掛技(ボラール・ア・ピエ)」「二、受け技(スエルテ・デ・レシビール)」「三、クロス・カウンター(ア・ウン・ティエンポ)」の三つに分類し、直心影流の剣術の「先々の先」や「後の先」と比較し、多くの闘牛技を生で取材してきた経験が時代小説の剣戟シーンの描写に役立っていることを述懐されている。

あとがきを読みながら、二十年以上も前に月刊PLAYBOY誌に掲載された、佐伯さんのスポーツドキュメント『闘牛士エル・コルドベス1969年の叛乱』を思い出して懐かしくなった。

『万両ノ雪』で、浪人坂崎磐音は、神保小路の直心影流尚武館佐々木玲圓の家に養子に入り、同道場の後継となり、佐々木磐音として新たな一歩を歩み始めることになる。シリーズは今後どのような展開を見せるのかわからないが、深川の地から居を移し、幕府と関係の深い道場の後継となったことで、市井の事件ばかりでなく幕府がらみの事件にも深く関わっていくのではないかと思われる。いずれにしても、今後も楽しみなシリーズである。

NHK木曜時代劇

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「居眠り磐音 江戸双紙」公式サイト

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