信長、秀吉、家康に仕えた、鷹匠一代記

山本兼一さんの『白鷹伝(はくようでん)』を読んだ。武田信玄、浅井長政、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の五人の戦国武将に仕えた鷹匠・小林家次(家鷹)の生涯を描く戦国時代小説である。この作品の素晴らしさは、諏訪流第十七代鷹師(鷹匠を教える師)の田籠善次郎氏の「モンゴルまで取材にでかけ、鷹狩りのルーツから鷹匠の細かい技まで見事に描ききった山本兼一氏の情熱は家次(家鷹)に劣らないものがあった」という、表紙カバー袖に記された賛辞の言葉で言い表されている。

白鷹伝―戦国秘録 (祥伝社文庫)

白鷹伝―戦国秘録 (祥伝社文庫)

浅井家の鷹匠小林家次は、小谷城落城の朝、狼を捕獲する白鷹を目撃する。その白鷹こそ、伝説の名鷹「からくつわ」だった。お市の方と三人の姫君を織田陣営に送り届けて捕虜となった家次に、織田信長は「白鷹を捕らえてみせよ」と命じた。ここに、織田家鷹匠としての人生の幕が開いた…。

戦国時代から江戸時代を舞台にした時代小説で、鷹狩りのシーンが描かれることは少なくない。しかし、現代人のわれわれには、そのシーンを頭の中で映像化することは困難なことだった。この『白鷹伝』では、綿密な取材の元に、鷹狩りの様子、鷹匠の仕事や野生の鷹を訓育する過程などがディテールまで描かれ、わかりづらい専門用語には田籠善次郎氏の本文挿画を交えて解説している。そのため、「からくつわ」という名鷹と出会った主人公の家次の言動に共感し、作品の世界が堪能できるのだ。

また、興味深いのは一人の鷹匠の眼を通して、武将たちの性格や生き様が浮き彫りになり、激動する時代を活写している点である。なお、山本さんは、前作の第十一回松本清張賞を受賞した『火天の城』では、織田信長から安土城築城を任された織田家御大工頭の岡部又右衛門以言、その息子の又兵衛以俊の築城をめぐる壮大なドラマを描いている。こちらも読んで悔いない、戦国時代小説である。

火天の城 (文春文庫)

火天の城 (文春文庫)