大塩平八郎の乱を描く時代小説

北方謙三さんの『杖下に死す(じょうかにしす)』を読む。天保八年に起こった大塩平八郎の乱を平八郎の息子格之助の友人・光武利之の目から描く時代小説である。

杖下に死す (文春文庫)

杖下に死す (文春文庫)

米不足が深刻化する天保七年の大坂。江戸から一人の剣豪・光武利之がやってきた。利之の父である村垣淡路守定行は元勘定奉行であり、村垣家は代々がお庭番を務める家系だった。妾腹の子として、深川の市井で育った利之は、四歳の頃から柳生の剣を叩き込まれ、長じて父の命で旅に出るように言われた。隠密ではないが、旅から戻ると、旅の様子、人や物の動きを、見たまま、感じたままを父に語るということを続けていた。

利之は、父と親しい西町奉行の矢部定謙の役宅に居を定め、米不足にあえぐ大坂の市中を歩き回り、大塩格之助と知り合う……。

利之と格之助は、相手の中に自身にないものを見て互いに友情を深めていく。その一方で利之は、年上の女、船場の料亭・三願の女将・お勢に惹かれ恋に落ちる。青春教養小説(ビルドゥングスロマン)の魅力と、作者の剣豪小説「日向景一郎」シリーズに通じる利之の剣の面白さが堪能できる。

しかし、最大の見所は大塩平八郎の乱を、『武王の門』から始まる、敗者の歴史観で描ききったことである。「大塩平八郎の乱」というのは、日本史でも習ったはずだが、陽明学という思想と大坂という地理的な状況もあるせいか、なぜ起こりどのような形で鎮圧されたのか、理解しづらかった。この物語で興味がもてた。

幕府の無策や権力闘争の犠牲になる民衆を救うべく決起する大塩父子。天保八年二月十九日に起きた反乱はわずか半日で鎮圧されることに。幕末に新選組により暗殺される大坂西町奉行所与力内山彦次郎や、北方作品でおなじみの間宮林蔵が登場するのも面白い。

内山彦次郎―Wikipedia

内山彦次郎 - Wikipedia

別冊文藝春秋

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