2020年時代小説ベスト10【単行本部門】

宮本昌孝
PHP研究所
2020年10月刊

♪ 飛騨・白川郷は、険しい山々に閉ざされた秘境の地ながら、金銀が産出され、鉄炮に必要な塩硝が取れる地。織田信長が目を付け、竹中半兵衛の愛弟子・津田七龍太が派遣され、信長と一向一揆の対立に巻き込まれていきます。戦いあり、冒険あり、恋愛ありの、読み始めたら止められない、エンターテインメント歴史時代小説です。

今村翔吾
講談社
2020年5月刊

♪ 戦国時代随一の極悪人、松永弾正久秀の生涯を描いた歴史エンターテインメント小説。民が安寧な生活を送ることができる世をつくるという夢に向かい、世間の悪評をものともせず、邁進する松永久秀（九兵衛）を、少年、青年時代から描いています。乱世の梟雄、松永久秀のイメージを一変させる作品。

宮部みゆき
PHP研究所
2020年6月刊

♪ 深川元町の岡っ引き、文庫屋の千吉の子分の中で一番の下っ端の北一は、親分の急死で代わりに周囲で起こった事件を解き明かすことに。謎解き×怪異×人情の宮部ワールドの三大要素が堪能できる、読み味のよい捕物帳です。

原田マハ
PHP研究所
2019年11月刊

♪ 江戸初期に活躍し、琳派の祖といわれる絵師俵屋宗達の前半生を描いた、歴史ミステリーです。博物館研究員望月彩のもとにもたらせられた古文書から紐解かれていく、天正遣欧使節の秘密と、日本・桃山×イタリア・ルネッサンスの世界にどっぷりに浸れる逸品。

浅田次郎
中央公論新社
2020年3月刊

♪ 姦通の罪を犯した旗本・青山玄蕃は切腹の沙汰を拒否して、蝦夷福山藩松前家に流罪が決まり、与力見習の石川乙次郎が押送人になりました。江戸から、津軽三厩まで玄蕃と乙次郎の奇妙な旅が始まります。道中は事件の連続。事情を抱えたいろいろな人と出会い、「武士」や「家」に苦悩する乙次郎は成長してきます。涙ありの人情時代エンタメ小説です。

木下昌輝
朝日新聞出版
2020年2月刊

♪ 法蓮房、還俗して長井新左衛門と、その息子新九郎（後の道三）による、美濃国盗りが、近年の研究結果を史実として織り込みながらも、物語性豊かに描かれています。法蓮房の父、松波高丸と道三の子、豊太丸（後の斎藤義龍）も登場して、四代のファミリーヒストリーとなっている点に興趣を覚えました。

蝉谷めぐ実
KADOKAWA
2020年10月刊

♪ 江戸歌舞伎に題材をとった長編時代ミステリー。芝居小屋に降臨した鬼の正体を突き止めてほしいと、座元から懇願されて、元女形の田村魚之助が役者たちに話を聞いて回ります。芸の道にしのぎを削り、歌舞伎に心血を注ぐ役者たちはだれもが心の中に鬼を飼っていました……。

千葉とも子
文藝春秋
2020年9月刊

♪ 中国の唐。「書の力で世を動かしたい」と文官を目指した顔希明は、反乱蜂起した安禄山将軍に殺されました。親友で、平原軍隊長の張永は希明の遺志を継ぎ、反乱軍に立ち向かいます。張永の妹で、希明の許婚である采春は得意の武術を生かして、仇討ちの旅に出ました。中国の歴史をよく知らない門外漢も楽しめる、和製武侠小説。

河治和香
小学館
2020年10月刊

♪ 河鍋暁斎、月岡芳年、落合芳幾、歌川芳藤ら、錚々たる人材を輩出した、国芳一門。浮世絵の明治の盛衰とともに、彼らの浮沈を国芳のもう一人の娘お芳とともに描いた連作集です。明治の画壇と世相、風俗がポンチ画のようにひねりを利かせて、生き生きと描いています。

亀泉きょう
小学館
2020年8月刊

♪ 明楽久兵衛は、九代将軍家重の御駕籠之者組に籍を置き、剣の腕は一級品ながら、「へんぶつ」と呼ばれるオタク侍。おっかけをしていた深川の人気芸者が謎の死を遂げたことから、幕閣から追われることに。江戸の町を逃走する久兵衛にワクワクさせられます。