『高く翔べ 快商・紀伊國屋文左衛門』|吉川永青|中公文庫
2025年5月21日から5月31日に刊行予定の文庫新刊情報として、「2025年5月下旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回、特に注目したい作品は、吉川永青(よしかわ・ながはる)さんによる長編歴史時代小説『高く翔べ 快商・紀伊國屋文左衛門』(中公文庫)です。吉川さんは本書により、2022年に第11回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞されました。
あらすじ 第11回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞した話題作です。
時は元禄。文吉は、幼い頃に見た巨大な廻船に心を奪われ、故郷・紀州で商人になることを志します。しかし、許嫁の死をきっかけに、「ひとつの悔いも残さず生きる」と決意し、身を立てるために江戸へ向かいます――。蜜柑の商いで故郷を飢饉から救い、莫大な富を得ながらも、一代で店をたたんだ謎多き人物、紀伊國屋文左衛門。天才商人の生涯に迫る、痛快な歴史時代小説です。
(『高く翔べ 快商・紀伊國屋文左衛門』(中公文庫)Amazonの紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
紀文こと紀伊國屋文左衛門は、荒天により紀州のみかんを江戸へ運ぶことができず、江戸でみかんが高騰する中、ぼろ船に荒くれ者の船乗りたちを乗せて命懸けで江戸へみかんを届けた「蜜柑船」の逸話で知られる、大商人です。
吉原での桁外れな散財ぶりから「紀文大尽」とも呼ばれ、時代劇や時代小説にもたびたび登場する、江戸を代表する商人のひとりとして親しまれています。
しかしながら、一代で店を閉じた晩年の暮らしぶりなど、いまだ謎に包まれている部分も多く、その全貌はあまり知られていません。本書は、知られざる若き日々から晩年に至るまでを描いた傑作長編小説です。
紀州の農民の子として生まれ、海に憧れながら育った文平(後の文左衛門)は、和歌山城下の材木問屋で前途有望な手代として活躍し、嫁取りの話も進む中、ある事件をきっかけに故郷を捨てて江戸へと向かいます。
商人にとって、商いはまさに戦いです。著者が得意とする武将を主人公にした戦国小説さながらに、史実や伝説を巧みに織り込みながら、天才商人・紀伊國屋文左衛門の光と影の生涯をドラマチックに描いています。文庫化を機に、ぜひ手に取ってみたくなる一冊です。
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