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颯爽! 大身旗本の次男坊で、曲独楽師の銀平は捕物名人

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『紅独楽銀平捕物帳』

紅独楽銀平捕物帳大林清(おおばやしきよし)さんの捕物小説集、『紅独楽銀平捕物帳』オンデマンド本を献本いただきました。

「捕物出版」は、入手困難になっていた、往年の名作捕物小説を続々復刊していることで注目される、個人事業の小さな出版社です。
お客(読者)からの注文により1冊ずつ印刷製本を行うオンデマンド出版というスタイルのため、在庫をほとんど持たずにフットワークよく出版活動を展開されています。

不況といわれて久しい昨今の出版業界に、オンデマンド出版というスタイルで風穴を開ける活躍をされているとともに、復刊するタイトル選びに、捕物小説への深い愛情を感じます。

納言恭平さんの『七之助捕物帖』や古山高麗雄さんの『半ちく半助捕物ばなし』、高木彬光さんの『千両文七捕物帳』は、捕物出版のおかげで出合うことができた捕物小説です。

日本作家クラブ会長、日本脚本家連盟理事長などを務め、紫綬褒章を受章、映画化された作品が28本という人気作家であり、劇作家としても活躍した大林清の捕物小説。
昭和10年代から27年までに執筆された、謎の春駒、お墨付の行方、怪予言者、三つ髑髏、むくろ人形の謎、草双紙綺譚、怪異おらんだ鏡、色目観音、怨霊の祟り、南蛮千両皿、祟る名刀、血の花骨牌、いの字さばきの13編を収録。
(Amazonの内容紹介より)

著者の大林清さんについて、本書の刊行のニュースを聞くまで、お名前以外にほとんど知りませんでした。

ウィキペディアによれば、小説家、劇作家として活躍され、NHK紅白歌合戦の特別審査員を務めるなど多方面で活躍されて、1999年に90歳で亡くなられました。

村上元三さん、山岡荘八さん、山手樹一郎さん、長谷川幸延さんとともに、長谷川伸さんが主宰する「新鷹会」の創設メンバーの一人で、大衆小説を数多く執筆されました。

巻頭に、「楽しんで書いたから、多分読者にも楽しんでもらえるだろうと思うのは、この一連の捕物小説を読者諸賢に呈する私のミソである」という「作者の言葉」が掲載されていました。

 奥山そぞろあるきの人足を一度その前に引きとめずにおかない「博多伝来風流紅独楽」誰云うとなく、さる旗本大身の次男坊が道楽の成れの果てと噂するだけあって、独楽廻し銀平は菊五郎そっくりの苦味走った美男。
「ヤッ!」
 掛声もろとも中空に投げあげた紅独楽、落ちて来る奴を、サッとひらいた白扇の縁で受けとめる。独楽はそのまま舞いながら、紙一重の厚みを危な気なく渡って行く。

(『紅独楽銀平捕物帳』「謎の春駒」P.1より)

銀平は、浅草奥山で曲独楽を披露して、見物客に一つ四文の小独楽を売ることを生業としていますが、実は五千石の旗本大身の新妻家の次男に生まれながらも、好きな町人の世界に飛び込んで、暢気気ままにその日その日を送っていました。、

「待った」が口癖の、口上言いの待ったの金太を子分代わりに使って、難事件を次々に解決していきます。

肩の凝らない、明朗快活な捕物小説が楽しめます。

なお、表紙装画は、昭和32年9月に発行された別冊読切小説集「捕物名人初手柄20人集」(読切出版)に「謎の春駒」が再録された際の伊勢田邦彦氏の挿絵に彩色したものだそうです。

紅独楽銀平捕物帳

大林清
捕物出版
2020年8月20日 オンデマンド版初版発行

表紙装画:伊勢田邦彦

目次
謎の春駒
お墨付の行方
怪予言者
三つ髑髏
むくろ人形の謎
草双紙綺譚
怪異おらんだ鏡
色目観音
怨霊の祟り
南蛮千両皿
祟る名刀
血の花骨牌
いの字さばき

本文261ページ

本書収録作品は、小説社の『捕物講談』(1950年9月刊)、同光社磯部書房の『銀平捕物帖 謎の春駒』等を底本に、オンデマンド版として再編集したもの。

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『紅独楽銀平捕物帳』オンデマンド本(大林清・捕物出版)
『七之助捕物帖 第一巻』オンデマンド本(納言恭平・捕物出版)
『半ちく半助捕物ばなし』オンデマンド本(古山高麗雄・捕物出版)
『千両文七捕物帳 第一巻』オンデマンド本(高木彬光・捕物出版)

大林清|時代小説ガイド
大林清|おおばやしきよし|小説家・劇作家 1908年-1999年。東京都出身。慶應義塾大学仏文科中退。 1939年、長谷川伸が主宰する新鷹会に入会。 1940年、『庄内士族』で第3回野間文芸奨励賞を受賞。 1966年、紫綬褒章受章。 199...