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長く切ない恋を成就させた栄三。取次屋ファミリーに新展開

二度の別れ 取次屋栄三(18)岡本さとるさんの『二度の別れ 取次屋栄三(18)』が祥伝社文庫より刊行されました。

手習い道場を営むかたわら、武家と町人の間に入って、時には丸くまた時には強引に収める取次屋商売を営む秋月栄三郎(栄三)が活躍する人気シリーズ。
今巻で18作目。第1作の刊行が2010年12月なので、早いもので8年近くが経過したことになります。

秋月栄三郎の手習い道場に久栄が嫁いできたのを機に、弟子の又平は裏の長屋に引っ越した。やがて生まれる二人の子の成長を見たいがためだった。
ある日、長屋に捨て子が。騒然とする中、又平は満面の笑みで面倒をみると宣言し、赤子の世話を始める。一方、栄三は赤子の親捜しを開始する。すると、栄三も知らなかった又平の切ない恋心が……。

運命的な出会いと別れ、そして再会。

弟・房之助を世に出さんとして苦界に身を沈めた久栄。房之助はその甲斐もあり、異例の引立てで三千石の旗本・永井勘解由の婿養子となりました。久栄も栄三郎の手によって根津の妓楼から受けだされて萩江という名で永井家の奥向きの女中の束ねとなりました。

栄三郎と久栄は、幾多の障害を乗り越えて、長くもじりじりとした恋模様を続けた末に、勘解由の取り計らいもあって遂に結ばれます。

手習い所の手伝い、剣術道場の門人、取次屋の番頭の三つの顔を持っていて、一の子分として、長年栄三郎の身の回りの世話をする又平は、だれよりも二人の恋の成就を喜んでいます。

今回は、その又平に恋の予感が……。

 又平は、懐から取り出した財布をおよしの右手に握らせた。
「又平さん、いけません。わたしはこんなことをしてもらうつもりで、ここまで来たんじゃあないんです。少しくらいなら持ち合わせもありますし……」
 およしは慌てて財布を返そうとしたが、又平はしっかりとそれを押し止めて、
「いいんだよ。色んな男がいる中で、おれに叱られたいと思ってわざわざここまで来ただなんてよう。おれは今とても好い気持ちなんだ。これはそのお礼だよ。ははは、大して入ってねえから案ずることもないさ。情けねえ話だが」
(『二度の別れ 取次屋栄三(18)』P.71より)

人情に厚くて思いやりがあり、笑いに溢れる栄三郎。彼の周りには、その人柄に惹かれて、心温かい人たちが集まります。このシリーズの魅力は、そんな栄三ファミリーともいうべき、栄三郎とその仲間たちの繰り広げる人情劇にあります。

さて、また読書を続けたいと思います。

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『取次屋栄三』(岡本さとる・祥伝社文庫)
『二度の別れ 取次屋栄三(18)』(岡本さとる・祥伝社文庫)