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赤まんま―せつなくて愛おしい江戸の男女たち

北原亞以子さんの『赤まんま』を読んだ。「慶次郎縁側日記」シリーズの第八弾である。「三日の桜」「嘘(うそ)」「敵(かたき)」「夏過ぎて」「一つ奥」「赤まんま」「酔いどれ」「捨てどころ」の8篇を収録している。

赤まんま―慶次郎縁側日記 (新潮文庫)

赤まんま―慶次郎縁側日記 (新潮文庫)

隠居した元南町奉行所同心の森口慶次郎が活躍する時代小説だが、捕り物よりは、事件とそれにかかわる人物を通して、いろいろな形の人間模様を描くことに重点が置かれている。そのため、読んでいるうちにいろいろなことを考えさせられる。妻との関係がしっくりいかないときに読んだせいか、夫婦関係を描いた話が気になった。

十年連れ添った夫・田丸屋安兵衛が若い女に心を動かしたことに嫉妬して、店を追い出した男と朝まで一緒に過ごした妻・おぬい(「三日の桜」)。仕事をせずに富籤に狂う亭主・菊松に対して、「敵」を討つことを考える女房のおつた(「敵」)。妻・久江の体を横取りした男に復讐する夫・国吉安兵衛(「夏過ぎて」)。怪我を負ったことから仕事をせずに酒浸りの生活を送る瓦葺職人の善七と、代わりに居酒屋を出して昼も夜も働く女房のおさい。(「一つ奥」)。昼間から深酒をして、縄暖簾で働く女房のおつぎを殴る蹴るの乱暴を働く、亭主の留三郎(「酔いどれ」)。

ひどい夫ばかりが登場して、慶次郎ではないが、妻の側を助けてあげたくなるが、夫の悪行の裏には事情があり、その事情を理解する/しようとする妻があり、憎み厭いながらも愛し支え合う男女の姿が描かれている。とても奥深い。

表題作の「赤まんま」がとても切なくて美しくて好きな作品である。不治の病で逝った幼なじみへの思いを、赤まんまをかたどった簪に込めた材木問屋の主人・木曾屋丞右衛門、その前に現れた悪い噂も多い美貌の若後家・おこう。表紙の装画にも描かれている、赤まんま(イヌタデ)という植物が気になってネットで写真を探してみた。

http://www.picmate.jp/196789372/photos/2399683/

また、NHKドラマで「慶次郎縁側日記」のプロデューサーを務められた菅野高至さんの解説が、ドラマ化の裏話が書かれていて興味深かった。