明治維新の原動力となった、幕末遣外使節団のドキュメント

世界を見た幕臣たち榎本秋さんの歴史読み物、『世界を見た幕臣たち』が洋泉社歴史新書より刊行されました。

坂本龍馬や新選組は出てこないけれど、彼らのことを知らなければ幕末日本を理解したことにはならない――。
ペリー来航以降、欧米列強との関係が最大の懸案となる中で、七度にわたって海を渡った幕府の遣外使節団。その体験と持ち帰った知識は、その後の日本に大きな影響を与えていた!
未知の文化や列強との難交渉に悩まされた人間ドラマからたどる幕末秘史。


2018年は明治維新百五十周年の節目の年。
幕末の動乱から戊辰戦争、そして明治維新に至る激動の時代が、来年にかけて大きな注目を集め、ブームになることが予想されます。

坂本龍馬や西郷隆盛、大久保利通、高杉晋作、桂小五郎(木戸孝允)といった維新の志士たちの活躍ばかりが取り上げられることが多く、遣外使節団についても、明治四年(1871)の岩倉遣欧使節団が近代日本外交の始まりとされています。

ところが、岩倉使節団に先立つ十数年前から、七度にわたって幕府により使節団が派遣されたことはあまり知られていません。

勝海舟や福沢諭吉らが咸臨丸でアメリカへ渡った万延元年(1860)の遣米使節団派遣は、植松三十里さんの『咸臨丸、サンフランシスコにて』など、時代小説でも取り上げられることがあるので知っていましたが、ほかの使節団については、ほとんど知りませんでした。

目次●
はじめに――西洋諸国を見た「大君の使節」たち
序章 世界を見た三人の漂流者――遣外使節団前史
1章 1860年 万延遣米使節団
コラム 知られざる海外渡航 四度の上海派遣使節団
2章 1862年 文久遣欧使節団
コラム 知られざる海外渡航 幕府派遣の留学生たち
3章 1864年 文久遣仏使節団
コラム 知られざる海外渡航 海防と工業化を担った遣英仏使節団
4章 1866年 慶応遣露使節団
コラム 知られざる海外渡航 目的を達成した二度目の遣米使節団
5章 1867年 慶応遣欧使節団
終章 岩倉使節団に結実した幕府外交の志
幕府による幕末遣外使節団の使節・随員主要者一覧


本書のカバーに、武士の一団がスフィンクス前で並んでいる不思議な写真が使われています。これは、文久三年に派遣された遣仏使節団が、フランスへの途次に撮影されたものです。

多くの困難を乗り越え、実現不可能な難交渉に立ち向かう幕臣たちの行動に、興味をそそられます。

本書では、幕末遣外使節たちの物語をドラマチックに綴りながら、彼らの果たした役割と明治維新の展開に与えて影響を解き明かしていきます。


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『世界を見た幕臣たち』(榎本秋著・洋泉社歴史新書)

『咸臨丸、サンフランシスコにて』(植松三十里著・角川文庫)


「2017年9月の新刊 中」をアップ

春雷2017年9月11日から9月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年9月の新刊 中」を掲載しました。

葉室麟さんの『春雷』が祥伝社文庫より刊行されます。
『蜩の記』『潮鳴り』から続く、豊後・羽根藩を舞台にしたシリーズ第3作の待望の文庫化です。

鬼隼人、許すまじ――怨嗟渦巻く豊後・羽根藩。新参の多聞隼人が“覚悟”を秘し、藩主・三浦兼清を名君と成すため、苛烈な改革を断行していた。そんな中、一揆を招きかねない黒菱沼干拓の命を、家老就任を条件に隼人は受諾。
大庄屋の〈人食い〉七右衛門、学者の〈大蛇〉臥雲を召集、難工事に着手する。だが城中では、反隼人派の策謀が蠢き始めていた……。


本書で、凛とした武士の生きざまにしっかりと向き合いたいと思います。

魅力的なラインナップとなった祥伝社文庫の9月の新刊では、簑輪諒さんの『最低の軍師』も楽しみにしています。
一万五千の上杉謙信軍に対して、北条方の原胤貞が治める下総の臼井城にて、二千の城兵で立ち向かった、軍師白井浄三の生涯を描いた作品です

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『春雷』
『蜩の記』
『潮鳴り』

『最低の軍師』


→2017年9月の新刊 中

伊豆沖で女海賊と戦う市兵衛。縁談の行方からも目が離せない

架け橋 風の市兵衛辻堂魁(つじどうかい)さんの文庫書き下ろし時代小説シリーズ20巻、『架け橋 風の市兵衛』(祥伝社文庫)が刊行されています。

唐木市兵衛を相模平塚・須賀湊の廻船問屋《弓月》の父子・七左衛門と三一郎が伝言を持って訪ねてきた。相手は返弥陀ノ介の許から姿を消した女・お青だった。伊豆沖で海賊に捕らえれるも逃げ出して、七左衛門らに助けられていた。弥陀ノ介には内密にと請われ、市兵衛は単身須賀湊へ向かう。
一方、弥陀ノ介は、〈東雲お国〉と名乗る女海賊の討伐のため、浦賀奉行所に派遣される。だが、お国は弟を殺された哀しみで、復讐の鬼と化していた……。


15巻の『夕影』で姿を消した、青(せい)が久々に姿を現します。乗っていた船が暴風雨で破船し、女海賊〈東雲お国〉により一時は囚われの身になりますが、傷つきながらも逃げ出して、廻船問屋・弓月の七左衛門に助けられます。

お青は弥陀ノ介の最愛の人です。そのお青から、「助けてほしい。弥陀ノ介に言うな」の伝言を受けて、市兵衛は友・弥陀ノ介のために須賀へ。

女海賊〈東雲お国〉は、相模から伊豆、駿河、安房上総などの湊へ、闇に紛れて侵入し、廻船問屋や裕福な商家に押し入り、女子供にも容赦なく斬り捨て、金目の物を奪っていきます。そのお国が溺愛する弟を、お青に殺されて復讐の鬼と化します。

今回の読みどころの一つは、女海賊に対して、市兵衛の風の剣が挑む船上で格闘シーンです。百戦錬磨の海賊たちを相手に、狭い船上を縦横無尽に飛び回る市兵衛に、ハラハラドキドキ、興奮します。

また、物語ではサイドストーリーとして、市兵衛の縁談話が描かれています。
『待つ春や』での市兵衛の縦横無尽な活躍を知った、武州忍田領阿部家のお側衆をつとめる大庭桐右衛門から、娘の婿に請われて、見合いをすることになります。

この縁談話の顛末も大いに気になります。
同時刊行ということもあり、19巻の『遠き潮騒』と合わせて上下巻という感じもしますが、「風の市兵衛」ファンとしては至福の時を過ごせます。

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『遠き潮騒 風の市兵衛』(19巻)
『架け橋 風の市兵衛』(20巻)

『夕影 風の市兵衛』(15巻)
『待つ春や 風の市兵衛』(18巻)


失踪した幼馴染みを追い、銚子湊へ向かう弥陀ノ介と市兵衛

遠き潮騒 風の市兵衛辻堂魁(つじどうかい)さんの文庫書き下ろし時代小説、『遠き潮騒 風の市兵衛』(祥伝社文庫)を紹介します。

深川で干鰯〆粕問屋の下総屋の主が刺殺された。玄人の仕業と疑った北町奉行所同心・渋井鬼三次は、聞き込みから賊は銚子湊の男と睨み、奉行の許可を得て現地に急行した。
同じころ、唐木市兵衛は、友人の返弥陀ノ介の供で下総八日市場を目指していた。
三年半前に失踪した弥陀ノ介の幼馴染みの松山卓が目撃されたのだ。当時、銚子湊では幕領米の抜け荷が噂され、役人だった卓は忽然と姿を消していた……。


弥陀ノ介の幼馴染みで友人の松山卓(すぐる)は、下総・銚子湊で東北天領より運ばれてくる年貢米を利根川舟運へ廻漕する事務取扱を管掌する勘定所の《務場(つとめば)》に赴任していました。
三年半前に銚子湊の南にある、屏風ヶ浦の断崖で目撃されたのを最後に姿を消しています。

物語では屏風ヶ浦の西に位置する八日市場は市が開かれる繁華な場所として描かれ、九十九里の鰯漁の豊漁ぶりや飯沼観音(飯沼山圓福寺)など銚子湊の情景に、旅愁を誘われます。
銚子湊と八日市場の間に飯岡村がありますが、売り出し中の博徒として、飯岡の助五郎も登場します。

市兵衛と弥陀ノ介の最強コンビが、湊に巣食う悪に立ち向かうシーンが圧巻。胸のすく活躍ぶりを見せます。

本書は125万部突破の大人気シリーズの19巻。辻堂さんの作家生活10周年を記念して、シリーズ20巻の『架け橋 風の市兵衛』と同時刊行になっています。
作家生活10周年キャンペーンとして、『遠き潮騒』と『架け橋』の2冊を購入された読者を対象に、「市兵衛をイメージした本染めオリジナル和手ぬぐい」や「風の市兵衛シリーズのカバー画を集めた限定ポストカードセット(20枚入り)のプレゼントもあります。(締切:2017年9月30日)

九十九里浜と屏風ケ浜の鰯漁が登場する時代小説では、水田勁(みずたけい)さんの『海よ かもめよ 紀之屋玉吉残夢録(三)』(双葉文庫)も痛快で、面白かったです。

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『遠き潮騒 風の市兵衛』(19巻)
『架け橋 風の市兵衛』(20巻)

『海よ かもめよ 紀之屋玉吉残夢録(三)』(水田勁・双葉文庫・Kindle版)


希代の英雄か、偏屈な激情家か。西郷どんの二つの顔に迫る

西郷どんの真実歴史家安藤優一郎さんの『西郷(せご)どんの真実』(日経ビジネス人文庫)が刊行されました。2018年大河ドラマの主人公、西郷隆盛の知られざる人物像に迫る歴史読み物です。

将たる器を備えたヒーローか、それとも毀誉褒貶の激しい劇場なのか? 二度にわたる島流し。三人の妻と五人の子供。明治維新の立役者で、藩内の権力闘争に勝利し、新政府の内政トップに上り詰めながら、西南戦争を機に朝敵に転落――。西郷隆盛の人生は謎に満ちている。


目次
序章 西郷どんは、どんな人物だったのか
第1章 雌伏の日々
第2章 政局の表舞台に
第3章 とことん好かれるか、とことん嫌われるか
第4章 官軍の将として
第5章 薩摩藩消滅
第6章 朝敵への道――西南戦争の謎
終章 西郷伝説と明治維新

『幕末維新 消された歴史―武士の言い分 江戸っ子の言い分』『勝海舟と福沢諭吉―維新を生きた二人の幕臣』『徳川慶喜と渋沢栄一―最後の将軍に仕えた最後の幕臣』など、明治維新により歴史の敗者に転落した徳川家に連なる側からみた「消された歴史」を解き明かしてきた作者が、本書では歴史の勝者側からみた「消された歴史」に焦点を当てています。

明治維新最大の功臣で政府のトップに上り詰めながら、西南戦争を機に賊臣に転落。
西郷の人生を追っていくことで、世間のイメージとかけ離れた顔が見えてきたり、謎に満ちた行動も明らかになっていきます。

西郷隆盛の写真は一枚も残っていません。その容貌は、イタリア人画家キョッソーネによる肖像画や上野公園の銅像からうかがい知るのみです。
西郷の写真をモチーフにして、風野真知雄さんの『西郷盗撮』のような歴史ミステリーも生まれています。

本書は、『西郷隆盛伝説の虚実』(2014年5月・日本経済新聞出版社刊)を加筆修正したもの。

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『西郷どんの真実』
『幕末維新 消された歴史―武士の言い分 江戸っ子の言い分』
『勝海舟と福沢諭吉―維新を生きた二人の幕臣』
『徳川慶喜と渋沢栄一―最後の将軍に仕えた最後の幕臣』

『西郷盗撮 剣豪写真師・志村悠之介』