甲次郎浪華始末 蔵屋敷の遣い

甲次郎浪華始末 蔵屋敷の遣い
甲次郎浪華始末 蔵屋敷の遣い
(こうじろうなにわしまつ・くらやしきのつかい)
築山桂
(つきやまけい)
[捕物]
★★★★

『浪華の翔風』など、大坂を舞台とした作品で活躍する築山さんの最新作。先日、大阪出張してきたばかりで、読みたくなった。

江戸時代の大坂を舞台にした時代小説は、絶対的に少ないので、本書は貴重だ。とくに作者の築山さんは京都生まれ大阪大学大学院文学研究科博士過程修了ということで、大坂の町に精通しているせいか、町の様子が生き生きと描かれている。

主人公の甲次郎は、商家で育てられながら、その体には武士の血が流れているために、その思いが捨て切れず、呉服屋のぼんと呼ばれることに反発して家を飛び出し、放浪生活を送ったこともあるが、結局は生まれ育った町に舞い戻ってしまった。甲次郎はすでに二十五で、今は養家の娘と夫婦になる将来の姿が透けて見えている。このまま、この町にいればじきに自分は呉服屋の主になる。そのことがまたやり場のない、フラストレーションになっている。傷ついた鳩をめぐる争奪、ある藩の秘事、豪商の狙い、出生の秘密…、甲次郎の自棄気味な探求心が物語をどんどん展開させていく。

物語●呉服屋の若狭屋の娘信乃と千佐は、琴の稽古の帰りに、大名家の蔵屋敷が並ぶ界隈で、傷ついた鳩を拾った。鳩は大坂蔵屋敷で飼われていたらしい伝書用の鳩で、吹き矢を使って打ち落とされたものだった。「それはおれの落とした鳩や、返せ」と、二人の娘の前に、町人髷を結い、一見、どこかのお店者と間違えそうな身なりながら、田舎風の男が現れ、伝書鳩を返せと言って、匕首を胸先に突き付けた。あわやというところで、やはり若狭屋で育てられ、二人の娘とは血のつながりがない、甲次郎が助けに入った。さらに蔵屋敷の侍たちもやってきたので、田舎風の男は鳩を取り返せずに逃げ去った…。

目次■第一章 落ちた鳩/第二章 いとこ姉妹/第三章 銅山騒動/第四章 拐かし/第五章 形見の懐剣/第六章 敵か味方か

カバーイラストレーション:宇野信哉
カバーデザイン:若林繁裕
時代:嘉永四年(1851) ※内藤紀伊守の大坂城代を務めていた時期(嘉永元年10.18~嘉永三年9.1)とは少しずれるが
場所:江戸堀町、本町三丁目、長堀端、農人町、南久宝寺町、定番屋敷、天神橋筋、天王寺ほか
(双葉文庫・600円・04/09/20第1刷・300P)
購入日:04/10/29
読破日:04/11/28

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