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螢の橋

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螢の橋螢の橋
(ほたるのはし)
澤田ふじ子
(さわだふじこ)
[市井]
★★★☆☆☆

『幾世の橋』、『見えない橋』、『もどり橋』、『天空の橋』と、タイトルに“橋”がつく澤田作品は名作ぞろいだ。作者が人と人が出会い別れる“橋”に思い入れがあるせいか。

この作品は、作者としては珍しい江戸前期(家光時代)の京を舞台にしている。作品の随所に、戦乱の終息と新しい政治体制の確立を感じさせる場面描写があり、作品の大きなテーマとなっている。

澤田さんの本では、あとがきを読むと、いろいろな示唆があり、また、作者がどのような思いで作品を綴ったかが垣間見ることができ、興味深い。平成元年に、京都市中京区三条通柳馬場東入ルから、京都埋蔵文化財研究所が、総数800点以上の「織部」「志野」「唐津」のやきものを発掘したことが執筆のヒントになっているという。物語は、意外な展開を見せる。

御室焼(おむろやき)の陶工・野々村仁清(にんせい)や茶湯者・金森宗和、京都所司代・板倉周防守重宗らも登場し、主人公の美濃の陶工・平蔵らに絡み、芸術と政治の狭間でもがく男と女を京の市井を舞台に堪能させてくれる。

物語●美濃の窯焚きの雑工の娘・お登勢は、京三条御幸町の諸国やきもの問屋「久々利屋」で奉公していた。許婚の陶工・平蔵は、庇護者である古田織部正の死後、衰退しはじめた、美濃のやきものを再興しようと考えていた。そんなある日、京の三条川原で老賊が磔に処せられるという事件が起きた…。

目次■短夜の蔵/秋の旅僧/霧の旗/唐津からの荷/仁清の窯/慶安夜雨/闇の梯子/夏の嵐/あとがき

装幀・装画:蓬田やすひろ
時代:正保3年(1646)
舞台:京・三条御幸町、三条川原、仁和寺門前、五条大橋西、北野、美濃・久々利村、鳥居本、犬上川、鵜沼ほか
(幻冬舎・1,600円・99/11/10第1刷・358P)
購入日:99/10/27
読破日:99/12/14

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