『傑作! 名手たちが描いた 小説・鎌倉殿の世界』の解題を担当しました。

その日の吉良上野介

その日の吉良上野介その日の吉良上野介
(そのひのきらこうずけのすけ)
池宮彰一郎
(いけみやしょういちろう)
[忠臣蔵]
★★★★☆

NHK大河ドラマと、テレビ東京の12時間時代劇の影響からか、忠臣蔵関係の出版ラッシュが続いている。そんな中で、今年も討入りの日12月14日を迎える。(もっとも旧暦で考えるべきだが)珍しいことに、今年は忠臣蔵関係のドラマ放映がなかった。

ただ、「忠」という言葉がもっとも縁遠い、今は「忠臣蔵」は受難の時代かもしれない。いろいろな作家たちがいろいろな忠臣蔵像を築いてきたが、今、ピッタリくるのは池宮さんの史観のような気がする。来年の大河ドラマが少し心配だ。ともかく、来年は上手に忠臣蔵と付き合っていきたい。

本書は、浅野・吉良事件から5つのエピソードを切り取った短編集である。『四十七人の刺客』、『四十七人目の浪士』(ともに新潮文庫)の読後に読むと、さらに楽しめる。とくに「千里の馬」と「その日の吉良上野介」が秀逸。前者では、忠臣蔵ではその他大勢扱いされることが多い千馬三郎兵衞を主人公にしているのがとても新鮮。

物語●「千里の馬」千馬三郎兵衞は、浅野内匠頭に日ごろから嫌われていた。その千馬に女性スキャンダルが…。「剣士と槍仕」黒犬に噛み殺されそうな娘を助けた男は、堀部安兵衛だった…。「その日の吉良上野介」米沢に移ることを決めた上野介はは、三回に分けてお別れの茶会を催すことに決めた。そして、二回目の茶会の前日…。「十三日の大石内蔵助」討入りを目前に控えた内蔵助は、相次ぐ浪士の脱盟の報せを聞く…。「下郎奔る」元備前松山藩士の木幡信兵衛は、大石内蔵助の顔を知っているということで、吉良家に仕官がかなったが…。

目次■千里の馬|剣士と槍仕|その日の吉良上野介|十三日の大石内蔵助|下郎奔る|解説 三好一行

カバー装画:西のぼる
デザイン:新潮社装幀室
解説:三好一行
時代:元禄十四年~十五年
舞台:築地鉄砲洲
(新潮文庫・438円・98/12/01第1刷・264P)
購入日:98/11/29
読破日:98/12/11

Amazon.co.jpで購入