『イクサガミ 神』|今村翔吾|講談社文庫
今村翔吾の文庫書き下ろし時代小説、『イクサガミ 神』(講談社文庫)を紹介します。
2022年2月に刊行された『イクサガミ 天』に始まった、史上最大のデスゲーム蟲毒。『地』『人』を経て、本巻『神』にてついに完結を迎えます。(三部作を想定して「天」「地」「人」と付けた上で、三巻で収まりきらないスケールの大きな物語の四巻めに「神(しん)」と付けたのは見事というほかないです)
最後に勝ち残るのは誰か。
この破天荒な試みは果たして続けられるのか。
蟲毒を仕組んだ黒幕の正体、そしてその目的とは――。
さまざまな謎を抱えたまま、物語は怒濤の勢いで最終巻へ突入します。
ここまで書いてきて、第三巻の『イクサガミ 人』について、これまで『時代小説SHOW』で紹介していなかったことに気づきました。(痛恨!)
あらすじ
最終決戦、開幕。東京は瞬く間に地獄絵図と化した。血と慟哭にまみれる都心の一角で、双葉は京八流の仇敵・幻刀斎と相まみえる。一方の愁二郎は、当代最強の剣士との死闘に臨むことに――。戦う者の矜持を懸けた「蟲毒」が、ついに終焉を迎える。八人の化物と一人の少女、生き残るのは誰だ。
(『イクサガミ 神』カバー裏の紹介文より引用・編集)
ここに注目!
明治十一年(1878)六月。 幾多の死闘を勝ち抜いた蟲毒の生き残り九人が、ついに最終決戦の地・東京へと集結しました。これまでに実に二百八十三人が敗れ去っています。
嵯峨愁二郎を含む八人の化物、そして誰もが想像しなかった少女・香月双葉。
主催者は新たなルールを告げます。
「銘々が指定の場所を出発し、上野寛永寺黒門を目指せ。途中の関門はなく、経路は自由。ただし黒門が開くのは午後十一時五十分から午前零時までの十分間のみ。その時刻に辿り着いた者で金十万円を山分けとする」――。
さらに主催者は、サバイバルを一層苛烈にする策を仕掛けます。
闘いの中で、参加者同士の因縁や過去、そして蟲毒に加わった理由が明らかに。読者は登場人物たちの姿に感情移入し、手に汗握りながら読み進めることになるでしょう。
愁二郎ら京八流の義兄弟が操る八つの奥義(北辰・武曲・禄存・破軍・巨門・貪狼・廉貞・文曲)の秘密。さらに京八流継承者の命を狙う謎の男の影。血に飢えた若き剣鬼まで登場し、ゲームは行方は混乱と混沌の渦に。
そして、明治政府の大警視・川路利良、駅逓局長で「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密ら実在の人物も物語に深く関わってきます。
困難さを増す、幾多の闘いを経て成長していく愁二郎と双葉。
「イクサガミ」とは何なのか――。
盛りを迎えつつある明治、人々の華やかな声の中へ、美しくなるだろうこの時代を歩んでいく。
最後の一文を読み終えたとき、数々の疑問の答えが胸に刻まれると同時に、明治という時代の息吹に触れたような感慨が押し寄せます。
イクサガミ 神
今村翔吾
講談社 講談社文庫
2025年8月8日第1刷発行
カバー装画:石田スイ
カバーデザイン:長崎綾(next door design)
目次
壱ノ章 東京
弐ノ章 蟲毒転章
参ノ章 天より降りし者
肆ノ章 紅の舞
伍ノ章 翻
陸ノ章 木偏の譜
漆ノ章 北天の誓い
捌ノ章 最後の忍び
玖ノ章 宿命の剣
拾ノ章 竜の壁
拾壱ノ章 流の最果て
拾弐ノ章 戦神
終ノ章
本文468ページ
本書は文庫書き下ろし
今回ご紹介した本
