時代小説に珍しい人質立てこもり劇

千野隆司さんの『雪しぐれ』を読んだ。南町奉行所定町廻り同心の早瀬惣十郎が活躍する捕物小説シリーズ「南町同心早瀬惣十郎捕物控」の第4弾である。このシリーズは、捕物小説好きをうならせるような趣向を毎回凝らしてくれる。

今回は、序章で深川中島町の両替商に2人組の盗賊が入り、主人が殺され千両近い金が奪われるという事件が描かれる。そして、第一章では、冷たい雨が降り始めた夕刻間際、京橋南鞘町の薬種を商う大店・蓬莱屋に盗賊が押し入った。賊は、十数名の客と同じくらいの数の奉公人を人質にとり、立てこもった。南町奉行所同心の早瀬惣十郎も手先の忠助を伴って現場に駆けつけたが、現場は膠着状態に陥っていた…。

多くの人質を取って立てこもる盗賊の狙いは何か。同業の寄り合いに出かけていて店を離れ、難を逃れていた主人の善右衛門には不審な言動がある。しかも、惣十郎と妻琴江の夫婦が引き取って育てている末三郎が、人質の中にいるらしいことがわかる…。

立てこもる犯人とそれを取り囲む捜査陣、現代の刑事ドラマでは珍しくないシチュエーションだが、時代小説では新しい試み。冷静沈着な犯人たちに翻弄される惣十郎ら、サスペンスがどんどん高まっていく不思議な味の捕物小説である。

コメント

  1. じん より:

    おいらも、読んだ。朝九時半ごろから読み始めて、夕方までに一気で読み終えた。犯人の側の気持ちが、よく分かって面白かった。悪ガキの末三郎が、なかなかいい味。第四弾ということだから、前のも読んでみたくなった。

  2. jidai-show より:

    じんさん、コメントありがとうございます。末三郎は前作『鬼心―南町同心早瀬惣十郎捕物控』から登場しています。おすすめです。