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徳川将軍家と鶴のお吸い物

注目している歴史家の一人で、『観光都市 江戸の誕生』の著者、安藤優一郎さんの最新作『徳川将軍家の演出力』を読んだ。

観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

徳川将軍家の演出力 (新潮新書)

徳川将軍家の演出力 (新潮新書)

前作で御開帳を通じて江戸の寺社に集客方法を取り上げた著者が、今度は徳川将軍家のブランド戦略を解き明かしている。現代のビジネスパーソンにもヒントになるような視点が面白い。

シュリーマンの幕末の日本訪問、将軍御成の様子、太刀の代わりに木刀の使用、将軍のショッピング、川崎大師が初詣のメッカになった理由など、興味深い読み物が多い。

とくに、目を引いたのが、薩摩藩島津家が将軍家光の御成の際に出された饗応膳の中に、鶴のお吸い物が出されたという記述だ。

 鶴のお吸い物の作り方だが、鶴の骨を煮出しただし汁で、鶴の肉を煮て、白味噌を加える。取り合わせの野菜を入れ、酒も調味料として加えた。鶴の香りが逃げないよう、鍋の蓋は開けないのだと言う。

(『徳川将軍家の演出力』P.92より)

鶴は長寿の象徴として、古来より珍重されていて、鶴のお吸い物は、当時の最高級料理だったそうだ。

また、今から信じられないが、江戸時代に葛西、小松川村(現在の江東区、江戸川区)に鶴を餌付けする場所があったという。へえ~。

江戸に関する多くの資料を読み込まれた安藤さんの解説により、今まで断片的であった、将軍家に関する自分の知識が整理される。そして、徳川将軍家が少し身近になった気がする。

史料とは別に、『半七捕物帳』からの引用箇所もあり、市井の人たちに迫ることができて、時代小説ファンにも読みやすい江戸入門書である。