晩年を生きた証としての北重人さんの短篇集

北重人さんの『汐のなごり』を読み始めました。この作品で、北さんは第140回直木賞の候補になっています。ちなみにこのときの受賞作は、天童荒太さんの『悼む人』と山本兼一さんの『利休にたずねよ』でした。北さんは2009年8月に惜しまれつつ亡くなられています。

●第140回直木賞の選評
http://homepage1.nifty.com/naokiaward/senpyo/senpyo140.htm

さて、この『汐のなごり』は、6つの短編が収録されています。著者のことが念頭にあるせいか、人生の終幕近くにある人々が描かれているようで、一気に読んでしまうのがもったいない感じがします。






脇役たちに光を当て、新選組の世界が広がる

木内昇さんの『新選組裏表録 地虫鳴く』を読みました。本書は、新選組では脇役というかチョイ役の扱いがほとんどの3人の人物を語り手として物語が進みます。

一人目は、一度新選組を脱退しながら、元治二年に復帰、その後、伊東甲子太郎側についた伍長の阿部十郎。後に近藤勇を襲撃した人物として知られています。

この作品での阿部の描かれ方が秀逸。

二人目は、同じく伊東側についた伍長の篠原秦之進。彼の目を通した伊東とその実弟の三木三郎の描かれ方がまた、興味深いです。実はこの物語を読んで初めて、伊東側に共感をもつことができました。

そして、三人目が新選組で諸士取調役兼監察の尾形俊太郎。新選組の監察方といえば、山崎蒸と『壬生義士伝』で一躍ヒーローとなった吉村貫一郎が有名ですが、役職では二人の上に尾形が立っています。その割りに地味な存在だったのですが、その地味さ持ち味で、近藤派と伊東派のほどよいバランサーになっています。

土方歳三や沖田総司ら試衛館道場派の隊士たちが新選組の中で陽の当たる場所にいる存在としたら、その他大勢である地虫のような存在の隊士たちの声を拾い、丹念に描くことで、新選組の世界を広げてくれた感じがします。伊東側や第3極の視点から、新選組を見ることができ、とてもスリリングで面白い作品でした。

■目次
明治三十二年六月 東京
第1章 流転
第2章 迷妄
第3章 漂失
第4章 振起
第5章 自走
明治四年十二月 会津

解説 橋本紀子



『新選組裏表録 地虫鳴く』(しんせんぐみうらうえろく・じむしなく)
著者:木内昇(きうちのぼり)
カバーデザイン:常松靖史(TUNE)
装画:末房志野

集英社文庫
819円+税
577ページ

時代:元治二年(1865年)正月

「時代小説SHOW」のリニューアル

「時代小説SHOW」をリニューアルしました。デザインやコンテンツなど、まだまだ改善したいところはありますが、早く見ていただくことが大切と思って公開しました。

今回はWordPressをベースに、Topページと記事のページを作りました。読書録など、既存のページの一部も徐々にWordPressのページに移植していきたいと思っています。

『文蔵』でお気に入りの新人作家探し

『文蔵 2010.4』(PHP文庫)が家に届いていました。今月号の特集は、「将来の人気作家にいち早く注目!! 「新人作家」を青田買い!」ということで、社会に期待の「ルーキー」たちが登場する季節にあわせて、小説の世界の将来有望な新人を紹介する企画です。




時代小説のジャンルでは、古代史(古墳時代)を描いた『駒、玉のちりとなり』でデビューした、藤ノ木陵(ふじのきりょう)さんをインタビューで記事で取り上げていました。



また、連載記事「話題の著者に聞く」のコーナーで、冲方 丁(うぶかた とう)さんへのインタビューが面白かったです。冲方さんは、江戸の天文学者・渋川春海(しぶかわはるみ)を主人公にした『天地明察』の著者。ちょうど、この作品を読もうと思っていたところなので、執筆の背景がわかり参考になりました。




『江戸・東京の歴史と地理』の超雑学

歴史家の安藤優一郎さんが、『超雑学 読んだら話したくなる 江戸・東京の歴史と地理』を日本実業出版社から刊行されました。

本書は、江戸の歴史と地理についての超入門書です。江戸の土地の特徴、明治以降の東京の歴史、江戸・東京のインフラ・建物の変遷、現在の東京の知恵名のルーツなど、「へぇ~」と膝を叩き、薀蓄(雑学)として話したくなるような話がたくさん載っています。

しかも、巻末には、取り上げた各スポットをたどり、江戸の名残りが楽しめる「街歩きガイド」が付いています。