「2017年11月の新刊 下」をアップ

殺生関白の蜘蛛2017年11月21日から11月30日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年11月の新刊 下」を掲載しました。

今回は、早川書房ハヤカワ文庫JAから刊行される、日野真人(ひのまこと)さんの『殺生関白の蜘蛛(せっしょうかんぱくのくも)』に注目しています。

2017年、第七回アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作『アラーネアの罠』を書籍化にあたり加筆修正し、『殺生関白の蜘蛛』と改題。ペンネームも賞応募時の西恭司から日野真人に改めています。
第7回アガサ・クリスティー賞発表 (2017/07/07)

「平蜘蛛を探せ」舞兵庫は、太閤秀吉と関白秀次から同じ密命を別々に受けてしまう……。窮地に立たされた男が選んだ決断とは――? 茶器に潜む密謀と秀次事件の真相に迫る歴史ミステリ


アガサ・クリスティーの冠が付いた賞に、時代小説で挑むのは大胆ですが、優秀賞を獲得するのは、著者も選者も見事です。
原題の「アラーネア」はラテン語で蜘蛛のことだそう。

主人公の舞兵庫は、豊臣秀次の臣で、元松永弾正の臣という設定。
平蜘蛛といえば、弾正が爆死する際に道連れとした、名器・平蜘蛛茶釜を思い出されます。

紹介文を読んだだけで、面白本のオーラがぷんぷんと感じられる作品で、とんでもないストーリー展開を期待しています。

■Amazon.co.jp
『殺生関白の蜘蛛』(日野真人・ハヤカワ文庫JA)


→2017年11月の新刊 下


江戸スイーツ男子が作る菓子と兄弟愛に心満たされる

深川二幸堂 菓子こよみ「上絵師 律の似顔絵帖」シリーズで注目の、知野みさき(ちのみさき)さんの文庫書き下ろし時代小説、『深川二幸堂 菓子こよみ』がだいわ文庫より刊行されました。

「餡子だけじゃつまらねぇ。菓子を作れよ、孝次郎――」
深川で菓子屋「二幸堂(にこうどう)」を始めた兄・光太郎と弟・孝次郎。
ほんのり甘酒香る薄皮饅頭「斑雪(はだれゆき)」、桜の花弁を模した上生菓子「恋桜(こいざくら)」、黄身餡が贅沢な「天道(てんどう)」と十四夜の月の如く控えめな甘さの「幾望(きぼう)」、柳の青葉が風情涼やかな錦玉羹「春の川」、薄紅色の白餡大福「紅福(べにふく)」。
――不器用な職人・孝次郎の作るとびきりの菓子が、人と人を繋げ、出会いをもたらし、ささやかな幸福を照らし出す。


弟の孝次郎は二十四歳。日本橋の大店菓子屋・草笛屋で菓子職人をしていたが、その腕を高く買っていた先代主人が亡くなると、代替わりした主人・信俊には疎まれて、菓子を仕上げる板場から、餡を作るだけの「餡炊き部屋」へと追いやられました。

二つ違いの兄・光太郎は、亡き父勘太郎の跡を継ぎ、神田で根付師をしています。
そんな弟の窮状を知って、光太郎は「身の周りの物をまとめておけ」という伝言を伝えて、草笛屋の信俊に、孝次郎を今日限りで草笛屋を辞めさせて、引き取りと告げます。

「長くなりますから事情は割愛いたしますが、この度わたくしは、深川で新しく菓子屋を開くことになったんです。それで孝次郎の手を借りたいと思いましてね。十二歳の夏から勤め始めて十二年。干支も一回りしましたし、御礼奉公までとっくに終わっておりましょう。わたくしは菓子には素人ですが、弟は草笛屋の先代に見込まれた菓子職人だ。先代のご遺志と店を引き継いだ旦那さまのことですから、心優しい弟が兄を助けることにまさか否やはありますまい」
(『深川二幸堂 菓子こよみ』P.23より)


口説爽やかに弟を引き取る光太郎。兄貴風を吹かせて、実にかっこいいです。

二人兄弟の始めた店は、光太郎と孝次郎の二人とも「こうの字」で、「幸」という字を当てて「二幸堂」と名付けられました。店主兼売り子は光太郎で、菓子作りはすべて孝次郎一人で行います。

役者のよう色男で社交的な兄と、火事で負った火傷がもとで内向的で生き方が不器用な弟。対照的な兄弟の絆が情感豊かに描かれています。

この物語には、次々と、季節感を伝えるオリジナルの和スイーツが登場します。作り方や色、形の描写を読んでいるだけで、美味しそうでお腹が刺激されます。

そして、登場人物たちが織り成す人情と恋の物語は、美味しいそうなだけでなく、優しい気分にしてくれて、心も満たしてくれます。

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『深川二幸堂 菓子こよみ』(知野みさき・だいわ文庫)


『文蔵 2017.12』の特集は、いま、面白いエッセイが読みたい!

『文蔵 2017.12』『文蔵 2017.12』(PHP研究所・PHP文芸文庫)の特集は、笑える、泣ける、考えさせられる……いま、面白いエッセイが読みたい! です。

 エッセと一口に言っても、のほほんとお気楽に読めるものから、襟を正してありがたく読みたくなるものまで、幅広く奥が深い。小説と違い、書き手の生活や素顔が垣間見えるのも、また楽しい。練りに練った端正な文章を書く作家が、思いがけない弾けっぷりを披露するのもエッセイの魅力だ。
(『文蔵 2017.12』P.5 特集 時に小説より面白い!? 必読エッセイ10選より)


今回の特集は、妄想エッセイ、辛口エッセイ、泣けるエッセイなど、ライターの青木逸美さんが、10のおすすめエッセイを紹介します。

時代小説作家髙田郁さんの『晴れときどき涙雨 髙田郁のできるまで』を取り上げてくれているのがうれしいです。

新連載で、梶よう子さんの「由蔵覚え帳」がスタートしました。
江戸市中の事件や噂、落書などの記録に精を出して、それらの情報を必要とする者に提供する情報屋で、「御記録本屋」と異名を取った、藤岡屋由蔵を主人公にした時代小説です。
高橋克彦さんの『完四郎広目手控』の主要登場人物で、江戸の有名人です。どんな活躍ぶりが読めるのか、楽しみです。

■Amazon.co.jp
『文蔵 2017.12』(PHP文芸文庫)
『晴れときどき涙雨 髙田郁のできるまで』(髙田郁・幻冬舎文庫)
『完四郎広目手控』(高橋克彦・集英社文庫)


⇒『文蔵』ホームページ

江戸の怪異を、話題の女性時代小説家たちが描くアンソロジー

あやかし 〈妖怪〉時代小説傑作選文芸評論家の細谷正充さんのセレクションによる、『あやかし 〈妖怪〉時代小説傑作選』がPHP文芸文庫より刊行されました。

病弱な若だんなのために特別に注文された布団から夜な夜な聞こえてくる泣き声の正体(「四布の布団」)、のっぺらぼうの同心のもとに持ち込まれてきた、奇妙な女からの訴え(「あやかし同心」)、「百物語」の場に来た少年には、可愛らしい少女の姿をした神様が憑いていた(「逃げ水」)など、妖怪や怪異を扱った短編六作を収録した時代小説アンソロジー。


編者の細谷正充さんに解説によると、本書は単に女性作家の作品を並べただけでなく、二つの趣向を凝らしたそうです。

一つは、歴史・時代小説の分野で、女性作家の活躍の場を大きく広げるエポックとなった、宮部みゆきさんを柱にしながら、比較的デビューの若い作家の作品を中心にしたこと。
もう一つは、『あやかし』というタイトルにあるように、怪異や妖怪を扱った、時代ホラーの傑作を集めたことにあります。

アンソロジーの収録作品は以下の通り。

「四布(よの)の布団」畠中恵
ご存じ「しゃばけ」シリーズの一編。

「蛼橋(こおろぎばし)」木内昇
『漂砂のうたう』で第百四十四回直木賞を受賞した木内さんの短編。(「こおろぎ」は「虫」へんに「車」)

「あやかし同心」霜島ケイ
『のっぺら あやかし同心捕物控』で時代小説デビューした作者のシリーズ第一話。

「うわんと鳴く声」小松エメル
『一鬼夜行』シリーズで人気の作者の、「うわん」シリーズの第一話

「夜の鶴」折口真喜子
与謝蕪村が見聞した怪異を語る『踊る猫』に収録された連作の一篇。

「逃げ水」宮部みゆき
『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』に収録された一篇。

バラエティに富んだ作品で、笑って泣いて、恐怖する、江戸ホラーが大いに楽しめます。

なお、PHP文芸文庫では、本書刊行後も、『なぞとき 〈捕物〉時代小説傑作選』(2018年1月初旬)、『なさけ 〈人情〉時代小説傑作選』(2018年3月初旬)と、宮部みゆきさんを中心に、現役バリバリの女性時代小説家の競演による時代小説アンソロジーを刊行されるとのこと。

最前線で活躍する女性作家たちの作品の面白さ、魅力が良いとこどりできます。
未読の作家であれば、これらの「時代傑作選」シリーズから、個々の作家の長編やシリーズに入っていくといいですね。

私も、早速、霜島ケイさんの『のっぺら あやかし同心捕物控』をポチっとしました。

■Amazon.co.jp
『あやかし 〈妖怪〉時代小説傑作選』(細谷正充編・PHP文芸文庫)
『ぬしさまへ』(畠中恵・新潮文庫)
『のっぺら あやかし同心捕物控』(霜島ケイ・廣済堂文庫・Kindle版)
『うわん 七つまでは神のうち』(小松エメル・光文社文庫)
『踊る猫』(折口真喜子・光文社文庫)
『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』(宮部みゆき・角川文庫)


「2017年11月の新刊 中」をアップ

九紋龍 羽州ぼろ鳶組2017年11月11日から11月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年11月の新刊 中」を掲載しました。

今村翔吾さんの『九紋龍 羽州ぼろ鳶組』が祥伝社文庫より刊行されます。
新庄藩火消・通称〝ぼろ鳶〟組頭・松永源吾が活躍する、痛快火消小説シリーズ。『火喰鳥』『夜哭烏』に続く、第3弾です。

火事を起こし、その隙に皆殺しの押し込みを働く盗賊・千羽一家が江戸に入った。その報を受けた新庄藩火消・通称〝ぼろ鳶〟組頭・松永源吾は火付けを止めるべく奔走する。だが藩主の親戚・戸沢正親が現れ、火消の削減を宣言。
一方現場では九頭の龍を躰に刻み、町火消最強と恐れられる「に組」頭〝九紋龍〟が乱入、大混乱に陥っていた。絶対的な危機に、ぼろ鳶組の命運は!?


手に汗に握る、興奮をして、泣かせてくれる、今、注目のシリーズ最新作の登場。楽しみです。

■Amazon.co.jp
『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫) 第1作
『夜哭烏 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫) 第2作
『九紋龍 羽州ぼろ鳶組』(今村翔吾・祥伝社文庫) 第3作


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