浅間山大噴火前年の怪異探索行と、噴煙に消えた素浪人

素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰芝村凉也(しばむらりょうや)さんの文庫書き下ろし時代小説、『素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰(ついおくのかん)』が講談社文庫から刊行されました。

火を吐く浅間山で身を挺して闘った榊半四郎と、謎の老人・際野聊異斎、小僧の捨吉の三人組の生死は杳として知れない。
浅間山大噴火の前年、半四郎は聊異斎に誘われて、捨吉と三人で、江戸以外の地の怪異を調べるために、関八州の旅に出る。最初に向かったのは、下総国の寒川村の漁村だった。
船幽霊が出て、出漁していたその村の漁師が戻らず死体も浜に打ち上げられないことが、三度続いたという……。


本書は、「素浪人半四郎百鬼夜行」シリーズの10作目にして、完結編になります。巻名に付されている、「拾遺」というのは、漏れ落ちている事柄や作品を拾い補うこと。「翰(かん)」には、筆または筆で書いたものという意味があります。
前作『終焉の百鬼行』で壮大なスケールで日本滅亡の危機に立ち向かう半四郎の奮闘を綴っていて、気になるのは噴煙の向こうに消えた三人組の行方です。

今回、物語は噴火の前年にさかのぼります。
下総国の漁村に出没する船幽霊や、下野国の平家の落人集落の異神といった怪異探索の旅が綴られていきます。
これまで取り上げられなかったエピソードを挿入することで、三人組への追憶と喪失感が高まり、最終話「桃源郷」へ。

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『素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰』
『素浪人半四郎百鬼夜行(一) 鬼溜まりの闇』


「2017年1月の新刊 下」をアップ

秀吉を討て2017年1月11日から1月20日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年1月の新刊 下」を掲載しました。

武内涼さんの、『秀吉を討て』が角川文庫から刊行されます。

根来の若き忍び・林空は、総帥・根来隠形鬼に呼び出され「秀吉を討て」と命じられる。林空は仲間とともに、家康との合戦のため、甲賀忍者・山中長俊らの鉄壁な守りに固められた秀吉を銃撃しようとするが……。


『妖草師』が、「この時代小説がすごい! 2016年版 文庫書き下ろし部門」で1位となり、注目される時代小説家武内涼さんの戦国エンターテインメント小説が文庫化されます。

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『秀吉を討て』
『人斬り草 妖草師』(徳間文庫)

→2017年1月の新刊 下

新キャラ・竹中半兵衛登場。戦国時代を疾走する歴史ファンタジー第2弾

信長の妹が俺の嫁 2 戦国時代に架ける心と明日井の中の井守(いのなかのいもり)さんの『信長の妹が俺の嫁 2 戦国時代に架ける心と明日』がフロンティアワークスのノクスノベルスから刊行されました。
パラレルワールドの戦国時代を描く歴史ファンタジーの第2弾です。

戦国時代に転移し、戦国大名“浅井長政”となってしまった男子学生、深井長政。彼は、信長の妹で絶世の美女“市姫”と濃密な毎日を送りつつ、浅井家の領地を拡大するため奔走していた。そして、自分が知っている史実との違いや魔物の存在により、彼はここはパラレルワールドの戦国時代であることを確信する。
長政は、戦国時代屈指の戦略家である“竹中半兵衛”を家臣団に加えるために、菩提山城に向かう。渋る半兵衛の説得のため、長政は三日間彼とともに生活することになったのだが、半兵衛には重要な秘密が隠されていた……。


前作では、主人公が戦国時代へのタイムスリップする歴史ファンタジー、と思って読み始めたところ、すぐに信長の妹・市姫といちゃいちゃを始めて面喰いました。成人向けのサービスカットといったところ。
ところが、この主人公の長政は、エッチのところだけでなく、領地の統治や敵国との戦闘でも、現代人の感覚と知恵を駆使して、名君ぶりを示して家臣たちの信望を集めていきます。

2作目では、浅井家伝来の名馬・帝釈白毛の飼育係である彦兵衛の幼い妹・久が新キャラクターとして登場します。彦兵衛は浅井久政の許から名刀“石割兼光”を密かに持ち出し、長政に提供したことから、久政に手討ちになります。長政は、彦兵衛の生家を訪れて久を引き取ります。
戦国時代屈指の軍師・竹中半兵衛も、意外な形で長政とかかわっていきます。

史実とは異なる、パラレルワールドの戦国時代が展開されていくところが面白いです。次の展開が読めずに、先へ先へとどんどんページを進めたくなります。
序盤の六閣家との籠城戦など、合戦シーンが丁寧に描かれていて、戦国時代小説のツボを押さえていて好感が持てます。

本書は、ライトノベルを卒業した、20代~50代の男性を読者対象にしているために、青年向けの暴力や性表現にも踏み込んでいます。
表紙装画や挿絵は、イラストレーターの“山田の性活が第一”さんが描き、作品の世界観をビジュアル化しています。時代小説が苦手という若い読者にもおすすめです。

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『信長の妹が俺の嫁 2 戦国時代に架ける心と明日』
『信長の妹が俺の嫁 戦国時代で愛する妻と楽しく生きよう!』


隠密剣士のキャラクターが光る、映像化したい時代小説

青い剣 隠密剣士 夏木新太郎加藤文(かとうあや)さんの『青い剣 隠密剣士 夏木新太郎』(大和書房・だいわ文庫)は、2016年11月に刊行された文庫時代小説書き下ろしです。

「なぜ、父は死ななければならなかったのか――。
たまさか天から与えられた力のゆえに、並外れた剣の腕を持つひとりの若者。
友に恵まれ、少々“つまらない”が真面目な父を誇りに思う。そんな穏やかな日々が、前触れもなく崩れ去った。
すべてを失い、残された道は隠密として生きること。
隠密「夏木新太郎」としてたどりついた父の死の真相とは……。


著者の加藤文さんはドラマのシナリオなどを執筆され、本作が小説デビュー作です。
お父さんは、1985年(昭和60年)に急逝された、時代劇や任侠映画の名監督の加藤泰(かとうたい)さん。往年のテレビ時代劇「隠密剣士」の脚本でも活躍された方です。

本書の時代は文政七年(1824)、舞台は江戸。
山ノ内真之介は、並外れた剣の腕を持ち、前途洋々の若者。ところが、ある日、播磨国深山藩高辻家の江戸屋敷で勘定方をつとめる父は、公金横領の嫌疑をかけられて自裁してしまいます。
父を亡くし、家禄を没収され、すべてを失った真之介の前に、旗本・荻沼良之進が現れます。

「まず、山ノ内真之介殿には、この世から消えていただく」
「えっ?」
「消えるからには、身内であれ、どれほど親しく交わってきた者であれ、もうこの世で会うことは叶わぬ。お主は別人へと生まれ変わり、その身は公儀のものとなる。そして、隠密として働いてもらう」
(『青い剣 隠密剣士 夏木新太郎』P.52より)


一年後、真之介は、隠密・夏木新太郎として、探索の旅に出ます。

真之介の父の死の謎を抱えながら、ストーリーはどんどん展開していきます。登場人物たちのキャラクターも光り、今すぐに映像化できそうな作品です。

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『青い剣 隠密剣士 夏木新太郎』

加藤泰|ウィキペディア

『文蔵 2017.2』のブックガイドは、寒い日に読みたい心あたたまる小説

『文蔵 2017.2』『文蔵 2017.2』(PHP研究所・PHP文芸文庫)のブックガイドは、家族小説から恋愛、ミステリまで 「寒い日に読みたい心あたたまる小説」 です。

巻頭のブックガイドでは、書評家の吉田伸子さんが、家族愛に満ちた感動の物語、心にぽっとあかりを灯す恋愛小説、しみじみと胸に沁みるSF&ミステリといった切り口で、心あたたまる小説を紹介しています。

寒波が到来して降雪のニュースも聞かれる昨今、体ばかりでなく、心からあたたまりたいそんな気分にピッタリの企画です。タイムリーなテーマ選びに感心させられます。

ブックガイドでは現代小説ばかりで時代小説の出番はないので、連載小説を楽しもうと思います。
あさのあつこさんの市井もの「おいち不思議がたり 飛翔篇」と宮本昌孝さんの戦国時代小説「天離り果つる国(あまさかりはつるくに)」、山本一力さんの痛快な商家小説「献残屋佐吉御用帖」と、どれから読もうか食指が動きます。

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『文蔵 2017.2』(PHP文芸文庫)


⇒『文蔵』ホームページ