最愛の女おりきの消息が判明する。シリーズ完結間近か!?

付添い屋・六平太 天狗の巻 おりき金子成人(かねこなりと)さんの時代小説文庫書き下ろし、『付添い屋・六平太 天狗の巻 おりき』が小学館文庫から刊行されました。

廻り髪結いのおりきは六平太が九年も馴染んだ、いわば情婦だったが、一年以上前に突然姿を消して行方知らずになっていた。
そのおりきがかつて仕事場にしていた音羽に来た気配があるという知らせを受けて、六平太は重い腰を上げてその行方を辿り始める……。
一方、伝助店の住人で、下馬売りの太助の母親おていが失踪。二日後に箱崎の川岸で死骸が見つかった。
おていは店のものを盗んだり、突然暴れたりと、常軌を逸した振る舞いが見られるようになり、太助の手を焼くようになっていた。
六平太は、おてい殺しを巡って奔走するが……。


本書は、「付添い屋・六平太」シリーズの第10弾です。
主人公の浪人・秋月六平太は、裕福な商家の子女が花見や芝居見物に出かける際、案内と警護をする、付添い屋を生業にしています。

「このまま年だけ重ねてどうなさるつもりですか」
その日暮らしの、勝手気ままな付添い屋稼業を続ける六平太の行く末を案じる者も少なくありません。そんな中で、六平太の前から消えた情婦・おりきの消息がわかりそうになります。しかし、六平太の反応はなぜか鈍く、周囲をやきもきさせます。

本書では、颯爽と付添い屋として活躍する姿と別の、歳を重ねて恋に臆病になる六平太が描かれています。また、太助とおていの親子の描写では、親の介護という現代に通じる問題も取り上げられていて、これまでのシリーズと趣きを少し変えて、新味を加えています。

いよいよ完結が間近なのか? はたまた、新章に突入するのか? 今後の展開から目が離せません。

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『付添い屋・六平太 龍の巻 留め女』
『付添い屋・六平太 天狗の巻 おりき』(第10巻)


美猫サバの鯖猫長屋に、色男の店子がやってきた

鯖猫長屋ふしぎ草紙(二)田牧大和(たまきやまと)さんの文庫オリジナル時代小説、『鯖猫長屋ふしぎ草紙(二)』がPHP文芸文庫から刊行されました。

鯖縞模様の三毛猫サバが一番いばっている「鯖猫長屋」が、住人が減って存続の危機に! そんな折、団扇売りを生業にする色男・涼太が、長屋に引っ越してくる。どうやらそこには、サバが一枚噛んでいるらしい。
一方、「黒ひょっとこ」の異名を持つ元盗人で、サバの飼い主である画描きの青井亭拾楽にも怪しい影が近づく。折しも、巷には「黒ひょっとこ」を名乗る義賊が現れる……。


江戸・根津門前町の堀を挟んだ南、宮永町の長屋で巻き起こる事件を、人情味豊かに描く「鯖猫長屋」シリーズの第2弾です。

シリーズの魅力は、珍しい雄の三毛猫で、猫の目も人の目も引く美猫ぶりが際立ったサバの存在。
詰めかけた祭見物の人の重みで永代橋が崩落した日、祭見物に出かけようとしていた長屋のおてる夫婦を止めて、命を救ったこともあり、男前な上に、不思議な賢さと妙な迫力が備わっていて、「大将」と呼ばれ、長屋で一番偉い存在になっています。

その飼い主の拾楽は、「黒ひょっとこ」の異名をもつ義賊だったが、今は足を洗い画描きをしています。

長屋の面々も個性的です。
長屋を仕切るお節介な女房おてるとその亭主で大工の与六。拾楽にぞっこんで働き者の娘おはま、その兄で魚屋の貫八。野菜の振り売りの蓑吉、小間物の行商をする清吉、老練な差配の磯兵衛など。

饅頭屋の女あるじのお智や売れっ子の戯作者長谷川豊山という元店子に加えて、團十郎ばりの所作から「成田屋の旦那」で通っている、北町奉行所定廻同心の掛井十四郎など、多彩な人物が織り成す、江戸長屋人情小説です。

第2弾では、訳ありの色男・涼太が新たに長屋に移り住んできます。

新顔の涼太は、他の店子たちと交ざりたがらず、人を寄せ付けない気配を変えず、挨拶はするが自分から話しかけることはしません。誘いにも愛想のよい笑みで断ります。
ぎりぎり角が立たないほどの間合いを置き、色男の店子に浮き立つ女たちと身構えた男たちも肩透かしを食らい、気が抜けた風に。

そんな涼太の過去が次第に明らかになり、やがて長屋に事件が起こります。

ホッコリとした人情の温かさと、先を読みたくなる謎解きの面白さが味わえる、江戸猫小説の名品です。
サバのような猫がいたら、毎日がもっと面白くて楽しいものになりそうです。

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『鯖猫長屋ふしぎ草紙』
『鯖猫長屋ふしぎ草紙(二)』


「2017年3月の新刊 下」をアップ

おらんだ忍者・医師了潤 - 御役目は影働き2017年3月21日から3月31日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2017年3月の新刊 下」を掲載しました。

今回注目しているのは、中公文庫です。

浮穴みみさんの『おらんだ忍者・医師了潤 – 御役目は影働き』が刊行されます。『御役目は影働き – 忍び医者了潤参る』(2013年7月)を改題したものです。

隠れ里から江戸へ出て、忍者の素顔を隠し町医者となった上忍・笹川了潤。ともに江戸に出た「くノ一」真弓、亡き父に仕えていた美人助手・お蔦、間抜けな同心・伊織らとともに、不可思議な事件の謎に挑む。


三度の飯より検屍が好きという、医師にして上忍という了潤が活躍する、大江戸ふしぎ事件帖です。

奥山景布子(おくやま きょうこ)さんの『恋衣 とはずがたり』は、鎌倉後期、後深草院二条の日記「とはずがたり」をもとに、一人の女性の人生を辿ります。
萩耿介(はぎこうすけ)さんの『グレイス』は、『極悪 五右衛門伝』を改題したもので、石川五右衛門を名乗る男の波乱の半生を描いた暗黒歴史小説。

いずれの作品も読み逃せません。


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『おらんだ忍者・医師了潤 – 御役目は影働き』
『恋衣 とはずがたり』
『グレイス』

→2017年3月の新刊 下


『文蔵 2017.4』の特集は、高橋克彦「東北歴史小説」の世界

『文蔵 2017.4』『文蔵 2017.4』(PHP研究所・PHP文芸文庫)の特集は、待望の新刊『水壁』刊行記念! 高橋克彦「東北歴史小説」の世界 です。

『写楽殺人事件』や『緋い記憶』等現代小説のほか、「だましゑ」シリーズや「完四郎広目手控」など、時代ミステリーでの人気シリーズをもつ高橋克彦さん。

自身の故郷である、東北を舞台にした作品も少なくありません。
古代から近世まで、中央政府に搾取し差別されてきた、正史では語られることがなかった東北の民・蝦夷(えみし)の物語を創作のテーマにし、ライフワークとしてきました。。

高橋克彦さんの「東北歴史小説」としては、以下のような代表作があります。
特集では、文芸評論家の末國善己さんが、作品の世界をガイドします。

奈良時代の蝦夷の動向を追った『風の陣』
蝦夷の英雄阿弖流為(アテルイ)と征夷大将軍坂上田村麻呂の戦いを描いた『火怨(かえん)』
東北の民を「蝦夷」「俘囚(ふしゅう)」と侮る、京の朝廷に対して、反乱を起こした安倍貞任と、東北の地に黄金の楽土を築こうとした奥州藤原氏の興亡を描く『炎立つ(ほむらたつ)』
目前に迫る十万の豊臣秀吉軍に対して、わずか五千の兵で喧嘩を売った九戸政実(くのへまさざね)の戦いを描く『天を衝く(てんをつく)』

最新作の『水壁 アテルイを継ぐ男』は、平安時代(元慶二年・878年)に起きた蝦夷の反乱、元慶の乱(がんぎょうのらん)を描いています。
中央政権の容赦ない仕打ちに窮する東北の民を見かねて、アテルイ(阿弖流為)の血を引く若者が決起します。

 今になって「書く」と心が固まったのは、やはり私の年齢が大きい。これを書かずして終えては蝦夷の頑張りに対して申し訳が立たないという気がしたのだ。
(『文蔵 2017.4』P.8より)

高橋さんは、特別寄稿の中で、正史では脇に遠ざけられていて、史料がほとんどない状況下で、元慶の乱を採りあげて物語として書くのは無理と諦めていたという執筆時の心境を明らかにしています。

時代小説のファンとして、東北に思いを寄せる一人として、『水壁 アテルイを継ぐ男』を読んでみたいと強く思いました。

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『文蔵 2017.4』(PHP文芸文庫)
『水壁 アテルイを継ぐ男』(PHP文芸文庫)

『風の陣 [立志篇]』(PHP文庫)
『火怨 上 北の燿星アテルイ』(講談社文庫)
『炎立つ 壱 北の埋み火』(講談社文庫)
『天を衝く(1) 秀吉に喧嘩を売った男九戸政実』(講談社文庫)

⇒『文蔵』ホームページ

「朝日時代小説大賞」受賞作の電子版が期間限定無料公開

暴れ宰相 徳川綱重 江戸城騒乱朝日新聞出版では、3月18日(土) 0時より2週間限定で、『慶応三年の水練侍』をはじめ、「朝日時代小説大賞」出身作家による、この春おすすめの時代小説3作品の電子版を、Kindleストア、楽天kobo、BookLive、ReaderStore等の電子書店にて無料公開するキャンペーンを実施します。

【対象作品】
天野行人さんの『花天の力士 天下分け目の相撲合戦』(朝日新聞出版刊)〈第8回最終候補作〉

藤原道長が栄華を極めた平安時代。政敵の右大臣藤原顕光の姦計にはめられた左大臣道長は、例年内裏で行われる相撲節会において、それぞれが選んだ最強の相撲人による決闘を約束させられる……。


片山洋一さんの『島津の陣風 義久の深謀、義弘の胆力』(朝日新聞出版刊)〈第6回優秀作受賞者最新作〉

慶長五年(1600)九月十五日、関ケ原。勝利を確信した家康本陣めがけて、島津義弘率いる千五百の隼人たちが駆け抜けた!  世にいう“島津の退き口”である。生きて薩摩に戻ったのは僅かに八十余名。改易を狙う徳川と本領安堵を図る島津との虚々実々の駆け引きが始まる……。


木村忠啓さんの『慶応三年の水練侍』(朝日新聞出版刊)〈第8回大賞受賞作〉

慶応三年、津・藤堂家の砲術師範・市川清之助、突如として水術試合を要求される! 十七年前の事故で父親を亡くした谷口善幸は、清之助を逆恨みして、水術訓練時の度重なる嫌がらせに加える。清之助と善幸の遺恨は、水術(競泳)決着に……。


三者三様の魅力に満ちた、新鋭作家の時代小説が味わえる、楽しみな企画です。電子版(電子書籍)が初めてという方もお試しいただくチャンスです。

【実施書店】
3月18日(土)0時配信開始、詳細は各書店サイトをご覧ください。

・Kindleストア
・楽天kobo
・BookLive
・ReaderStore

キャンペーン対象の電子版には、「無料版」「期間限定 無料お試し版」と本の画像に明記されていて、通常の電子版と価格表示が違っているので、注意してお選びください。

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『花天の力士 天下分け目の相撲合戦』(Kindle版 期間限定無料お試し版)
『島津の陣風 義久の深謀、義弘の胆力』(Kindle版 期間限定無料お試し版)
『慶応三年の水練侍』(Kindle 期間限定無料お試し版)