太閤暗殺
(たいこうあんさつ)
岡田秀文
(おかだひでふみ)
[戦国]
★★★★☆☆
♪2001年、第5回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。『本能寺六夜物語』(双葉文庫)の歴史ミステリーっぽいところが印象に残る、岡田さんの代表作の一つ。
朝松健さんの『五右衛門妖戦記』(光文社文庫)に続いて、秀吉と五右衛門の対決をテーマにした作品を読む。ミステリー畑の作家らしく、最後の謎解きまで、一気に読ませる。歴史小説家が取り上げたがるような動乱の時期ではなく、なぜこの時代(関白秀次時代)を舞台にし、秀吉と五右衛門を描いたのかが、読み終わってよくわかった。また、時代ミステリーと付けられているだけあって、あるトリックをいかに、探偵役の前田玄以(後の五奉行の一人)が解くかも重要なカギを握っているので注目したいところ。
このように書くと頭でっかちな推理ものと思われるかもしれないが、とんでもない。クライマックスの五右衛門が難攻不落の伏見城へ侵入し、脱出するシーンでのサスペンス度とダイナミズムは圧倒的だ。秀吉ばかりでなく、石田三成、前田玄以、秀次らも生き生きと描かれていて読み応えがある。今後も岡田秀文さんの活躍からは目が離せない。
物語●大坂城本丸で、一族全員が一堂に会し、太閤秀吉の一子お拾(ひろい)の初誕生の祝儀が行われた。祝儀の後で、秀吉は甥の秀次に関白の座をお拾に譲ることを期待したが、はかばかしい回答をもらえなかった。お拾の祝儀から八カ月ほど立ったある日、京都所司代前田玄以は、五条室町の研師五助こと、石川五右衛門を賊として捕縛に向かった。しかし、すんでのところで、関白秀次の家老・木村常陸介重茲(きむらひたちのすけしげこれ)の屋敷に逃げこまれてしまった…。
目次■序章/第一章/第二章/第三章/第四章/終章/解説 細谷正充