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北斎あやし絵帖

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北斎あやし絵帖
北斎あやし絵帖
(ほくさいあやしえちょう)
森雅裕
(もりまさひろ)
[捕物]
★★★☆☆☆

作者の森雅裕さんは東京芸術大学美術学部卒業で、『モーツァルトは子守唄を歌わない』で第31回江戸川乱歩賞受賞した、ミステリー畑で活躍中の作家。

というわけで、この作品も時代ミステリー的な色合いが強く、葛飾北斎が探偵役を務めている。おなじみの偏屈ぶりを遺憾無く発揮しながらも、当時としては理論的な考え方の持ち主(レオナルド・ダ・ビンチを彷彿させる)として、折々に俳句をひねる愛敬も見せ、魅力的に描かれている。

当時の歌舞伎界や戯作、浮世絵など、当時の文化を作中で巧みに紹介しているのも、江戸ファンにはうれしいところだ。とくに北斎が水戸藩主斉脩の前で鶏を使って、竜田川の絵を画くシーンには思わずニヤリとしてしまう。

江戸後期を舞台にした作品を読んでいると、いつも気になるのだが、なぜ学校では「寛政の改革」や「天保の改革」を教えるのだろうか? 松平定信や水野忠邦らの行ったことは、幕府を弱体化させる、改悪としか思えないし、在任期間も短く、その手法も目新しさがなく、旧態依然とした印象しか与えないのだが…。まぁ、この作品を面白くさせてくれる要素にはなっているから評価すべきか。

◆主な登場人物
葛飾北斎:柳島妙見堂に住む絵師。五十八歳
あざみ:芝居小屋の道具方。二十歳ぐらいの町娘
市川団十郎:七代目。あざみの兄貴分
大田南畝:戯作者で狂歌師(四方赤良)。勘定方小役人
千葉周作:旗本・喜多村石見守の中小姓で中西道場の寄弟子
手柄山正繁:白河公のお抱えの刀鍛冶
滝沢馬琴:飯田町に住む読本作家
篠田金治:歌舞伎立作者・並木五瓶の弟子
楽翁:かつての老中・松平定信。夕顔の少将
斎藤与右衛門:幕府お抱え能楽者
亀屋喜三郎:吉原の茶屋の主人
阿花梨:寛政期に活躍した謎の花魁
歌川豊国:歌川派の総帥の絵師
喜多村石見守:御小納戸衆を務める旗本
水野和泉守忠邦:肥前唐津城主
お栄:北斎の次女
徳川斉脩:水戸家当主

物語●文化十四年の正月、葛飾北斎は洋琴(ピアノ)を作りたいという芝居の道具師・あざみに出会うが、北斎が収集した図譜、画帖の中にあったその資料が、何者かに盗まれてしまう…。北斎とあざみは危機を救ってくれた千葉周作を仲間に加え、盗まれた資料を追ううちに、新たな事件に巻き込まれる…。何やら、絵師写楽をめぐる謎が鍵を握っているらしい…。

目次■壱 成田屋の妹/弐 北辰の阿修羅/参 著作堂という火宅/四 夕顔の老少将/五 火難の傾城/六 腰に永楽通宝/七 濁る田沼の……/八 水戸宰相と鶏/九 写楽だった男/拾 碑文を書く支配勘定/拾壱 あやしの絵解き/拾弐 芝居町炎上

装画:戸屋勝利
装丁:太田和彦
時代:文化十四年(1817)年
舞台:柳島、蛇山、二丁町、飯田町、小梅
(集英社・2,000円・1998/04/18第1刷・404P)
購入日:98/04/24
読破日:98/05/25

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